Aquascooter Maintenance for Spearfishing アクアスクーターで魚突き 全76回

使いこなそう、アクアスクーター整備ノートby KosakaNatsuki

**全76回で終了済み**

Blog 第59回 オイルシール破損で始動不可の珍事=小坂夏樹=Engin Locked by Oil Seal Spring

2017年07月19日 | マニュアル
夏の間はもう逼塞だとのんびり構えていたのに、立続けに故障情報が伝わって来た。
今回は数日前に沖で始動紐が引けなくなった仲間の事例を紹介:

スーパーマグナムのオイルシール破損
仲間2人が岬の付根両岸からそれぞれ逆回りで出航し、魚突きをしたが、1人が戻って来ない。周囲2kmちょっとのコースなので、それほど心配せず待つこと暫し。仲間は800m程?を泳いで帰って来た。ロープが引けず、始動不可だという。
これが2km以上先の、いつものポイントへ行った場合だったら、大変な苦労だっただろう。折角2台で行くのだから、魚突きであっても付かず離れず行動するのが安心だ。現に、彼らは不調で始動不可或いは帰途燃料切れでもう1台に曳航して貰った経験が1度ならずあるくらいだ。



翌日早速修理に取掛った
この S.マグナムは1年半前に購入以来100時間以上?使用か。その間の手入れとしては、毎回乾く前にバケツの清水中で数分間運転するだけ。排気バルブは、ヘタってきたと感じたら外して逆さにし暫く経つと復旧するという。他には何の手入れもして来なかったという優秀な物だ。

アルミの本体はかなり塩錆で、シリンダヘッドの保温黒色キャップ辺りは特にひどいが、機能に影響は無いらしい。しかしマフラが固着しているらしく、今のところ自作の治具でも外せないという。
私は外観など気にしないが、この状態を他人に見せるのは少々気が引ける。






内部状況
スタータケースを外すとガソリン臭が強く、油?が垂れ出した。





クランク室側から油脂が垂れている。クランクシャフトのオイルシールの吹抜でベアリングの充填グリスが流れているのだろうか。


クランク室を開けてみると、何じゃこりゃ!掃気ポートに旋盤の切屑が引っ掛ってピストンを拘束している・・・・



・・・と思ったら、何とそれはオイルシールのバネ=ガータースプリングだった。




見れば前側のメインオイルシールのバネが無くなっている。本体ゴム部はしっかりした状態なのに、大珍事だ!


これは別の部品だが、この部分のバネが脱落/切れてシリンダに吸い込まれたというか送り込まれたのだ。



ピストンヘッドには殆ど傷が見られない。
ピストンスカートには傷があるが重症ではない。





クランクシャフト前側 カウンタウエイトの表面に薄く擦痕がある。ちぎれる前にバネが当たっていた訳だ。


後側=プロペラ側には傷が無い





このオイルシールのバネが脱落するというのは聞いたことがないが、プロの世界ではよく有るのだろうか?
内部状況からは、混合燃料の不良で潤滑不足と云う事もなさそうで、想像も出来ない。


NOK のHPで情報を探したところ、このバネが脱落する原因としては組付不良の他には、軸とシールとの芯出し不良が考えられる程度だ。
しかし異常振動など何の予兆も無かったわけで、今回のこの不具合は俄には信じ難い現象だ。

製造不良でばねの接続部が切れたり外れたりすることも有る筈だが、このあたりに詳しい仲間は、オイルシールもやはり日本製が安心だと言う。
私はプロペラ軸のシールを国産では探せず、海外から購入して本Blogでも紹介したことがあるが、急に心配になった。


高圧部への燃料・オイル侵入は副次的な現象だが、バネが脱落したシール不良が原因だった。
私の素人判断としては、侵入していた燃料・オイルの量からして、瞬間的なバネ脱落・ピストン拘束というより、少し前からバネの断線或は浮上り➡カウンタウエイトに接触➡少し時間をかけて破断➡掃気ポートから燃焼室へ。という図式を想像している。
バネがバラバラになったのはピストンによって切断された気もするが、当の仲間は散乱状況からしてクランク室内でバラバラになったようだと云う。




こんなことが起き得るのかと呆れながら、予備部品があったのでさっさと修理は済ませた。ピストンリング、オイルシールは当然ながら、正常だったメインベアリングも併せて新替だ。
なお、スタータケースに内接するOリングは伸びて緩くなっていたためこれも新替した。本来耐ガソリン等級の筈だが、ガソリンが侵入して膨潤したのだろう。


そう言えばオイルシールを2個重ねてあるプロペラ軸の場合、NOKの技術資料を改めて見ていて、言及されてはいないが、正逆に背中合わせに取付けることが全くの誤りでもないと思うようになった。専門家の説明が欲しいところだが、この辺りはもう少し調べてみたい。

以上、仲間の作業内容を紹介した。

Blog 第59回 オイルシール破損で始動不可の珍事 終り =小坂夏樹=

Blog 第58回 またスタータ軸空回り=小坂夏樹=Starter Axle Slip Again

2017年07月16日 | マニュアル
本Blogも回数を重ね、マンネリ化しているので当分は休止する気でいたが、仲間の故障事例が気になり、取り急ぎ以下投稿する次第です:


スタータ軸の空回り

Blog 第48回で離島の仲間のスタータ軸が空回りし、始動不可となった事例を紹介した。
その後スタータAssy=全体を新替して6か月間使ってきたという。毎週末使ってMax50時間程度の運転だろう。

しかしここへ来てまたしても全く同じ故障が発生した。
今回は沖だったので深刻だが、始動紐を曳くとやはりゴロゴロと空回りする感触と音がして始動できない。そこで負荷が出来るだけ小さくなるよう、ピストンの上死点を過ぎるまで前端の円盤・ノーズピースを手で回し、そこから紐を曳いた。これで数回目には始動出来て無事戻ることが出来た。

上死点までは圧縮工程で抵抗が大きく、それを過ぎれば急に回転が軽くなる。そこから曳き始めると空回りを起し難い訳だ。この辺りは専門技術の当人の知恵というものだろう。
同氏は本機の使用時にボードを曳航しないが、私ならこのアイデアに加えてプロペラへの水負荷が掛からぬよう、ボードに載せて紐を曳く積りだ。


早速内部を見ると半年前と全く同じ症状で、写真右がまだ新しいのにスタータ軸とプーリーが空回りしてしまうもの。なお、ノリモノランドのHPではロープリールをスタータプーリーと呼んでいるので誤解のなき様。
写真の左はAS600に組付られていたもので、これを再利用することとなった。軸のOリングは新旧で径が違いそのまま嵌めることは出来なかった。また、Oリングの奥にワッシャが嵌めてあるが、旧品には使われていなかった。このように、Comer 社で多少の改造(改良?)はなされているのだが、やはり全体的にはプラスチック技術が低下しているのかもしれない。



プーリーの爪側から薄っすらと見えるシャフトの影は新品は細く、旧品の方が太く見える。それが原因で空回りしやすいのかと気になったので、私も手持ちの同じくAS600用のプーリーに光を当てながら観察したが、モールド内部の様子は判断できない。ここでシャフトの径を変えているとは考えられないのだが・・・・



シャフトの小Oリングの機能は私には判らない。水密性はウオーターシールで保っている筈だ。


以上単純な樹脂破壊故障だが、事態は深刻だ。
2度有ることは3度ある、沖で起きるかもしれないと不安になる。

素人考えの対策としては・・・・プラスチック部からシャフトを横切る孔を開けられれば、ピンを打込むことが出来る。多分SUS304などのステンレス系の素材の筈だから可能だろう。



その他
Blogの技術情報紹介
「アクアスクーター」をネット検索しても、失礼ながら国内では参考になる技術情報は殆ど無いとこれまで記載してきた。
ところが、つい最近仲間の指摘で気が付いたら、古くからのブログ「こいちゃんのブログ」にかなりの情報があるようだ。
魚突き道具の職人・業者の知られたページだが、テーマ別の「アクアスクーター」を見るとほんの数件しか記事がない。本機の関連は商売ではなく、同氏の趣味(?)の範疇だから当然なのだろう。しかし別の表題で時々埋れた詳しい技術記事があるようだ。

これは本Blogの如き素人の試行錯誤ではなく、機械屋さんの本格的な作業記録とも言うべきものなので、諸兄にも一読を薦める。或いは常識・・・だったかもしれないが。

私には今のところ、同Blogの過去に遡って関連ページ全てを探す間がないが、画像一覧で該当するものを探すのが簡単だろう。
  


Blog 第58回 またスタータ軸空回り 終り =小坂夏樹=