私とコンピュータの関わりは長かったが、ハードウェアの保守サービスだったから運用
上のことは詳しくはないが、一応のことは知っているつもりだ。ところが、知っているはずの
人に限って基本的なことを蔑(ないがしろ)ろ、にしてしまい結果的にはドツボにはまってし
まう。
私たちハード部門の人間でも、お客さんにデータのバックアップについては何度も何度も
お願いして、採取して貰うようにしてきた。ハードの故障に限らずデータが消えてしまう要
因は山ほどあり、単なる凡ミスによるものであろうが高度なエラーによるものだろうが、その
影響度合いには変わりない。PCも一般家庭に普及しPCの様子を知っている人、全く知ら
ない人も使い始め、メーカーのマニュアルに目を通すとバックアップの重要性を説いてい
る。私もその必要性を認識しているからバックアップをメディアにため込んできたはずなの
に、FDもZIPも遠い昔の媒体になり、機器の故障などと重なりバックアップデータは消えて
いった。必ず要るものはバックアップを新しいPCに落とし込み使用するが、長期的に使う
データはほんの一握りで、大半のデータは割と使用期間の短い一時ファイルのような存在
だ。私の場合、最も深刻だったのは写真でデジカメが出始めカシオの30万画素のカメラを
買い、撮るだけとって画面で楽しみ、アルバムを作る習慣がなくなってしまった。
写真を撮ってはせっせとFDやZIPに落としていたが先述の理由で、次々と変わるPCに引き
継がれることはなく、残念ながら多くを失った。最近は外付けHDにバックアップをとっていた
ものの故障により多くのビデオデータが消えてしまい、今ではSDカードとHDの二重に保管
している。
社会保険庁の年金問題で取り上げられた、廃棄処分を免れたデータで信憑性の高さを示し
たのは紙の台帳だった。コンピュータが一般企業に普及していった時にも、データのバック
アップは磁気テープ装置に書き込み磁気テープで保存していたが、経年変化で読み取りが
出来なくなることから何年かに一度はコピーし直したりしていた。業種によっては法律でデー
タの保管が義務つけられているものもあり、効率のいい確実性の高い方法が真剣に検討され
ていた。
新しい媒体が開発され普及していくが正確な保証期間は、開発者本人ですら計算上、理論
上のものを知るのみで、本当にそれだけの期間が保障されるのかは不明というのが正しいと
思う。原始的な方法であるが紙は歴史的な経年変化を経験しており、保証期間については折
り紙付きだ。私も当時の写真をもっと印刷しておけば・・・・・と悔いている。