話はホテルで泥棒に入られたことに気づき、警察を呼ぶという場面に戻ります。日時は、8月2日木曜日の早朝25時半くらいです。
前々回の記事にも書きましたが、泥棒にあったことをまず宿の人に言いに行くと、宿番をしている人が全員英語をしゃべれなかったのでした。後で聞くと、彼らは全員ブラジル人でした。(さらに後でよく見ると、ホテルの1階はブラジル料理レストランだった)しかし、英語が公用語の国で英語がしゃべれない人間が宿番をしてることには、正直驚きました。英語でいくら言っても、泥棒にあったことすら全然理解してくれません。しかし、その中の一人のおっちゃんは、僕の必死の形相で緊急事態だということは理解してくれたみたいで、隣のちょっと高級なホテルに僕を連れて行ってくれて英語ができる人に引き合わせてくれました。その人は、ガタイのいい黒人のおっちゃんでした。彼に、部屋で泥棒に入られたことと警察に電話したいということを伝えると、また別のさらに高級そうな近くのホテルへ連れて行ってくれました。どうやら彼のホテルには電話がないみたいです。なぜホテルなのに電話が無い?という疑問も沸きますが、そんなことは言ってられません。その時の僕にとっては彼だけが頼りです。次の高級ホテルでは、半分寝ているような警備の人と、とても不機嫌な受付の女性がいました。彼は、彼らに電話を使わせて欲しいことを説明してくれて、その上、警察への電話までもしてくれました。僕は、英語で、しかも電話で、泥棒にあったという今の状況やホテルの場所を説明する自信が無かったので、とても助かりました。彼は、電話を終えると帰宅していきました。
警察が直ぐ来るかもしれないので、僕はしばらく門のところで待っていました。しかし、5分くらい待っても全然来る気配がないので一旦部屋に戻りました。この時、同じく被害に遭ったSくんは部屋で待っていてくれました。二人で荷物を調べて何が無くなっているかを再確認しました。部屋の中には重苦しい空気が漂っていました。パスポート、クレジットカード、キャッシュカード、そして最近クスコで買ってとても気に入っていたデジカメ。ベッドのすぐ横の頭側の棚に僕の財布が中身がすっかり抜き取られて置き去られていました。泥棒が、僕の頭越しに財布を取って中身を抜き取り、元の場所に再度置いた思われるのですが、泥棒がそこまで近くにいたという事、寝ている僕の姿を間近で見ながら財布の中身を抜き取ったという事が、恐ろしく思えました。
道路に面している窓には僕の洗濯物を干していたのですが、それらはぐちゃっと乱れていて靴下が床に落ちていた。靴の足跡のような汚れも干していたズボンに着いていました。それを見て、泥棒は窓から入ってきたことを確信しました。
それにしても、警察がなかなか来ない。宿は1階がレストランになっていて2階と3階がホテルになっています。1階に降りて警察を待ちつつ英語の話せないブラジル人の従業員と身振り手振りと片言の英語とスペイン語で話をしました。彼らもこの頃にはすっかり状況を理解してくれているみたいです。クレジットカードやキャッシュカードを止めたくて、電話が使いたいというようなジェスチャーをすると、彼らの部屋に案内してくれて携帯電話を使わせてくれようとしたのですが、日本にはかけれないのであきらめました。彼らの部屋に簡単に通したりするような無防備な感じは、彼らは犯人じゃないという印象になりました。(演技かもしれないけど)
電話してから20分くらいして、外に車が着きました。警察かと思って行ってみると、タクシーと思われる車から降りてきたのは、どこからどう見ても警察には見えないちょっと太った黒人のおっさん一人でした。制服は着てなくてアメリカの黒人ラッパーの黒いTシャツと短パンにサンダルという公務中とは到底思えないラフな格好です。眠いからか不機嫌に血走った目で僕を睨みつけています。予想とはかなり違うその姿(制服を着た紳士的な警官が二人くらい来ることを期待していた)にかなりびびったのですが、警察に間違いないと思って「警察の方ですか?」と聞いたら「そうだ」と答えました。そういえば、このおっさん、誰かに似ているなあと思ったらタンザニアの睡眠薬強盗アロイースでした。ますます僕の不安感は大きくなりました。
このアロイース似の警官が僕に何かごにょごにょと言うのですが、全く何を言っているのかわかりません。「すいません、何ていいましたか?」と何度聞きなおしても「ごにょ、ごにょにょ!」としか聞こえません。失礼のないように丁寧に聞きなおしてるのですが、どんどん不機嫌になっているみたいです。英語がしゃべれない従業員の次は、聞き取ることの出来ない英語をしゃべる警官ですか。。。しかし、僕らの希望はこの警官だけなので、辛抱強く聞き返します。5回目くらいでようやく「どこで盗まれた?」というようなことを言っているということが分かりました。部屋に案内して、取調べ開始です。しかし、彼の英語は空前絶後のかつて経験したことの無いような聞き取りにくさなので、彼が何か質問するたびにこっちは5~7回くらい聞き返さなければいけないという、非常にもどかしく、その上雰囲気も悪いものになりました。Sくんも彼の英語には僕と同様かなり苦戦しているようです。しかし途中からもう一人小柄な白人の警官っぽい人が来て彼の英語を通訳してくれるようになって、徐々にスムーズになりました。(後でその人はレストランのマネージャーだということが判明。僕はきっと警官に違いないと思ってすごくへりくだって接してしまった。)
取調べといっても大したことはしませんでした。名前、住所、生年月日などの個人情報と、何を盗られたのか、気づいた時どのような状況だったか、をノートにメモを取った後は、一階に降りて、道路側から僕らの部屋を見上げて、僕らの主張する泥棒が窓から入ったということが可能かどうかをだらだらとレストランのマネージャーと話をしていました。そしてしばらくすると疲れたのか、翌朝8時に警察署に来るようにと僕らに言い残してタクシーに乗って帰っていきました。
僕は確信しました。彼は犯人を捕まえる気は100%ない、と。
時刻は3時半になっていました。前日のミニバスでの夜行移動でくたくたになっている上に、この日もほとんど寝れないのか・・・。そして貴重品を失ったショック。パスポートの再発行を、こんなガイアナのような辺鄙なところでできるのだろうか?クレジットカードやキャッシュカードを止めるのが、明日の警察署の後になるけど不正利用されないのだろうか?クスコで買った気に入っていたデジカメ・・・、ブラジルのボアビスタやガイアナのレセムの写真・・・。しかし、今回はノートPCが残ったという救いがありました。これは本当に大きかった。気持ち的に随分楽でした。他には、現金も2-3万円、クレジットカードも1枚、それぞれ見つけにくいところに隠しておいたので残っていました。なんとか当座は自力で持ちこたえられそうです。
この日の夜は非常に興奮していたけど、前日の疲れもありすぐに眠りに落ちました。
8月3日金曜日、警察署には時間通り8時に着きました。犯人を捕まえてもらうことは期待できなくても、盗難証明書はもらっておかないとパスポートの再発行ができないのです。アロイース似の警官は昨夜と同じ格好で警察署の2階のオフィスにいました。目は相変わらず血走っていますが、今日は周りの同僚の目があるからか、幾分紳士的な対応です。ベンチに座って待てと言われたので、言われたとおりに待つのですが、全然始めてくれません。まるで僕らなんかいないかのように彼らは自分達のことをしています。その間ぽかーんと警察署内部やそんな彼らを眺めたりしていたのですが、これが非常に面白かったです。建物は木造三階建の築数十年のぼろぼろで、窓は割れていたり、窓枠自体が取れていたり、窓の外を見ると屋根の上に大量のごみが投げ捨てられていたり、一国の首都の中心地にある警察署とは到底思えない建物です。そのフロアにいる警官は私服警官しかいなかったのですが、そこに市民や逮捕されてきた犯罪者が一緒くたにいるので、誰が警官で犯罪者なのか何がなにやらわからない状況です。犯罪者たちは手錠をされることなく、僕らと一緒に座っていたりします。警官に写真を撮られたり尋問されたりしているので、ようやく逮捕された人なんだ、と分かります。
1時間くらい待たされてようやく書類作成が始まりました。昨夜のアロイース似とは違う別の警官(インド人風。ガイアナはインド人移民が結構多いです。)が対応してくれました。相変わらず英語は聞き取りにくいのですが、アロイースよりは数倍ましでした。昨日は5回は聞き返してたのが、この日は2回くらいですんでいたので。。。昨夜アロイースに話したこととまた同じことをしゃべって書類が作られていったのですが、それは盗難証明書ではなく被害者の被害宣言書のようなものでした。盗難証明書は翌日の9時に来い、と言われたのでこの日はこれで帰りました。終わった時には11時半にもなっていました。タンザニアのシニャンガ警察はもっときびきびと働いてたぞ。。。
午後は銀行、カード会社、トラベラーズチェック、大使館関係、と国際電話をかけまくりました。カード類は問題なくストップできました。夕方の4時になっていたにもかかわらず、不正使用もありませんでした。ここガイアナがカードの不正使用が難しい町でよかった・・・。トラベラーズチェックはアメリカン・エキスプレスが英語の通訳を介した電話な上に、音声が非常に悪い状況だったので大変苦労しましたが、なんとかストップできましたが、再発行に10日くらいかかると言われてしまい、それは保留しました。(翌日、実はトラベラーズチェックは盗られていなかったことが判明。直ぐに電話すると再利用可能になりました。)パスポートの再発行は、やっぱりガイアナには日本大使館が無いので、ガイアナを管轄する日本大使館のあるトリニダードトバゴに行かなければいけないということになりました。でも、在トリニダードトバゴ大使館のKさんという人がびっくりするくらい親切な人で、この後いろいろと助けてもらうことになり、とても助かりました。Kさんは勤務時間外や休日でも入出国のために両国のイミグレーションオフィスに事前連絡やFAXを送ってくれたり、僕の電話相談を受けてくれたり、飛行機の時間を調べてくれたり、本当に数々の名アシストをしてくれたのです。ただ、トリニダードに行くことで僕のギアナ3国旅行がここで途切れてしまうのは、非常に残念です。次のスリナムという国はガイドブック(ロンプラ)によると料理が安くて美味しいとあったし。。。ベネズエラで取ったブラジルビザやイエローカード(黄熱病予防接種証明。ブラジル入国に必要とされる)がパスポートと一緒に無くなったので、ブラジル行きも非常に厳しくなってしまいました。当初トリニダードトバゴになんて全く行く予定じゃなかったので、完全に頭が真っ白になってしまいました。トリニダードに行った後は、いったいどうすればいいんだろう???
しかし、Sくんが最近ベネズエラの前にトリニダードに行っていて、「とても良いところですよ!おすすめです!」と力強く言ってくれたので、徐々にトリニダード行きもいいんじゃいの?と思えるようになってきました。それに長期旅行者にとってはトリニダードはビザ取得が非常に困難なために行っている人が少ないので、そこに簡単に行ける俺はラッキーなんじゃないのか?とも思えるようになってきました。Sくん曰く、海が綺麗でダイビングもできるとか。早くいって綺麗な海を眺めてぼんやりとしたくなってきました。
翌日(8月4日土曜日)9時に警察署へ行ってみると昨日のフロアは人っ子一人いなくてがらんとしていました。一階には制服を着てパトロールなどをしている警官はいるのですが。この日は土曜日なので、警察も休みということか?しかし昨日、書類を作ってくれた奴(インド人風)は間違いなく明日9時に来いと言っていたので、彼を信じて誰もいないオフィスで待つことに。30分くらい待つと昨日のインド人風が現れてくれました。しかし「もうちょっとそこで待て」と言われさらに待つこと30分。今度は別の私服警官が来て僕らが何をしているか訪ねてきました。答えると、「今日は休みだ。そんなことをしても時間の無駄、無駄。早く出て行って他の事をしろよ」「いやいやいやいや!そんなことはないでしょう!さっきも昨日書類を作ってくれた警官が来て”そこで待ってろ”と言ってましたよ!」「なんと言っても時間の無駄。そいつももう帰ったよ。」と言ってきます。確かにさらにしばらく待っても誰も来る気配はありません。時間はもう11時を過ぎています。しびれを切らして、警察署の建物内をしらみつぶしに探したのですが、ほとんど全ての部屋がもぬけの殻で、人がいた部屋が一つだけあったけれどもそいつはいなくて、すぐに追い出されてしまいました。打ちひしがれて元のベンチの場所に戻っていると、インド人風警官が偶然トイレに行っているところに遭遇しました。「おい、ちょっと!どうなってるんですか!?」と聞くと、「いやあ、ごめん、ごめん。今日はみんな休みだから、たとえ書類を作ってもサインをしてくれる人がいないんだよねえ。忘れてたよー!悪いけど、月曜日に来てよ」とのことです。うっわー、、、やっぱり。。。こうなることは半ば覚悟してたけど、やっぱりショック。。。でも、これで土曜と日曜をジョージタウンの観光にあてられるので、よかったといえばよかったかな。
Sくんは、盗難保険に入っているわけでもないしパスポートも盗られていないので、仕事の遅いガイアナ警察を月曜日まで待つ必要はないので日曜日にバスでスリナム(ガイアナの隣の国)に行くことになりました。なのでこの日の夜は二人の最後の晩餐になりました。二人で部屋でインスタントラーメンをすすり、ビールで乾杯しました。
ロライマ山に行く直前にサンタエレナのブラジル領事館で偶然出会い、ここまで密度の濃い2週間を共に過ごしたSくんともついにお別れです。ロライマ登山の後、二人行動になってからはトラブル続きでした。サンタエレナでは僕は靴を盗まれ(Sくんはジャケット)、ベネズエラ出国時はいかにも薬でラリッてそうな警官にバックパック内の荷物を片っ端から調べられ、ブラジルに入国してほっとしていたら、バス移動中に何回もさらに厳しい荷物チェックにあい、その上ブラジル行きを同行していた韓国人が警官との間でトラブル(ブラジル国内には持ち込み禁止のでっかいワニの皮を持ち歩いていたため)になり、僕らも巻き込まれて数時間警察署に拘留されたり、、、そして極め付けが今回の泥棒事件。でも、彼の何があっても落ち込まずにその状況を楽しめるキャラクターもあって、その全てが楽しい経験でした。
日曜日に一人でジョージタウンをぷらぷらしていると、何に使うのか分からない木の巨大なハンマーを持ち歩いている柄の悪い若者が何人も徘徊していたり、ゴミ箱からビール瓶を探し出しては延々と壁に投げつけて割っている奴がいたり、ドブ川を漁る浮浪者がいたり、「おい中国人!おまえどこに住んでんだ!?ファック!!」とどなってくる奴がいたりして、なんとも恐ろしい場所です。そんなエキサイティングなジョージタウンを適当にぷらぷらしているうちに月曜日(8月6日)になりました。約束の9時に行き、いつものように1時間待たされると、担当が元に戻ったのかアロイース似が対応してくれました。しかし、奴は今は忙しいので昼の1時に再度来てくれと言いました。こういう展開にはすっかり慣れたので大人しく1時まで時間をつぶして警察署に行きました。そこでもさらに30分待たされ、アロイースのデスクに行くと、そこで一から何か書類を書いています。書類はできてて、後はサインだけじゃなかったのか・・・とつっこみたかったけど、やめておきました。彼の聞き取りにくい英語と格闘しながら先週話したことを再度一から話してようやく何か手書きの書類ができました。それを持って別の部署に行き、今度は女性の係官に担当が替わり、その人に書類作成料の200円を払い、そこでもさらに1時間待ったのですが、結局翌日の1時に来てくれと言われてしまいました。
to be continued...
前々回の記事にも書きましたが、泥棒にあったことをまず宿の人に言いに行くと、宿番をしている人が全員英語をしゃべれなかったのでした。後で聞くと、彼らは全員ブラジル人でした。(さらに後でよく見ると、ホテルの1階はブラジル料理レストランだった)しかし、英語が公用語の国で英語がしゃべれない人間が宿番をしてることには、正直驚きました。英語でいくら言っても、泥棒にあったことすら全然理解してくれません。しかし、その中の一人のおっちゃんは、僕の必死の形相で緊急事態だということは理解してくれたみたいで、隣のちょっと高級なホテルに僕を連れて行ってくれて英語ができる人に引き合わせてくれました。その人は、ガタイのいい黒人のおっちゃんでした。彼に、部屋で泥棒に入られたことと警察に電話したいということを伝えると、また別のさらに高級そうな近くのホテルへ連れて行ってくれました。どうやら彼のホテルには電話がないみたいです。なぜホテルなのに電話が無い?という疑問も沸きますが、そんなことは言ってられません。その時の僕にとっては彼だけが頼りです。次の高級ホテルでは、半分寝ているような警備の人と、とても不機嫌な受付の女性がいました。彼は、彼らに電話を使わせて欲しいことを説明してくれて、その上、警察への電話までもしてくれました。僕は、英語で、しかも電話で、泥棒にあったという今の状況やホテルの場所を説明する自信が無かったので、とても助かりました。彼は、電話を終えると帰宅していきました。
警察が直ぐ来るかもしれないので、僕はしばらく門のところで待っていました。しかし、5分くらい待っても全然来る気配がないので一旦部屋に戻りました。この時、同じく被害に遭ったSくんは部屋で待っていてくれました。二人で荷物を調べて何が無くなっているかを再確認しました。部屋の中には重苦しい空気が漂っていました。パスポート、クレジットカード、キャッシュカード、そして最近クスコで買ってとても気に入っていたデジカメ。ベッドのすぐ横の頭側の棚に僕の財布が中身がすっかり抜き取られて置き去られていました。泥棒が、僕の頭越しに財布を取って中身を抜き取り、元の場所に再度置いた思われるのですが、泥棒がそこまで近くにいたという事、寝ている僕の姿を間近で見ながら財布の中身を抜き取ったという事が、恐ろしく思えました。
道路に面している窓には僕の洗濯物を干していたのですが、それらはぐちゃっと乱れていて靴下が床に落ちていた。靴の足跡のような汚れも干していたズボンに着いていました。それを見て、泥棒は窓から入ってきたことを確信しました。
それにしても、警察がなかなか来ない。宿は1階がレストランになっていて2階と3階がホテルになっています。1階に降りて警察を待ちつつ英語の話せないブラジル人の従業員と身振り手振りと片言の英語とスペイン語で話をしました。彼らもこの頃にはすっかり状況を理解してくれているみたいです。クレジットカードやキャッシュカードを止めたくて、電話が使いたいというようなジェスチャーをすると、彼らの部屋に案内してくれて携帯電話を使わせてくれようとしたのですが、日本にはかけれないのであきらめました。彼らの部屋に簡単に通したりするような無防備な感じは、彼らは犯人じゃないという印象になりました。(演技かもしれないけど)
電話してから20分くらいして、外に車が着きました。警察かと思って行ってみると、タクシーと思われる車から降りてきたのは、どこからどう見ても警察には見えないちょっと太った黒人のおっさん一人でした。制服は着てなくてアメリカの黒人ラッパーの黒いTシャツと短パンにサンダルという公務中とは到底思えないラフな格好です。眠いからか不機嫌に血走った目で僕を睨みつけています。予想とはかなり違うその姿(制服を着た紳士的な警官が二人くらい来ることを期待していた)にかなりびびったのですが、警察に間違いないと思って「警察の方ですか?」と聞いたら「そうだ」と答えました。そういえば、このおっさん、誰かに似ているなあと思ったらタンザニアの睡眠薬強盗アロイースでした。ますます僕の不安感は大きくなりました。
このアロイース似の警官が僕に何かごにょごにょと言うのですが、全く何を言っているのかわかりません。「すいません、何ていいましたか?」と何度聞きなおしても「ごにょ、ごにょにょ!」としか聞こえません。失礼のないように丁寧に聞きなおしてるのですが、どんどん不機嫌になっているみたいです。英語がしゃべれない従業員の次は、聞き取ることの出来ない英語をしゃべる警官ですか。。。しかし、僕らの希望はこの警官だけなので、辛抱強く聞き返します。5回目くらいでようやく「どこで盗まれた?」というようなことを言っているということが分かりました。部屋に案内して、取調べ開始です。しかし、彼の英語は空前絶後のかつて経験したことの無いような聞き取りにくさなので、彼が何か質問するたびにこっちは5~7回くらい聞き返さなければいけないという、非常にもどかしく、その上雰囲気も悪いものになりました。Sくんも彼の英語には僕と同様かなり苦戦しているようです。しかし途中からもう一人小柄な白人の警官っぽい人が来て彼の英語を通訳してくれるようになって、徐々にスムーズになりました。(後でその人はレストランのマネージャーだということが判明。僕はきっと警官に違いないと思ってすごくへりくだって接してしまった。)
取調べといっても大したことはしませんでした。名前、住所、生年月日などの個人情報と、何を盗られたのか、気づいた時どのような状況だったか、をノートにメモを取った後は、一階に降りて、道路側から僕らの部屋を見上げて、僕らの主張する泥棒が窓から入ったということが可能かどうかをだらだらとレストランのマネージャーと話をしていました。そしてしばらくすると疲れたのか、翌朝8時に警察署に来るようにと僕らに言い残してタクシーに乗って帰っていきました。
僕は確信しました。彼は犯人を捕まえる気は100%ない、と。
時刻は3時半になっていました。前日のミニバスでの夜行移動でくたくたになっている上に、この日もほとんど寝れないのか・・・。そして貴重品を失ったショック。パスポートの再発行を、こんなガイアナのような辺鄙なところでできるのだろうか?クレジットカードやキャッシュカードを止めるのが、明日の警察署の後になるけど不正利用されないのだろうか?クスコで買った気に入っていたデジカメ・・・、ブラジルのボアビスタやガイアナのレセムの写真・・・。しかし、今回はノートPCが残ったという救いがありました。これは本当に大きかった。気持ち的に随分楽でした。他には、現金も2-3万円、クレジットカードも1枚、それぞれ見つけにくいところに隠しておいたので残っていました。なんとか当座は自力で持ちこたえられそうです。
この日の夜は非常に興奮していたけど、前日の疲れもありすぐに眠りに落ちました。
8月3日金曜日、警察署には時間通り8時に着きました。犯人を捕まえてもらうことは期待できなくても、盗難証明書はもらっておかないとパスポートの再発行ができないのです。アロイース似の警官は昨夜と同じ格好で警察署の2階のオフィスにいました。目は相変わらず血走っていますが、今日は周りの同僚の目があるからか、幾分紳士的な対応です。ベンチに座って待てと言われたので、言われたとおりに待つのですが、全然始めてくれません。まるで僕らなんかいないかのように彼らは自分達のことをしています。その間ぽかーんと警察署内部やそんな彼らを眺めたりしていたのですが、これが非常に面白かったです。建物は木造三階建の築数十年のぼろぼろで、窓は割れていたり、窓枠自体が取れていたり、窓の外を見ると屋根の上に大量のごみが投げ捨てられていたり、一国の首都の中心地にある警察署とは到底思えない建物です。そのフロアにいる警官は私服警官しかいなかったのですが、そこに市民や逮捕されてきた犯罪者が一緒くたにいるので、誰が警官で犯罪者なのか何がなにやらわからない状況です。犯罪者たちは手錠をされることなく、僕らと一緒に座っていたりします。警官に写真を撮られたり尋問されたりしているので、ようやく逮捕された人なんだ、と分かります。
1時間くらい待たされてようやく書類作成が始まりました。昨夜のアロイース似とは違う別の警官(インド人風。ガイアナはインド人移民が結構多いです。)が対応してくれました。相変わらず英語は聞き取りにくいのですが、アロイースよりは数倍ましでした。昨日は5回は聞き返してたのが、この日は2回くらいですんでいたので。。。昨夜アロイースに話したこととまた同じことをしゃべって書類が作られていったのですが、それは盗難証明書ではなく被害者の被害宣言書のようなものでした。盗難証明書は翌日の9時に来い、と言われたのでこの日はこれで帰りました。終わった時には11時半にもなっていました。タンザニアのシニャンガ警察はもっときびきびと働いてたぞ。。。
午後は銀行、カード会社、トラベラーズチェック、大使館関係、と国際電話をかけまくりました。カード類は問題なくストップできました。夕方の4時になっていたにもかかわらず、不正使用もありませんでした。ここガイアナがカードの不正使用が難しい町でよかった・・・。トラベラーズチェックはアメリカン・エキスプレスが英語の通訳を介した電話な上に、音声が非常に悪い状況だったので大変苦労しましたが、なんとかストップできましたが、再発行に10日くらいかかると言われてしまい、それは保留しました。(翌日、実はトラベラーズチェックは盗られていなかったことが判明。直ぐに電話すると再利用可能になりました。)パスポートの再発行は、やっぱりガイアナには日本大使館が無いので、ガイアナを管轄する日本大使館のあるトリニダードトバゴに行かなければいけないということになりました。でも、在トリニダードトバゴ大使館のKさんという人がびっくりするくらい親切な人で、この後いろいろと助けてもらうことになり、とても助かりました。Kさんは勤務時間外や休日でも入出国のために両国のイミグレーションオフィスに事前連絡やFAXを送ってくれたり、僕の電話相談を受けてくれたり、飛行機の時間を調べてくれたり、本当に数々の名アシストをしてくれたのです。ただ、トリニダードに行くことで僕のギアナ3国旅行がここで途切れてしまうのは、非常に残念です。次のスリナムという国はガイドブック(ロンプラ)によると料理が安くて美味しいとあったし。。。ベネズエラで取ったブラジルビザやイエローカード(黄熱病予防接種証明。ブラジル入国に必要とされる)がパスポートと一緒に無くなったので、ブラジル行きも非常に厳しくなってしまいました。当初トリニダードトバゴになんて全く行く予定じゃなかったので、完全に頭が真っ白になってしまいました。トリニダードに行った後は、いったいどうすればいいんだろう???
しかし、Sくんが最近ベネズエラの前にトリニダードに行っていて、「とても良いところですよ!おすすめです!」と力強く言ってくれたので、徐々にトリニダード行きもいいんじゃいの?と思えるようになってきました。それに長期旅行者にとってはトリニダードはビザ取得が非常に困難なために行っている人が少ないので、そこに簡単に行ける俺はラッキーなんじゃないのか?とも思えるようになってきました。Sくん曰く、海が綺麗でダイビングもできるとか。早くいって綺麗な海を眺めてぼんやりとしたくなってきました。
翌日(8月4日土曜日)9時に警察署へ行ってみると昨日のフロアは人っ子一人いなくてがらんとしていました。一階には制服を着てパトロールなどをしている警官はいるのですが。この日は土曜日なので、警察も休みということか?しかし昨日、書類を作ってくれた奴(インド人風)は間違いなく明日9時に来いと言っていたので、彼を信じて誰もいないオフィスで待つことに。30分くらい待つと昨日のインド人風が現れてくれました。しかし「もうちょっとそこで待て」と言われさらに待つこと30分。今度は別の私服警官が来て僕らが何をしているか訪ねてきました。答えると、「今日は休みだ。そんなことをしても時間の無駄、無駄。早く出て行って他の事をしろよ」「いやいやいやいや!そんなことはないでしょう!さっきも昨日書類を作ってくれた警官が来て”そこで待ってろ”と言ってましたよ!」「なんと言っても時間の無駄。そいつももう帰ったよ。」と言ってきます。確かにさらにしばらく待っても誰も来る気配はありません。時間はもう11時を過ぎています。しびれを切らして、警察署の建物内をしらみつぶしに探したのですが、ほとんど全ての部屋がもぬけの殻で、人がいた部屋が一つだけあったけれどもそいつはいなくて、すぐに追い出されてしまいました。打ちひしがれて元のベンチの場所に戻っていると、インド人風警官が偶然トイレに行っているところに遭遇しました。「おい、ちょっと!どうなってるんですか!?」と聞くと、「いやあ、ごめん、ごめん。今日はみんな休みだから、たとえ書類を作ってもサインをしてくれる人がいないんだよねえ。忘れてたよー!悪いけど、月曜日に来てよ」とのことです。うっわー、、、やっぱり。。。こうなることは半ば覚悟してたけど、やっぱりショック。。。でも、これで土曜と日曜をジョージタウンの観光にあてられるので、よかったといえばよかったかな。
Sくんは、盗難保険に入っているわけでもないしパスポートも盗られていないので、仕事の遅いガイアナ警察を月曜日まで待つ必要はないので日曜日にバスでスリナム(ガイアナの隣の国)に行くことになりました。なのでこの日の夜は二人の最後の晩餐になりました。二人で部屋でインスタントラーメンをすすり、ビールで乾杯しました。
ロライマ山に行く直前にサンタエレナのブラジル領事館で偶然出会い、ここまで密度の濃い2週間を共に過ごしたSくんともついにお別れです。ロライマ登山の後、二人行動になってからはトラブル続きでした。サンタエレナでは僕は靴を盗まれ(Sくんはジャケット)、ベネズエラ出国時はいかにも薬でラリッてそうな警官にバックパック内の荷物を片っ端から調べられ、ブラジルに入国してほっとしていたら、バス移動中に何回もさらに厳しい荷物チェックにあい、その上ブラジル行きを同行していた韓国人が警官との間でトラブル(ブラジル国内には持ち込み禁止のでっかいワニの皮を持ち歩いていたため)になり、僕らも巻き込まれて数時間警察署に拘留されたり、、、そして極め付けが今回の泥棒事件。でも、彼の何があっても落ち込まずにその状況を楽しめるキャラクターもあって、その全てが楽しい経験でした。
日曜日に一人でジョージタウンをぷらぷらしていると、何に使うのか分からない木の巨大なハンマーを持ち歩いている柄の悪い若者が何人も徘徊していたり、ゴミ箱からビール瓶を探し出しては延々と壁に投げつけて割っている奴がいたり、ドブ川を漁る浮浪者がいたり、「おい中国人!おまえどこに住んでんだ!?ファック!!」とどなってくる奴がいたりして、なんとも恐ろしい場所です。そんなエキサイティングなジョージタウンを適当にぷらぷらしているうちに月曜日(8月6日)になりました。約束の9時に行き、いつものように1時間待たされると、担当が元に戻ったのかアロイース似が対応してくれました。しかし、奴は今は忙しいので昼の1時に再度来てくれと言いました。こういう展開にはすっかり慣れたので大人しく1時まで時間をつぶして警察署に行きました。そこでもさらに30分待たされ、アロイースのデスクに行くと、そこで一から何か書類を書いています。書類はできてて、後はサインだけじゃなかったのか・・・とつっこみたかったけど、やめておきました。彼の聞き取りにくい英語と格闘しながら先週話したことを再度一から話してようやく何か手書きの書類ができました。それを持って別の部署に行き、今度は女性の係官に担当が替わり、その人に書類作成料の200円を払い、そこでもさらに1時間待ったのですが、結局翌日の1時に来てくれと言われてしまいました。
to be continued...
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