まちおもい帖2

日ごろ感じていることを書き記します。

連載 富沢このみのまちおもい帖第25回 「自ら学びとる力」を育てる教育環境の拡充が掲載されました

2019-03-08 17:20:03 | 日記

連載の第25回 「自ら学ぶとる力を育てる教育環境の充実」が『ひばりタイムス』に掲載されました。(詳細内容は、ひばりタイムスの連載をお読み下さい)

私は教育の専門家ではないが、現在の教育は、産業革命以降の社会に適合できる人材を育てることが基本になっている。しかし、AIがこれまでの人間の仕事を代替すると言われるなど、未来を予測できない時代である。教育の姿も、ある目的に向かって一方的、画一的に教えることから、「自ら学びとる力を育てる」方向へと変わる潮目なのではないだろうか。

 子どもたちは、遊びのように、何かに興味を持てば、勝手にどんどん学んでいく。好奇心をくすぐるチャンス、および好奇心を持った時に、それを深めるための環境(必要に応じて知識を得るのを支援する環境)が用意されていることがとても大事だ。今回は、そのような試みについて紹介したい。

一つ一つの事例もとても興味深いです。是非、本文をお読み下さり、また、リンクに飛んでみて下さい(^o^)

■千葉県柏市の民間科学館 Exedra

西東京市の学ぶ楽しさを伝える丹誠塾

千葉県柏の葉のクリエイティブ・コミュニティーVIVITA

福島県相馬市のエル・システマジャパン作曲教室

ボーン・クリエイティブ(Born Creative:人は生まれながらにして創造的だ)

 相馬市の作曲教室で音楽監修をしている藤倉大さんは、ロンドンを活動拠点にしているが、日本で2017年から「“Born Creative” Festival (略称:ボンクリ・フェス)」を開催している。藤倉さんによると「相馬市での作曲教室を何年か継続してみてわかったことは、全ての人間は子どもの頃、『新しい音』、5歳の子どもの言葉を借りると『変な音』が好きだったということだ」。そこで、「大人になっても5歳の子どものままクリエイティブでいる人達の作品を、赤ちゃんからシニアまでが楽しめる1日音楽祭」という趣旨で、ボンクリ・フェスを開催するようになった(エル・システマジャパンのHPにある「2018年度の作曲教室レポート」より)。

 「ボーン・クリエイティブ」については、ジョージ・ランド博士による興味深い実験データが有名だ。アメリカでアポロ11号によって人類初の有人月面着陸が成功した頃、NASAは、予測不可能な事態に陥った時に、臨機応変に対応できる人材を選ぶ必要性を感じた。そこで、ジョージ・ランド博士に、創造的思考を測るためのツール開発を依頼した。このツールは、NASAにとって大変役に立った。一方、博士にとって、創造的思考は、先天的なものなのか、それとも後天的に学んだものなのかという疑問が残った。

 そこで、博士は、1600人の5歳児に、同じテストを行ったところ、98%が創造的(注7)であるという結果が出た。そして、5年後に再び同じ10歳の子どもを対象にテストを行ったところ、創造的な子どもは30%、さらにその5年後、15歳の子どもを対象にテストした折には、12%であった。他方で、成人を対象にした100万回以上の調査(平均年齢31歳)では、創造的な人は、わずか2%でしかなかった。この結果から、人は生まれながらにして創造的であること、しかし、教育を受けるなかで、この能力は、次第に失われてしまうことが明らかになった。

               創造性テストの結果
(出所)ジョージ・ランド博士が2011年12月にアリゾナ州のTucson市で開催されたTEDxでの講演「成功の失敗」より(https://www.youtube.com/watch?v=ZfKMq-rYtnc&feature=youtu.be&t=5m29s

(注7)このテスト結果を示した表では、「問題解決にあたって、いろいろな可能性を考える力」というような意味で、「imagination」という英単語が使われている。日本語に訳すと、想像性、独創性となる。しかし、様々な文献がこの話を紹介するにあたって、「creativity」を使っていることから、ここでは「創造的」と訳した。

 

 私は、この話を聞いて、とても驚いた。というのは、これが日本のデータではなく、アメリカでの話だったからだ。アメリカでは、次々とベンチャー企業が誕生・成長しており、創造的な土壌だと思っていたからだ。博士は、この講演のなかで、「知識(正しい答え、過去の複製)」か「イマジネーション(多くの可能性、新しい未来の創造)」か、と問いかけ、アインシュタインの言葉「知識よりもイマジネーションがより重要だ」を引用。「私たちは、自らをもっと創造的にすべきだ、そうすれば素敵な未来になる」と結んでいる。

 今回紹介した事例以外にも、次代を担う人材のためのユニークな試みがいろいろと始まっている。たとえば、孫正義育英財団(http://masason-foundation.org/)や東京大学先端科学技術研究センターと日本財団による「異才発掘プロジェクトROCKET(Room Of Children with Kokorozashi and Extra-ordinary Talentsの頭文字)」(https://rocket.tokyo/)がある。どちらも、「高い志」と「異能」を持つ若者に自らの才能を開花できる環境を提供している。

 孫正義さんは、「日本には、画一的だが高いレベルの教育体制があるものの、逆に突出した才能を持つ子どもたちや若者への支援体制がない」との想いから財団設立に至ったという。また、ROCKETは、「現在の学校教育システムを否定するのではなく、学びの多様性を切り拓く挑戦である」としている。

 時代が大きく変わるなか、「教育」環境も複線化、多様化を迫られている。幕末期に私塾が創設され、また明治時代にさまざまな私立大学の前身が創設された。混沌とした現代には、民間が力を発揮し、多様で面白い教育環境がもっともっと生まれて欲しい。
(写真・画像はすべて筆者提供)


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