2月のつれづれ・・・團十郎さん

今月に入ってすぐに十二代目市川團十郎さんの訃報を知り、とても寂しく感じました。
私は歌舞伎はちょびっとだけなんですが、一時期おにぎり持参でジーンズ姿で歌舞伎座の３階席に通ったことがありました。遥か昔です。きっかけはNHKの歌舞伎講座で十八番のなかの「鳴神」を解説付きで鑑賞するのをたまたま見た事からです。
その舞台で主役を演じたのは当時十代目市川海老蔵だった市川團十郎と坂東玉三郎。アナウンサーはこのお二人の取合せを“海老玉コンビ”となんだか美味しそうなコンビ名で言ってました。

その「鳴神」を見て歌舞伎に魅力を感じました。玉三郎の雲の絶え間姫の艶やかさが魅力的で、十代目海老蔵の謹厳実直ながらうぶな高僧鳴神上人がピッタリでした。
二人の間は常に雲の絶え間姫がリードして女を知らない（恐ろしさも知らない）鳴神上人はどんどん墜落してついには大失態をしてしまう。
雲の絶え間姫は天皇の命をうけて民を助けるために色仕掛けで上人を篭絡したのです。
姫が逃げた後、騙されたと知った鳴神上人は憤怒の顔になり髪を逆立て、衣を炎でたぎらせて後を追っかける。
単純でとてもわかりやすい内容で、二人のやりとりはけっこう艶っぽい、というかエッチです。歌舞伎ってもっとこ難しいものだと思ってたらそんな事はなかった。笑いもあるし舞台もきれいで華やかで楽しい。そして何より海老玉コンビが魅力的でお二人が一緒にいるとまるで江戸時代の華を見てるようで嬉しくなります。歌舞伎って楽しい♪
あの当時玉三郎は片岡孝夫（現　十五代目片岡仁左衛門）との孝玉コンビの組み合わせもとても人気があり私もスラリとした現代的な美しいお二人にもうっとりしましたっけ。海老玉、孝玉どちらのコンビもそれぞれ魅力があって好きでした。

海老玉コンビを実際観劇したのは明治座で、亡き祖母と一緒に舞台そばの席に座って
お似合いの二人をうっとり見つめました。帰りに祖母が歌舞伎の話、祖母が好きな浄瑠璃の話をしてくれたのが懐かしい・・・。

十代目海老蔵さんは声があまり通らないのを努力で補った方でもあると聞いてます。実際同じ演目を十代目海老蔵さんとこれまた当時三代目市川猿之助さん（現　市川猿翁）で見たことがありましたが声の通りが違いました。
十代目海老蔵さんはやさぐれた男も色気がありましたが、鳴神上人のような品がある役がよりお似合いな感じをうけました。ご本人のおっとりとした品格が秀でていられたのでしょう。
今も鳴神上人は十代目海老蔵さんの印象が強く、一番好きです。

十二代目市川團十郎さん
ご冥福をお祈りいたします。そして歌舞伎の面白さを知るきっかけを作ってくださりありがとうございます。