筆者は、これまで日本政府がアメリカに売飛ばした日本国の主権に付いて次のようにまとめてきた。
・2023年3月6日、『ヌーランド米国務次官は横田空軍基地という裏口から入国する』
・2023年3月7日、『日本政府がアメリカに売渡した電波権』
・2023年3月8日、『日本政府がアメリカに売渡した「刑事裁判権」』
この回は、「日本政府がアメリカに売飛ばした「航空交通管制(昭和34年改定)」」を報告したい。
現代の航空管制は、レーダー進入管制(radar approach control、ラプコン)といい、半径60~80マイルの有効範囲内の航空機を探知する空港監視レーダー(airport surveillance radar、ASR)と滑走路に進入する航空機を管制する精測進入レーダー(precision approach radar、PAR)を用いて、無線電話により操縦士に指示を与えて着陸させるという方式が取られている。日本に嘉手納ラプコン、岩国ラプコン、横田ラプコンが現存している。
・横田ラプコン
横田進入管制区(横田ラプコン)と呼ばれる1都8県(東京都、栃木県、群馬県、埼玉県、神奈川県新潟県、山梨県、長野県、静岡県)に及ぶ広大な空域の航空管制は横田基地で行っている[1]。
・岩国ラプコン
岩国進入管制区(岩国ラプコン)は、アメリカ空軍岩国基地(岩国市)が航空管制をしている空域が広島、山口、島根、愛媛の4県にまたがっていて、最高高度は約7千メートルに対している。上空から見ると、基地を中心に羽を広げたチョウのような形をしている。そのため岩国空域にかかる岩国錦帯橋空港(同)、松山空港(松山市)では、民間機も基地の許可がなければ離着陸できない[2]。
・嘉手納ラプコン
嘉手納進入管制区(嘉手納ラプコンは、沖縄上空に半径90キロ、高度6000メートルと、半径55キロ、高度1500メートルの二つの空域が、沖縄と久米島の上空をすべて覆っている。
これらラプコンを規定しているのが、昭和27(1952)年6月の日米合同委員会で合意した「航行保安」にはじまり昭和34年に改定された「航空交通管制」である。
自衛隊の指揮権は昭和27年からアメリカにあるが、その事実を隠蔽するため日米合同委員会で合議して指揮権を行使することになっている。そのためアメリカは、日米合同委員会と云う名称で指揮権を行使している。よって「航空交通管制」中にある「日米合同委員会で合意した」という言葉の使い方は、アメリカからの命令、若しくは、指導のことである。
尚、憲法と行政協定の関係であるが、条約は、憲法73条3項で国家代表者である内閣総理大臣が署名し国会で承認を受ける必要があるが、協定は、憲法72条2項で内閣の権限内にある「外交関係を処理すること」を利用して内閣の恣意的な判断で締結したものである。
『……
航空交通管制
昭和35.3.25 衆・参安保委提出
昭和27年6月及び同34年6月日米合同委員会において次のように合意された。
(1) 航空交通管制
(イ)昭和27年6月の合意
1.日本国は、日本領空において完全かつ排他的な主権をもちかつそれを行使する。但し、一時的な措置として、わが国の自主的な実施が可能となるまでの間、日米間の意見の一致をみた時に、日本側が航空交通管制に関する全責任を負うこととして、米軍が軍の施設で行う管制業務を利用して民間航空の安全を確保することとし、また、日本側の管制要員の訓練を米軍に委託する。(航空局注、当時 わが国が航空交通管制を実施するためには、施設、要員とも皆無にひとしい状況にあったので、前記のような一時的措置をとったものである)。
2. 日本政府及び米軍の行なう航空交通管制はICAOの定める標準方式を使用する。
3. 在日米軍は、日本政府の承諾のもとに必要な航空灯台、ビーコン等の航空保安施設を自ら設置し、運用できる。
4. 在日米軍は、軍の使用する航空図の精確さを確保するために測図飛行を行うことができる。
5. 第三国航空機の日本領空への飛来を許可するときは日本政府は当該航空機の 経路、空港、時期を含めて在日米軍と相互に意見の一致をはかっている。
(ロ)昭和34年6月の合意
1. 米軍に提供している飛行場周辺の飛行場管制業務、進入管制業務を除き、すべて、日本側において運営する。
2. 防空任務に従事する軍用機に対しては交通管制上、最優先権を与えることに 同意している。これらの軍用機の離着陸に際しては、その迅速な行動を可能ならしめるため予め定められた一定の空域をあけるように他の航空機の管制が行なわれる。
3. 日本政府は在日米軍との間に航空機から得られる気象情報を相互に交換する。
4. 防空上緊急の必要があるときは、防空担当機関が保安管制を行なうことに同意している。
5. 国外から飛来する航空機が管制本部に対して位置通報を行なうべき地点の決 定に際しては、日本政府は防空担当機関と協議する。
(2) 航空機の事故調査
1. 合衆国軍の航空機施設又は人員を含まない航空機の事故については在日米軍は責任を負わない。 但し在日米軍は公認の日本国政府航空機事故調査官に協力し、かつこれに対し調 査に必要で保安上差支えない一切の情報を提供する。
2. 日本政府が航空機事故調査の責任を負う航空機施設又は人員を含まない航空機の 事故については、日本国政府は責任を負わない。但し日本政府は公認の合衆国航空 事故調査官に協力し、かつこれに対し調査に必要で保安上差支えない一切の情報を 提供する。
3. 在日米軍の航空機及び日本政府が航空機事故調査の責任を負う航空機を含む航空 機の事故に対しては航空機事故共同調査委員会がこれを調査する。
4. いづれか一方による航空機事故の調査中に他方の施設及び人員が事故に関与する 原因をなした証拠があるときは、いつでも他方の代表者にその旨を通知する。この 場合は航空機事故共同調査委員会を設けてこれに当該の調査を行う権限を与える。
(3) 捜索救難
1.在日米軍は日本及びそれに隣接する水域上を飛行する航空機の危急の時に捜索救 難業務を行う。日本国のための捜索救難活動に参加する合衆国救難隊の作業は在日 米軍が指揮する。
2.航空機が行方不明であり、又は墜落航空機の生存者が援助を必要としている旨の通告を受けたときは在日米軍は行方不明機の位置を捜索し、及び墜落航空機の生存者を救助するため、できる限りの援助を与える。
……』
日本政府とアメリカで締結してきた安全保障に関係する条約や協定は、すべてが朝鮮戦争を基準に組み立ててきた。日米安全保障条約では大枠を、詳細は国会承認の必要がなく内閣だけで決めることができる協定として超法規的な体系を作り上げてきた。一見盤石にみえる法廷体系である。
しかし、ある時、その弱点が露わになった。それが、2018年6月12日にトランプ米大統領と北朝鮮の金正恩国務委員長による朝鮮戦争を終了させようという共同宣言であった。この宣言により、超法規的な存在であった日米安全保障条約と「行政協定」(日米地位協定)は、朝鮮戦争を終了させることでアメリカ軍が日本に駐留する根拠を失うことが明らかになってしまったのだ。それが、昭和29年2月19日に締結した『日本国における国際連合の軍隊の地位に関する協定』で、朝鮮国連軍の撤退期日が明記されている。
『……
第二十四条
すべての国際連合の軍隊は、すべての国際連合の軍鮮から撤退していなければならない日の後九十日以内に日本国から撤退しなければならない。この協定の当事者は、すべての国際連合の軍隊の日本国から期限として前記の期日前のいずれかの日を合意ことができる。
……』
トランプ大統領と金正恩国務委員長の共同声明は、日本、韓国、アメリカが秘密裏に進めてきた安全保障というパンドラの箱を開けてしまったのだ。
そして、朝鮮戦争が終了すると、自由民主党と外務省がすすめてきた超法規的な安全保障政策はご破算になるのだ。慌てた政府自民党が、急遽、頼ったのは、既に役割を終えたポンコツのNATOと、これもまた世界戦略が賞味期限をすぎたイギリスだった。そのため岸田内閣総理大臣は、鮮戦争終結は時期尚早と云いながら、NATOに擦り寄ってできた国防方針が「防衛三文書」であった。
また、アメリカと北朝鮮が朝鮮戦争を終戦とすることになった場合に、困るのは韓国も同様である。韓国は、後方基地である日本が終戦で完全に離脱した場合に、単独で北朝鮮とは対峙するだけの実力はない。自由民主党と韓国与党は「呉越同舟」である。
昨今の韓国の融和政策は、朝鮮戦争終結時に、日本が離脱することを恐れたもので、その真意は見定めておく必要がある。そのため竹島問題は頬かむりをしたままなのであることが何よりの証である。
以上(近藤雄三)
[1] 川崎市()https://www.city.kawasaki.jp› cmsfiles › contents
[2] 中国新聞(2018年4月17日)「イワクニ 地域と米軍基地 地位協定の壁」
https://www.hiroshimapeacemedia.jp/?p=82114