北の隠れ家

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「 吾輩は雀である 」    HP「kazemata劇場 第1幕」より

2017年08月17日 21時42分14秒 | 小説



  ☆吾輩は雀である☆


 
吾輩は雀である。 名前はまだ無い。どこで生まれたかは定かではない。

兄弟が大勢いたことだけは覚えている。しかし、気が付くとみんなどこかに行っちまっていた。この世に誕生して初めて人という名の動物を知った。

しかも後で聞くと、それはこの世で一番獰猛なわがままないきものだという。不思議なことに、この生き物は、俺たちのように空を飛べない。 雨や雪、強風のときは飛ぶ俺たちも一苦労するが、今日のようなこんな青空でさわやかな日の空を飛ぶことが出来ないとは、まったく可哀そうないきものである。




しかし、二本足のほかに二本の腕そして片手に五本の指を持っている。あれは便利なものだ。
二本足であるいたり、走ったりすることができる。二本の腕・片手で五本の指、両手で十本もの指でモノを作ったり、書いたり、打ったり、掻いたりしている。 あれは便利なものだ。目・耳・口などは俺たちと似たようなもんだ。しかし、顔の真ん中から、ときどき煙が出るのが不思議だ。いつもじゃないが。


俺達に毎朝、食事を用意してくれる人間は、また可笑しな顔をしている生き物だ。
目の上に、なにかをつけている。あれは目には便利が良い物らしい。見えない物も、見えるらしい。人間はこの世で一番獰猛・わがままな動物と聞いているが、それもいろいろな奴がおるらしい。俺達の中でも、えばる奴もいれば優しい奴もいる。それと同じみたいだ。




俺達に食事を用意してくれる人間は、時々、網戸を開けてくるが俺達が一斉に飛び立つのが、どうも不満らしい。
だれが食事を毎朝用意してくれているんだ、恩知らずと思っているらしい。俺達はただ、人間という生き物は獰猛な動物だ、ヤキトリにされるぞという認識しかない。だから捕まったら食われると、その気持ちだけなのだ。


俺達はなにも、あいつに感謝なんぞしていない。毎朝ここへ来ると、メシがあるから来るだけだ。それがあいつらにわからないのか。人間だって云うじゃねえか、「山があるから、登るんだ」と。山はゴミで散らかされて、迷惑しているんだ。きちんと後片付けもしない、わがままな動物たちだと。




俺達がここへやってくるのは、まずは食事があることが一番だが、気に行っているのは猫がいないことだ。犬もいない。昔は確かいたはずなんだが、あの世とやらへ行ってしまったのかも。
ここの人間は毎朝よく感心に食事を用意していてくれる。


ザァーザァー降りの雨の日以外は小雨でもちゃんと、用意していてくれる。感心な動物だ。庭も結構、きれいにしているようだ。去年までは、雑草をメインに植えている庭だと、俺達の仲間じゃもっぱらそんな噂だったのだが。今年はどうしたことか、なにか異変が起きたのか。




この前までは林檎が置いてあったが、今はない。
林檎を好物のヒヨドリを云う名前の鳥が来なくなったらしい。あいつがいると、俺達も安心出来ない。一度は仲間の一人が喧嘩したらしいが、やはりズータイのでかいやつには、かなわない。来なくなってホッとしている俺たちだ。


カワラヒワという鳥も時々やってくるが、こいつはまぁまぁ同じくらいの背格好だから、どうってことはない。あいつらも俺達の軍団には一歩遠慮しているらしい。



さて、いただくものはいただいたし、またあとで遊び方々やってくることにして退散とするか。
それにしても今日は良い天気になった。昨日の昼ころから夜まで降り続いた雨には、さすがにまいった。

さぁ、いつまでも漁っていないでご一同、いざまいるぞ。






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