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「国連軍地位協定」と「BRICSヨハネスブルグ首脳会議」

2023-08-21 | 小日向白朗学会 情報

 2023年8月18日、キャンプデービットで行われた日米韓首脳会談が開かれた。終了後、日米韓首脳により共同記者会見が行われた。その様子は、2023年8月19日、NHK「日米韓首脳 共同記者会見」[i]で詳細を伝えている。特に岸田総理大臣の発言を注視してみると、会議の前評判とは違い、日米韓は「朝鮮戦争を終戦にさせない」と宣言した以外に目新しいものは見当たらない。それよりは、岸田政権が安全保障問題で苦悩しているのではないかと思わせる発言がある。
『……
岸田総理大臣は、……「今、法の支配に基づく自由で開かれた国際秩序が危機にひんしている。ロシアによるウクライナ侵略により、国際社会は根幹が揺るがされている。東シナ海や南シナ海における力による一方的な現状変更の試みは続き、北朝鮮による核・ミサイルの脅威はますます増大している」と指摘しました。
 その上で、「こうした状況において、日米韓3か国の戦略的連携の潜在性を開花させることは必然で、時代の要請でもある。われわれ3人は『日米韓パートナーシップの新時代』をひらいていく決意を示す。日米同盟と米韓同盟の連携を強化し、日米韓3か国の安全保障協力を新たな高みへ引き上げる。法の支配に基づく自由で開かれた国際秩序を守り抜くため、今後とも日米韓3か国の戦略的連携の一層の強化に取り組んでいく」と述べました。
今後の日韓関係については、「日韓両国は国際社会の課題の対処に協力していくべき重要な隣国どうしで、ユン大統領との友情と信頼関係のもと、パートナーとして力を合わせて新しい時代を切り開いていきたい。安保や経済を含むさまざまな分野で前向きで具体的な取り組みが、すでにダイナミックに動いている。こうした取り組みをひとつひとつ積み上げることで、さらに関係を強化していきたい」と述べました。
日中関係については、「去年11月の首脳会談で得られた前向きなモメンタムを維持しながら主張すべきことは主張し、責任ある行動を強く求めつつ、諸懸案を含めて対話をしっかりと重ね、共通の課題では協力する建設的かつ安定的な関係を双方の努力で構築していくことが、私の政権の一貫した方針だ。こうした考えに基づいて、地域の安定に向け努力を続けていく」と述べました。
……』
 岸田は「日米同盟と米韓同盟の連携を強化し、日米韓3か国の安全保障協力を新たな高みへ引き上げる。」と日米韓の関係を強調している。しかし、この軍事体勢は「朝鮮戦争」を原因としてアメリカが日韓の指揮権を掌握したうえで締結した日米同盟と米韓同盟により成立している関係である。そのうえで岸田は「日米韓3か国の安全保障協力を新たな高みへ引き上げる」としているが、日韓には軍事同盟は存在しない。したがって日本は韓国の安全保障とは無関係で、新たに日韓が軍事同盟を結ばない限り、岸田総理が言う「あらたな高みに引き上げること」は不可能なのである。日本が朝鮮戦争に関係しているのは昭和29(1954)年2月19日に締結した「日本国における国連連合の軍隊の地位に関する協定」(国連軍地位協定)」が存続しているからだけなのである。それも同協定「第二十四条」では、朝鮮戦争終戦ともに朝鮮と韓国からアメリカ軍が撤退することが決められている。したがって、韓国政府の事情とは無関係に「朝鮮戦争終結」が実現すると、韓国政府は北朝鮮と戦争状態を継続することは不可能なのである。
 韓国政府と日本政府は「朝鮮戦争終結による政権崩壊」という深淵を覗いてしまったことがある。それが2019年6月12日、ドナルド・トランプ米大統領と金正恩朝鮮労働党委員長がシンガポールで「朝鮮戦争終結」を促進する合意文書に署名したときであった。
 しかし、韓国国民は、韓国政府が朝鮮戦争を継続できるのは日本と朝鮮派遣国連軍との間で締結した「日本国における国連連合の軍隊の地位に関する協定」が存在しているためだということを知らない。そのため、わざわざ、尹錫悦大統領は、2023年8月15日、日本の植民地からの解放記念日「光復節」で「日本に置かれる国連軍の後方基地が北朝鮮の侵攻を遮断する最大の抑止要因だ」と述べたのである。韓国政府は日本の植民地から解放されたことを祝うのに、朝鮮戦争を継続するには欠くことのできない日本の後方支援があったことを認めたのだ。
 ところで、8月15日に尹錫悦大統領が69年も前に締結した国連軍地位協定の存在を認め、続いて、8月18日に日米韓首脳会議で朝鮮戦争継続を確認した理由はなんであるのか。
 それは国連軍地位協定が条約ではないことである。国連軍地位協定は時の政権与党自由党が取り決めたことである。その後、自由党は保守合同で自由民主党となって、自由党が締結した協定を引き継いでいる。したがって、政権与党である自由民主党が下野すれば、協定を締結した国々と協定の見直し、もしくは廃棄を協議することが可能となる。そして自由民主党が下野して国連軍地位協定が破棄される危険性があることを最も熟知しているのがアメリカである。そのため自由民主党が政権の座から降りることのないように、野党の分断工作を徹底的に続けてきた。その結果として、現在の日本政治は既に与党に入っている公明党に続いて国民民主党、日本維新の会が第二与党となること公言するに至っている。
 そのような自由民主党であるが、次期国政選挙で敗北して下野するのではないかと極度に心配を始めている。その原因の一つが、国連軍地位協定を見れば理解できる通り、日本の安全保障政策が「朝鮮戦争」を基準の設計されたものであることから時代の変化に対応できなくなっていることにある。さらには統一教会問題、311東日本大震災で明らかになった原子力政策の失敗、五公五民の高い税金、治山治水の失敗、防衛三文書で「仮想敵国をロシア、中国、北朝鮮」として莫大な防衛予算をむしり取ったものの、アメリカは「One China Policy」に回帰したことで仮想敵国リストから外れ、ロシアはウクライナを完膚なきまでに叩きのめしたことから、早晩、休戦となることでロシアを仮想敵国としおくことは日本も裁かれる立場となることから仮想敵国リストから削除する以外に方法はない等、難問が山積している。加えて、自民党所属議員は長期政権の驕りからくる慢心のため政策能力は限りなく低下していて、山積する矛盾を解決するための政策能力がない。したがって今後も自由民主党が政権を維持する可能性は極度に低下している。
 それに加えて、重大な外部要因が生まれてきた。それは国連軍地位協定を締結した国の中に、G7の枠組みと対立するBRICSの中心国となった国が出現していることである。それは南アフリカである。
その南アフリカで2023年8月22日にBRICSヨハネスブル首脳会議が開催される。
 同会議の議題につて開催主催国である南アフリカは会議のテーマが「BRICSとアフリカ」であると発表している[ii]。となると、そのBRICSヨハナスブルグ首脳会議の議題は、凡その予測がつく。それは2023年7月に開催された「ロシア・アフリカ首脳会議」最終日に公表された宣言である。同会議宣言は、2023年7月29日、ロイター「ロシアとアフリカ、植民地主義による損害補償追求で合意 首脳宣言」」とする記事から確認することができる。
『……
[28日 ロイター] - ロシアとアフリカ諸国は、植民地主義で被った損害の補償を求め、文化財の返還を追求するために協力することに合意した。ロシア北西部サンクトペテルブルクで開催された「ロシア・アフリカ首脳会議」で宣言を採択した。
ロシア大統領府のウェブサイトに掲載された宣言によると、ロシアとアフリカ諸国は「アフリカの脱植民地化プロセスを完成させ、植民地化の過程で持ち去られた文化財の返還を含め、植民地政策の結果としてアフリカ諸国が被った経済的、人道的な損害の補償を求める」ことで合意した。
また「攻撃的ナショナリズム、ネオ・ナチズム、ネオ・ファシズム、アフロフォビア(アフリカ嫌悪症)、ルソフォビア(ロシア嫌悪症)」を含むあらゆる差別と不寛容に対抗することでも合意した
……』
 つまり、シリアやイラク問題だけでなく、BRICSヨハナスブルグ首脳会議においては、2022年3月に始まったウクライナ問題、そして、これらの問題を引き起こしてきたアメリカ、イギリス、フランスとNATOによる悪事が尽く暴露され弾劾される可能性がある。
 その一つとして、ニジェールのクーデターがある。2023年7月26日にクーデターが発生し、フランスが管理するウラン鉱山はフランス人が撤収したことから生産が停止した。これによりフランスやEUが使用する原子力燃料に深刻な影響を及ぼし始めている。これに反発したフランスは、軍事介入をちらつかせている。そもそも、ニジェールとフランスの関係であるが、18世紀にニジェールに黒人奴隷貿易のフランス商館が存在したころからである。もしも、ロシア・アフリカ首脳会議宣言の流れに乗ってBRICSヨハナスブルグ首脳会議でニジェール問題が取り上げられるとなると、その矛先はフランスだけに止まらずアメリカ、イギリス、フランスが世界各地でおこなってきた資源戦争すべてが問題となるであろう。その期間であるが18世紀から現代の新植民地主義にまで及ぶと云うことになる。
 ところで、今年の首脳会議はこれまでの首脳会議と異なる。それはBRICSが金本位制に移行するのではという観測もあることから、軍事力を背景とした口先介入とか経済制裁とは大いに様相が異なる。最近ではBRICSが金本位制に移行した場合のドルとの交換レートは1対55$ではないかという予測もあるくらいである。
 したがって、同首脳会議は、コペルニクス的な価値転換が起こる可能性があるのだ。そして、その議長国が、国連軍地位協定を締結し「朝鮮戦争の本質」を熟知する南アフリカなのである。
 幾ら感度の鈍い岸田政権であっても「有志国」の一つが、アメリカ、イギリス、NATOと対峙するBRICS議長国であることから心中穏やかであるはずはない。そのため日米韓は「朝鮮戦争という利権」を守るため安全保障上の関係を強化するといい、何ら意味のない、口先介入をキャンプデービットでおこなったものと考えられる。

 いよいよ明日からBRICSヨハナスブルグ首脳会議が開催される。筆者は固唾を飲んで会議の行方を注視する心算である。
以上(寄稿:近藤雄三)

[i] https://www3.nhk.or.jp/news/html/20230819/k10014167511000.html

[ii]日本経済新聞「BRICS首脳会議、テーマは「アフリカ」」

https://www.nikkei.com/article/DGXZQOCB081EO0Y3A800C2000000/

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