Aquascooter Maintenance for Spearfishing アクアスクーターで魚突き 全76回

使いこなそう、アクアスクーター整備ノートby KosakaNatsuki

**全76回で終了済み**

Blog 第73回 分解整備で浸水判明 Leakage Found by Overhaul=小坂夏樹=

2018年05月09日 | マニュアル
仲間のオーバーホール作業 
マンネリ化している本ブログだが、今回はまた仲間の自動車整備士による分解作業のみを、提供された写真で紹介する。大いに参考になることと思う。



同氏は、2年前に分解整備したAS600を週2回魚突きに使用し、合計200時間ほどの実運転をした。始動・運転に支障はなかったが、数か月前からゴロゴロという音と振動を感じて分解整備の時が来たと判断。これまで同様コンロッドの大小端部ベアリングが劣化したと予想しつつ黄金週間に作業を進めた。


イタリアのフォーラムでは、少なくとも180時間毎に整備せよとあった気がするので、長すぎる時間経過だ。しかし同氏には、壊れたら直ちに修理する実力と、交換部品の集積があり、しかもAS650スーパーマグナムを予備に所有しているから呑気にしていた。
私なら、異常を感じたらすぐに対策をする。単独行動が殆どの私にとって、沖でエンストする危険は絶対に冒したくない。


さて、2年前の分解整備では多くの部品を新替したが、内容は;
*プラグ
*クランク組立ASSY
*ピストンリング(トップリングのみ)
*前後クランク軸ベアリング
*前後メインオイルシール
*プロペラベアリング
*プロペラ・オイルシール
*キャブレターO/H(シール4枚のみ)=ダイアフラムとガスケット??
*各ガスケットは再利用
*Fバンパー取付

但しスタータケースは旧品のまま使用➡(半年後に)先端割れで浸水➡スタータ全体をアセンブリAssy交換➡1年後にスタータ軸とプーリ=円盤が空転➡軸を旧品に交換
という顛末は過去に紹介した通りだ。

分解状況

プラグは2年間そのまま使用してきたが、問題ない



圧縮比は1MPa程あり、良好だ



スタータケースを外すと、100cc近い浸水と飛び散ったグリスでひどい汚れだ

始動ロープの戻りが悪く、最後の半回転程は滑らかに引き込まない状態となっていたが、この浸水でゼンマイの油切などの影響が出ているとも思われる。


フライホイルも汚いし、Oリングは伸びて、矢印の如くはみ出し気味だ

このOリングは純正品が伸びずに良いと当人は云うのだが・・・
私の経験では装着された純正品はゆるい。そう感じるのが、既に油分により膨潤して伸びてしまったものか、未使用状態でも緩いのか現在は記憶が曖昧だ。
第65回でこのOリングにつき、私のAS650の装着品を取除き、より小径の新品に交換したと紹介した。それにも拘らず、組立時にそのOリングがはみ出してしまった。今どうなっているか、バラしてみたいところだ。
なお、シリコーン系のグリスなら塗布してもゴムに影響しないと通常は考えるのだが、ゴムには使用不可と表示しているグリスもあるし、Oリングの材質にもよる。従って、第26回に示した互換品のOリングを選択する場合でも、塗布するグリスとの相性をよく勘案して欲しい。


高圧部のCDIユニットとプラグコードを取外した状態。 メインベアリングにも汚染は広がっているが、シールがあるので、ベアリング内部は見えない


こんなに悲惨な状態でも、パーツクリーナで汚れを落とすと、錆もなくきれいになった。浸水からあまり時日が経過していないのかとも感じられたが・・・・
各部にはたっぷり、同氏によれば必要以上!に、グリスアップしていたお陰?なのか、CDIユニットも全く浸水の影響を受けず、プラグコードのねじ込み部からの漏電もせずに、問題なく火花が飛んでいたわけだ。
驚くべき耐久性に大いに感心した。しかし余計なことを言えば、CDIはコメル社が作っている訳ではなく、ドカティDucati社製だ。

浸水原因はまたしてもスタータケースの先端軸受け部の亀裂だ。新品から1年半持たずに割れていた
本機には折角点検孔があるのに、今回は点検しなかった。
私からは第61回で紹介した補強輪を嵌めるよう推奨しているのだが・・・・
素材の樹脂が収縮して割れるのだということは、私のジャンク品の例を見てもはっきりしているから、それを抑え込むのが安心だ。



本体を分解
クランクAssyは予想と異なり、大端部、小端部ベアリングなども問題ない。
クランクシャフト前側=スタータ側=はかなり傷が付いていた。

クランクシャフト前側オイルシールは良さそう

しかし、スタータ側から見えていたベアリングがひどい状態で、錆びた鋼球がばらけてきた。クランクシャフト前側の傷もこれらボールベアリングによるものだろう。これでゴロゴロ、振動の原因は判明した。

ボールの錆からでは、浸水からどれ程の時間が経過したかは判断できないが、異音がし始めた時期には既に劣化していた筈だ。

スタータ/高圧部の浸水がベアリングに入り、ボールを錆びさせたが、オイルシールで止まり、クランク室には侵入しなかったらしい。
クランク室はピストンの上下動に従って、陰圧~陽圧と圧力が変化する。
(その脈動がキャブの燃料ポンプ膜を駆動するエネルギだ)
燃焼室圧縮行程つまりピストン上行時には陰圧になる。そうすると水はオイルシールの背面にあるのだから侵入というか吸込まれそうだが、入らなかった。この辺りの技術は私には良く解らない。或いは、ベアリングのゴムシールが役立っている、その為に前側にはシール付が装着されるのだとも思われる。後側のベアリングはシール無しの開放型設定だ。

マフラをばらしたところ





以前にも紹介しているが、通常は毎回使用後には溶剤をマフラに入れて内部を濯いでいる。今回はどうせバラすのだからと、その作業を省略した為か、かなり残滓が付着している。2時間ほど使った後でこれくらいは溜まってしまうということか。
こんな様子を見ると、私のホース排気式のマフラに溜まる残滓も同じことで、特段異常ではないと思われる。
彼我の違いは、毎日使用後に内部を溶剤で濯ぐか、数日間の遠征から帰宅して初めて濯ぐかの違いらしい。


プロペラシャフト、つまりメインシャフトの後ろ半分はこの様な状態で、ありがちな水混入によるグリスの乳化もなく、プロペラ側からの浸水は無かった。


バラした全体像


ここまでで、要整備箇所ははっきりした。
あとは単純に部品新替で組立を済ませるか、或いは追加で不具合対策を施すかという程度だ。
本人は、もうすっかり整備作業に習熟したと豪語しているので、何か目新しい工夫でも盛り込むのではないかと楽しみにしている。

追加情報が得られたら紹介する。
以上


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