旅とエッセイ 胡蝶の夢

横浜在住。世界、50ヵ国以上は行った。最近は、日本の南の島々に興味がある。

托鉢を差し出す老婆と孫娘  

2016年06月15日 17時44分40秒 | エッセイ
托鉢を差し出す老婆と孫娘   

 タイ・ラオス・ミャンマーといった国では、成人の通過儀礼のように若者が出家する。3ヶ月6ヶ月1週間と期間はマチマチだが、息子が頭と眉毛を剃ってお坊さんになる姿を見てお母さんは泣く。一生ではなくても我が子が家庭からいなくなるのが寂しいのね、と思っていたら違った。
 出家する(中には生涯僧となる)息子の動機の一番は「家庭の事情」だが、よく聞いてみるとお母さんのためと言う。仏教において女性は不利だ。男性はあくまで可能性だがその生涯において解脱出来るが、女性は一度男に生まれ代わらなければ解脱出来ない。そんな女性が最も徳を積む行いが、息子を僧にすることだ。得度式におけるお母さんの涙は、そんな大きな徳を与えてくれる息子に対する感謝と誇らしさの、嬉し涙だったのだ。
バンコクであろうが田舎の村であろうが、オレンジの衣を着たお坊さんは裸足で列をなし、大きな鉢を抱えて托鉢をする。鉢に入れるのは米(ラオスではもち米、タイはうるち米)だけではない。バナナやマンゴー、キャラメル、おかずはビニール袋に入れて差し出す。朝早くから行列が来るから、炊き出しは早朝からやっているんだろう。
坊さんにご飯等を渡す役は女の人が多い。その家にお婆さんがいたら、彼女が給仕係りだ。差し出す方はうやうやしく鉢に入れるが、貰う方は特に頭を下げたりはしない。流れ作業で結構忙しい。そんなお婆さんにくっついてよくチビの孫娘が手伝っている。何が楽しいのかクスクス笑って、お婆さんに叱られる。小さな手を合わせて、恥ずかしそうにモジモジしながらお辞儀をする。この可愛らしいチビッ子が成人して結婚し、お婆さんとなって托鉢にご飯を差し出す。そんな循環が続いてゆけば良いのだが。
印度ではガンジス川で沐浴をする信者がめっきり減った。社会主義のラオスでは一度仏教が禁止され、僧が還俗させられた。バーミアンの大仏はタリバンが爆破した(クソ、行く予定だったのに)。ISはパルミュラの遺跡を破壊している。カンボジアではポルポトによる悲劇があった。
娘よ、たくましく健やかに、真っ直ぐ生きよ。亜細亜の大地は豊かで暖かく、生命で溢れている。


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