旅とエッセイ 胡蝶の夢

横浜在住。世界、50ヵ国以上は行った。最近は、日本の南の島々に興味がある。

四国遍路 ー 遍路ってこんなの?続続

2023年11月22日 20時56分07秒 | 旅日記
四国遍路 ー 遍路ってこんなの?続続

〇 お寺参拝
 遍路のブログらしく、ここらでお寺を見てみよう。80ある真言宗のお寺は、密教のお寺らしく朱色を使ったりして、異国風、中国的な雰囲気がある。当時の隋・唐は、憧れの文明国だったものね。
 ミャンマーのパゴタも金色に輝き、シュエタゴン・パゴタなどは、電飾ギラギラで原色が氾濫している。でも仏像は全てブッダ、つまり釈迦国の王子であるゴータマ・シッダールタか、その弟子たちとブッダだ。見たければ、このブログのミャンマー編を見て下さい。ついでに言うと、ブッダは死後の世界について、一切言及していない。基本的に輪廻転生なのだ。いまでもタイ・ミャンマー・カンボジア・ラオスではそうだ。
 密教が何なのか、よく分からないがバラモン教の神々が取り入れられているようだ。千手観音だの孔雀明王だの、そのバリエーションは美術としては素敵だが、もともと世捨て人集団のようだった原初仏教を逸脱している。まあ、日本の仏教は官が国策として取り入れたのが経緯だからな。

 さて、山門にたどり着く。ここまでが大変な寺が多い。門には左右の仁王像。その裏には何故か大わらじ。清めの水場があって、鐘楼がある。奥には五重塔がある寺もある。階段を登って本堂、脇に建つ大師堂。この二か所でお祈りをする。ロウソクをあげ、線香を灯し般若心経。納札と賽銭。最後に納経。結構時間がかかるんだ。見てみようか。どの写真がどこの寺か、半分は自分でも分からなくなっている。













門の中に鐘がある。これはここだけ。
天井画。最後の審判?
地獄画





平地にある寺は助かる。






























岩屋寺は、文字どうり屋根が岩。




38番・金剛峯寺は美しい。




これは道端で出くわした。

〇 遍路準備
 別に自分は、皆さんに遍路をお勧めしていない。親指の爪が剥がれるほど、しんどいからね。でもいくらかかるのか、知りたいよね。これが、ちゃんと支出を控えておかなかったんだ。ごめん。でも引き出した金額から推定すると、28万円くらいじゃないかな。30万円弱です。

・行きは深夜バス。9,800円くらい。帰りは新幹線。宿代は、素泊まり3,000円~5,000円で、2食付き7,000~8,000円といったところ。それが約30日で、概略15万円。バス・鉄道費、食費、全部で4-5万円。

・納経費が、300円 x 89 = 26,700 + 200円で、26,900円。高野山が88 + 1。
+200円は、12番・焼山寺が500円だったので。来年の3月か4月から、納経が全て500円になるらしい。よかった、値上げの前で。

・遍路装束は、編み笠・杖・白衣(半袖にした)・納経帳・納札を買った。全部で8,330円かかった。数珠・ロウソク・線香は持参した。白衣のズボンと輪袈裟は省略した。輪袈裟は、トイレで外さなければならない。面倒な上に大袈裟なので、止めにした。必要なら後から買える。
 朝が早く、遍路用品店が閉まっていたので、一番・霊山寺の直営の店で買った。店のおばさんは、納経帳でなく掛け軸をしきりに勧めたが、帳面/本タイプにした。これは正解。掛け軸や白衣にしたら500円と高い上に、墨が乾くまでドライヤーを使ったりして待たなければならない。掛け軸は、仏画が描かれていて格好良いが、2-3万円はする。


この納経帳には、一寺ごとに絵が描かれている。
編み笠、白衣、共に旅したショルダーバック。
 編み笠にはサイズがあるので、被って選ぶ。オリジナルのひもは、ちゃちいので、自分のように用意していくと良い。梵字が正面。ビニールカバーは外しておく。雨の日以外は、風通しよくする。
 納札は100枚入りだったので、余った。線香入れを買った。ロウソクは、小さいものにした。あと、般若心経と数珠。
 各お寺で、セットでくれる。

・旅の準備・資料
事前に調べたノート。廃線、廃業、善根宿の全滅で、予定どうりにはいかない



 このパンフは、ちょっと役立った。近くの駅からのバス便などが、書かれている。でも寺から寺ではなく、それぞれの寺が独立して書いてある。最後の方は、面倒になったのか、駅からタクシーでxx分ばかりになった。
 これも役立ったが、善根宿や一泊千円の好意宿などは全滅。でも寺での作法とかが参考になった。
 食べ物の他に、こんなものを貰った。
 これは、途中で会った人に教わった。胸ポケットに入れておくと、取り出しやすい。ビニールに入れておかないと、直ぐに汗で濡れてしまう。
 彼はコピーした地図を入れていたが、区切りの遍路だからそれでよい。通しでは、コピーの分量が多すぎる。
 役に立った2冊の本。黄色い本は持参した。
 本の中身。歩きのルートを書いてある。ちょっと外れた所はカバーしていないので、知りたいのにアーア、駅が切れてる。となることがある。
 この本は重いし、絵は楽しいが歩くのには不完全。置いていった。ただ、お寺の情報と寺から寺のバス便情報は、ノートに書き写した。
 岡田君は、自分の親しい友人でした。でもこれは結局一日しか、リュックに掛けなかった。車の方はズーズーしいし、巡礼は何かを主張する旅ではない気がしたのね。 

・旅のほとんどは、カートにリュックを括り付けて、ガラガラと引いていった。カートは、他の人のブログなどを読むと、100kmもしないうちに車輪が壊れると書いてあった。でも不思議と持ちこたえた。結局、81番・白峰寺の手前で手放し、後は担いでいった。どこに置いてきたかって?忘れた。

 カートは、もう少し取ってが高ければよかった。タオルを巻きつけると廻ってしまい、うまくない。鉄道は半分が無人駅だったので、荷物はショルダーバックだけにして駅に置いたり、路傍に置いたりした。寺の山門では必ず置いて
登った。売店や飯屋で預かってもらったこともある。先にその日の終着駅の宿に、朝先行して預ける。見晴らしの良い三叉路に置く。公園に置く。山道で、登りに差し掛かったので、農家の納屋の裏に置く。
 不安に思ったことはない。万が一無くなったら、それはそれで仕様がない。でもある寺は、登りに一時間以上かかるきつい山道で、戻って来たら別の道だった。二つの参道があったんだ。もう一つの参道に行き、かなり登って荷物を回収した。別の山寺でも、違う下り道を行ってしまった。その時は、バス停に荷物を置いていたので、グーグルマップに助けてもらった。

・お寺でお祈りをする時に、ロウソク、線香、般若心経が必要になる。あと、納札と賽銭。本堂と大師堂の二か所だ。ウェストポーチがあればな、と思った。カートを引くので、手荷物はショルダーバックに入れた。畳めるナップザックは、一日でひもが切れた。フクロウのバックは、ミャンマーで買ったものだが、2人の女性が素敵ね、と褒めてくれた。まあ、ちょうどよい大きさだった。最後に近づくと納経帳を盗む奴がいる、と聞いていたので、杖と違い、これは手放さないようにした。

・高知までは、お接待はほとんどなかった。愛媛、香川では、みかんはくれるは、イチジクはくれるは、ワッフルはくれるは、アメはくれるは。駅のコンビニで朝食を買っていると、遍路さん使ってくださいと500円もらった。他にも、飯屋で明らかに大盛りにしてくれたり、優しい人にたくさん会った。南無大師遍照金剛。ありがとうございました。ミカンは、無人販売所で買うわ、接待でもらうわ、道で拾うわ。だから外国人遍路に会うと、話しかけてミカンをあげた。でも愛媛以降は、外国人はいたが、観光客で団体ばかり。

・スマホのグーグルマップも万能ではない。何人もの人に道を聞いた。分かれ道や、出だしの所で間違えると、そうとう時間をロスするからね。1日30人として、千人弱の人たちを話したことになる。親切なのは、年配の女性とおばあちゃんだ。どこから来たの?へー横浜から。歩いているの。偉いね。話し込むこともしばしば。あと、他の遍路さん、宿の人、飯屋の人、外国人。ほとんど引きこもり状態で、仕事以外は人と会わない生活が一変した。この3年、英語を使うことなど全くなかった。急に脳が活性化し、対人交流が劇的に増えたせいか、最初の数日と最後の数日は、なかなか寝付けなかった。

・体重は3.5kgは減少し、血糖値は劇的に改善した。朝は5時起きで、宿に着くと洗濯、風呂、飯で早く寝た。毎日が楽しくて、疲れが累積することは無かった。疲れは、四国の優しくて美しい自然が癒してくれる。

・荷物が多すぎることが直ぐに分かり、2日目に郵便局で自炊道具や余分なものを送り返した。ただで泊めてくれる善根宿が全滅していることが分かり、20番・鶴林寺に行く前に寝袋と下に敷くシート、蚊取り線香と虫よけ、2つあるものなどを送り返した。10gでも軽くしたい。ここの山道では、カートを畳んでリュックに入れた。山道は、12番ほど険しくはないが長かった。でも凄い景色だ。仁淀川の青い流れは、息をのむほど美しい。
 善根宿はなくとも、屋根付きのベンチや小屋はある。中にはシャレた建物もあった。計画的にやれば、野宿で宿代を節約することは出来る。外国人の歩き遍路の若者で、野宿をする連中は多い。簡易テントを持参している人もいる。

・自分は、初日は善根宿に泊まったが、ここはただ鍵を開けてあるプレハブだった。トイレはクモの巣だらけで、同宿者の青年が何度電話をしても、管理者とは連絡がつかなかった。つまり、たまたまほったらかしにしてあったのだ。その後は、電話が通じないか、通じても止めていた。

・お寺には泊まらなかったが、82番・根香寺近くの禅宗の喝破道場に泊まった。質素で静かな食事。朝の座禅。清潔な部屋と、明るくて広々とした風呂。座禅は、目を半眼、少し開ける。目を閉じれば瞑想だ。自分は、瞑想をしたが、瞑想力が落ちている。ビジョンがクリアーにならない。意味が分からない人は、前に書いたミャンマーのメディテーション・センターの話を読んで欲しい。
 75番・善通寺は大きなお寺で、東院と西院に分かれている。西院にある御影堂の地下には、約100メートルの通路をめぐる「戒壇めぐり」がある。 500円かかるのだが、真っ暗な中を壁に手をつけて歩くんだ。これはやった方がよい。暗闇に入ると、前方とおぼしき闇に中に、広い部屋や階段のビジョンが現れた。面白い。

・車を停めて、道を教えてくれた人。道を聞いたら、乗せてくれた軽のおじさん。ありがとうございました。あれで、2時間半の徒歩が省略できました。アメやチョコをくれた、パン屋のおかみさん。荷物を預かってくれた雑貨屋のおばちゃん、杖やパンフをくれ、翌日に登り口まで送ってくれた親父さん。本当にありがとう。お世話になりました。他にもたくさんのご接待や好意を受けました。忘れません。ありがとう。

・道中で、シャレたパン屋さんがあった。中に入ると、可愛らしい店員さん。その場で食べるのと、翌朝・翌昼用に購入した。だけど、一日経ったシャレたパンはボソボソで、朝も昼も気分はボソボソ。

・山寺の下りで、お遍路さんに声をかけて追い抜いた。私は、ひざが悪いんです。どうぞお先に。麓で休んでいると、その遍路さん、杖とスキーストックのようなのと、両手を使って歩く。真っ白いひげで、これほど決まった遍路姿も珍しい。かっけーな、仙人みたい。でも話をすると、昨日紹介してもらって泊まったホテルが、素泊まりで8千円もして高い、とかどうも俗っぽい。写真を撮らせてもらおうと思ったが、止めた。見た目は仙人、中身は俗人。話さなければ良かった。

・納札には、住所と名前と日付を書く。年齢を書く欄があるのもあるようだが、自分のにはなかった。日付はx月吉日でよい。住所は、区までで良い。裏は空欄だが、願い事を書いても良いそうで、途中から生まれたばかりの初孫の成長と健康を祈願し、xxちゃんスクスク、と書いた。一日で5寺を廻ると10枚必要だ。せっせと書き足さなければならない。
 納札は、1~4回が白、5~6回が緑、7~24回が赤、25~49が銀、50~99が金で、100回以上が錦札なんだそうだ。ギンギラギンの札を、もったいぶって配っていた車遍路の爺さまがいたが、あれはちょっと見苦しい。回数は、自己申告だからな、というつぶやきが聞こえた。

・居酒屋でラーメン、焼き肉屋でクッパ、飲み屋でビールも頼まずに、おにぎりセットと魚のマリネを頼んだ。近くにコンビニも他の飯屋もなかったんだ。夕食を7-800円に抑えるためだ。
 焼き肉屋では、後で店長が出てきて、わっお遍路さんだ!おい、と若い店員に、お遍路さんじゃないか。そう言われてもネー。俺は、絶滅危惧種か。子供のころに見たギンヤンマか、ゲンゴローのように言わないで。徳島県に行けば、まだまだいるよ。お遍路さん、どうぞとミカン2ケくれた。リュックの中に10個くらい入っていたが、南無大師遍照金剛。あなたに良いことがありますように。
 飲み屋では、まだ宵の口でカウンターに客が一人。おばさんが店のママに、盛大にグチをこぼしていた。ごめんね、気勢を削いじゃって。名前の知らない小魚(釣り好きの自分でも知らない)のマリネは、思わず唸るほど美味かった。他にも美味しそうな品書きがいっぱい。ごめんね、貧乏な遍路で。
 ちょっと待って、お遍路さん。ママは裏に引っ込むと、イチジクを2個持ってきてくれた。南無大師遍照金剛。あなたに幸せなことがありますように。これを言うと、みんな笑顔になる。
 でもコンビニでおばさんから、どうぞと500円を頂いた時は、驚いでとっさに決めゼリフが出てこなかった。おばさんは、逃げるように奥に行ってしまった。そちらに向かって、ありがとうございましたと頭を下げるのが精一杯。何だかレジのお姉さんも一緒に頭を下げていた。

・そうそう、そういえば夜空が綺麗だったな。冴えたオリオン座を、海辺で街中で何度も見た。山の中は静かで、シーンとしている所が何度かあった。あの静寂は、得難いものだ。鳥は、ちょっと開けて明るくなったところで鳴く。
 9月末~10月の初めは、最後のツクツクホーシが鳴いていた。秋の虫の鳴き声は、それほど大きくはなかった。帰宅して、家のそばでもそうだ。今年の猛暑で、虫たちの元気がないのかもしれない。

・道路標識に文句を言いたい。xx寺まで6.2km、徒歩1時間って何!登山マラソンじゃあるまいし、100%の登り道を6.2km、1時間で行けるかよ。行けるならお前、行ってみろよ。
 ある寺へ向かって歩いた。前半はずっと下りの山道だった。2時間以上続く下りだ。そんなに急な道ではないから、足指は痛くない。これが反対の登りだったらと思うとゾっとする。
 やっと平地の線路に出た。グーグルマップで調べると、経路17分とある。あっ楽勝!ところが、30分歩いてまた見ると、あと16分。徒歩でなく、車の設定になっていた。徒歩で検索し直すと、1時間19分になった。

・良い宿は、割合としては低い。どーでもよい宿、ちょっと不衛生な宿、おかみが不愛想で、朝挨拶をしても出てこない、飯がこんなの。こっちの方が多いんだ。ある宿では、大きな部屋をアコーディオンカーテンで仕切った部屋に通された。隣の声もT、Vの音も丸聞こえ。隣は二人連れで、年配の男が携帯で話しだした。その男、よく笑う。イッヒッヒー。イッヒッヒ。尻上がりの吸い込むような笑い声。よくイッヒなどと発音するよな。まるで、自分は悪党です。近づかない。近寄らないようにと、主張しているようなものじゃん。

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