KAYO MATSUSHIMA HP

ペンギン×アート作家 松島佳世のブログです。
展覧会情報と創作の日々の様子を書きます

ルソー夢×ペンギン、壁画になる その9

2023-08-08 17:57:00 | 壁画ルソー夢ペンギン

[草ぼうぼう編]

現段階(8月)で壁画制作は完成しているのですが、ここでは前回の続きで3月下旬のはなし。

やっとジャングルにとりかかりました。


画家ルソーはグリーン大好きで緑色を50色ぐらい用意していたらしいのですが、私はこれぐらいしか用意できませんでした。


まずは左下から

ここまで塗ってみて私はあることに気づきました。

ルソー「夢」のメインビジュアル、ジャングルは大画面ゆえに塗るのには時間がかかります。時間短縮のためにもなるべくチューブから出したそのままの色を塗り分けたほうがいいと当初は考えていました。

ですが

やめました!

これだけの大画面だと、このやり方では色の多彩さが出せず、ルソーのパスティーシュ(芸術模倣)にならないことに気がついたからです。なので、



緑色の絵具を掛け合わせたり、アンバー色や白、オレンジを混ぜたりしてちょうどいい緑色をその都度作って塗っていきました(画像だと微妙な色味はわからないと思いますが)

私はいつも感覚による色作りなので全く同じ色は二度と作れません。作れないからその都度色味を調整し、作った色はその日に使い切ることを考えて制作します。今回もこのやり方を通したいと思いました。

せっかくペンキではなくアクリル絵の具を使っているのですから。

その方がルソーの油絵らしくなるし、絶対にいいものができると思ったのです。

しかもこの壁画は食堂の手洗い場の上なので、手を洗いながら社員さんは至近距離で見ることになります。

手を洗っている間だけでも社員さんにじっくり絵というものを眺めてほしい。

そのためにも深みのある作品に仕上げたくなったのです。



とりあえず下の方の草をざっと生やして花も咲かせました。ぐっと華やかになりました。

この部分はこのあともどんどん塗り重ねをしたので、最終的にはもっと変化しています。

最初から50色の緑色を用意できなかった自分が悪いのかもしれないし、そもそもアクリル絵の具はそんなに多種類の緑色は売ってないし、チューブからだして混色した絵の具はすぐ固まるので保管が大変やし(できないことはない)、ルソーは油絵の具だからできたのやし…

言い訳はつきないけれど、草ぼうぼうの段階で、制作が遅れることは確定したのでした(笑)

当初の予定通り、ジャングルをサラッと塗っていたら4月頃には制作が終わったと思うのですが、この段階で長引くことを決定したことに関係者各位の皆さまには大変ご迷惑をおかけしました。呆れかえったことと思います。

私のわがままをそのまま受け入れてもらえたことに心から感謝します。

それでもGW明けには終わると思っていた甘いあま〜い私がいました。

つづく

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ルソー夢×ペンギン、壁画になる その8

2023-07-28 20:15:00 | 壁画ルソー夢ペンギン
[キャラクター先描き編]

彩色を始めるにあたっては一番奥の空から描き始めました。

ルソーの「夢」は背景から描いていく方が描きやすいからです。以前キャンバスにこの絵を描いた時も上から順番から描いていきました。



ですが、社員さんと話をしているとあることに気がつきました。

皆さん私が絵を描いていることはわかっているのですが、何を描いているのかよくわからないので、どこを見ていいのか困っているみたいでした。

私には全体像が見えているし、これがアトリエで一人で描くなら好きに描いてもいい。でもせっかくの公開制作なので過程を楽しんでもらいたい。

そこで


おさるさん


ぞうさん


ルソーとひな'ズとライオン'ズとヘビ


へび使い


ペンギン'ズ

そして



✨先にキャラクターが完成しました✨

予想通り社員さんたちとの会話が増えました。

社員さんたちはたくさんの種類のペンギンがいることにも気づいた様子です。

ペンギンロゴマークの会社の社員さんでもペンギンが18種類もいることをご存知なのはほぼいませんでした(笑)

ペンギン知識の普及に少しでもお役に立ててたら嬉しいです。



さて、わたし

この段階で3月半ば…

春までには終わると大見えをきった自分を反省しておりました。

ふぅ

つづく

おまけ↓





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ルソー夢×ペンギン、壁画になる その7

2023-06-24 18:43:00 | 壁画ルソー夢ペンギン

[カーボン下書き編]

2023年1月11日から東大阪のサンコーインダストリー株式会社さんに通いだしました。

まずは壁面のグリッドに合わせて下書きを貼っていきました。貼るなんて簡単だと思っていたのですが、紙が重い!なおかつでかい!

紙は私の身長ぐらいあるし、壁面の上部は私の身長を超えているので台に載って片方をテープで止めても、もう片方がずれるなんてざら。もしかした下絵は元々考えていたように小さいサイズをたくさん用意したがよかったかもしれない…と思ったけどあとの祭り。

誰か~~~と叫びたいけど、社員の皆様のお仕事の邪魔なだけなので四苦八苦しながら半日かけて貼りました。

ふぅ



この段階で、とある社員さんに「ピカソのゲルニカみたい」と言われました。

白黒だし大きいからその方はゲルニカを想像したと思うのですが、実は構想段階でとある仕掛けをしているので当たらずも遠からずなのでした。

私の意図したことをわかったからではないことは重々承知していますが、ゲルニカと言われたことはうれしかったです。(この件はまた後ほど書きます)

次はのりでつなぎ合わせて大きくしたカーボン紙を間にはさんで9Hのかたい鉛筆でなぞっていきます。



この作業、簡単に見えますが、いや作業としては単純だけど線が多いのでもう大変。

カーボン紙が落ちないように押さえるのもめちゃ大変。



線もカーボン紙をめくってみないと引けてるかどうかわからないので不安になって二重にひいてしまったり、後で確認すると引いてないところもあって直接壁面に線を書いたりしました。



1番困ったのはかたい板にかたい鉛筆で描くので手がすぐ痛くなることでした。

この頃は他の仕事もかなり抱えていたので通うのは週一でした。それでも下書きは4枚だから1月中には終わると思っていたらなんのなんの。なかなか作業が終わらず結局2月半ばまでかかりました。

ふぅ(2回目)



下書きを無事に終えて思ったこと。

写すだけでもこんなに大変なんやから、元々ここで下書きを作成しようとしていた甘い考えだった自分でてこーいΣ(-᷅_-᷄๑)

でした(笑)

さて、次から着色です。

色を塗り出したら早く終わる〜🎵

と本気で思っていたどこまでも考えの甘い私です(笑)

下書きを剥がされると困るので(単に貼り直すのが大変だから)完成するまではずっとこれを壁面に貼っていました↓

もちろん触る方なんてどなたもいませんでした。



つづく

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ルソー夢×ペンギン、壁画になる その6

2023-06-24 16:29:00 | 壁画ルソー夢ペンギン

壁画制作話の続きです。

現実の壁画制作は佳境に入っていますが、制作過程の忘備録ということでお付き合いください。

自宅での下書き制作も完了して、いよいよ次は現場で制作するちょっと前(2023年今年の正月)まで遡ります。

制作を始める前に私が初めに取った行動は植物園に行くことでした(笑)

「楽園のカンヴァス」でルソーがモデルのヤドヴィカ(夢に描かれた女性)に「ここは暑いでしょう?この絵を描いているせいかもしれません」と言ったからです。

ジャングルは湿度が高くて暑いんや…

ご存じの通りルソーは実際にジャングルには行ってません。そのころできたパリの植物園に行って植物を描き始めたのでした。

私もジャングルに行ったことはありません。

私も植物園に行けばその湿度や暑さを追体験ができるのではないかと思ったのです。

行ったところは京都府立植物園(外観の写真を撮り忘れております)



外は1月の凍てつく寒さの京都だというのに暑くて湿気っていました(当然なんですが)

ムシムシ

モワモワ

水分を含んだ独特の空気感

ルソーがテンションが上がったのもわかる巨大植物たちだらけでした。

植物に詳しい人ならルソーが描いた植物がなにかわかるのかもしれませんが、私にはさっぱりわかりません。

植物園で天井まで生い茂る巨木や床に生えてる草などを見ながらこれかな?あれが近いかな?と見て回りました。

いつしかルソーの気持ちになり、このジャングルに潜む動物たちが見えてくる気がしました。


以前からあちこち植物園には行っていましたが、ルソー目線で見てみるとあらためて感動と驚きの連続で面白かったです。

ちょうど今は朝ドラ「らんまん」で牧野富太郎の話をやっていますが、実は私は幼いころ彼の伝記を読んで以来のファンです。石版画も持っています。

富太郎ならルソーの描いた植物は全部わかるんだろうなと思いつつ、個々の植物の描きわけは私では無理なので、せめて、それまでパリで見たこともない植物に初めてふれてワクワクしたルソーの感性を描けたらと思いました。

もちろん湿度も(笑)

これで予習はばっちり。次はいよいよ現場制作に臨みます。

この辺りまでは春までには終わるよね〜簡単簡単♫と余裕をかましておりました。

つづく

牧野富太郎の図鑑の本物のリトグラフ(石版画)です。

ドラマのせいできっと今は高値になっているはず。もっと買っとけばよかったです。







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ルソー夢×ペンギン、壁画になる その5

2023-04-08 16:55:00 | 壁画ルソー夢ペンギン

12月になり、いろいろ考えた構想を元にパソコンで大まかな下絵を完成させました。



準備をしてくれるマックスさんには壁画用の板に細かくグリット線をひいてもらうことを依頼。あとはそのグリット線を目安に現地で下書きを完成させるだけ。楽ちんらくちん♪

と思っていたのですが、

2008年に描いた時は小さい画面でしたが、植物が入り組みすぎて自分が元絵のどこをパスティーシュ(芸術模倣)しているのか何度もわからなくなり、描くのに苦労したことを思い出しました。

「ルソー夢×ペンギン」は「最後の晩餐×ペンギン」よりもはるかに細かい絵。

現場でグリット目安にパソコンで作った構想図を見ながら下絵を直接板に描いたりしたら、入り組んだ植物でわけがわからなくなって現場で混乱してしまい、いつまでたっても下絵が終わらないのでは…

どうしよう(顔面蒼白)

ちょうどこの頃、マックスさんから連絡があり、現場への板の搬入が12月初めから中頃に遅れるとの連絡がありました。

これぞ渡りに船!(マックスさんありがとう~笑)

家できちんと事前に下書きを制作することにしました。

はじめは「最後の晩餐×ペンギン」みたいにパソコンでやろうと思いましたが、数分やってみて私には細かすぎて無理とわかりました(はやっ)

それで模造紙を買ってきて1/2縮尺の画面を作って鉛筆で描き始めました(アナログはけっこう強いのです)

壁画の実寸は横318cm×縦138cm。なので模造紙は横159cm×69cm。

実際に作ってみると1/2縮尺でも大きくて机に全部のせれません。

(おおきなダイニングテーブルでもあればよかったんですけどね)

現場で下絵をやらなくてよかったと思いつつ、小さな作業台兼こたつで紙を巻きつつ途方に暮れながら制作しておりました。

12月中頃に現場が完成したとマックスさんから連絡があり下見に行きました。とてもよく準備されていて感動。環境もばっちり。描くのが楽しみになりました。板の画面が黄土色なのは、私が下地色としてイエローオーカーを指定したからです。



でもまだ下書きは半分…

担当のKさんに「切りがいいので来年早々から取り掛かります♪」と見栄をはるけど心の中はドキマギ。はたして間に合うのか?

ちょうどこの頃はならペンギンランドの準備もあって忙しかったです。正月準備もあるし。とにかく時間との勝負。鉛筆で手が汚れ、消しカスが下にあるのに気づかずに線を引いてしまい、線がゆがんでしまうなど物理的にも大変でしたが、一番大変だったのはやはり今自分がジャングルのどこを描いているのかわからなくなること。

たぶんジャングルの植物を輪郭線で描くより、影をつけながら面で描くほうがよっぽど描きやすかったと思いますが、余計な線は下書きとして邪魔なだけ。考えている間はないのでただひたすら線をひいていました。ひたすらひたすら…



この頃から、グリットごとに自分で拡大コピーして一枚一枚現場でカーボン紙を挟んで写すよりも、業者さんに頼んで原寸大に拡大コピーをして現場で板にそれを貼って下絵をカーボン紙で写し取るほうが早いことに気づきました。(正月ぐらいはゆっくりしたいし笑)

下絵はクリスマスにはなんとか完成しました。



世間が仕事納めの日に印刷屋に持ち込んで原寸大の拡大コピーを依頼。印刷屋さんによるとさすがにこの大きさの一枚物は無理で、縦4枚に分けないと出力できないとのことでしたが、それぐらいなら現場で貼り合わせられるのでお願いしました。

おかげさまで無事に正月が迎えられました。

年明けになりましたが、原寸大の拡大コピーができあがりました。とにかくきれい。すごい。これを自分で一枚一枚拡大コピーして貼り合わせるのは無理だったと痛感しました。

書き忘れていましたがグリッドは128もありました(^^;)

相変わらずの予測の甘さでしたが、印刷屋さんのおかげでギリギリ間に合いました(笑)



大きすぎて一枚の写真には収まりません。


つづく

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さて、この度ペンギン壁画の見学会を開催することになりました。

会社なので平日の昼間ですが、お時間が合う方はぜひお越し下さい。

4月19日(水)

14時〜と15時半〜の2回です

ペンギン美術館「最後の晩餐×ペンギン」と「ルソー夢かけペンギン」(制作途中)がご覧頂けます

申込は調整さんにて受付ています。





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