Aquascooter Maintenance for Spearfishing アクアスクーターで魚突き 全76回

使いこなそう、アクアスクーター整備ノートby KosakaNatsuki

**全76回で終了済み**

Blog 第39回 大端部ベアリング破壊②、空気室にガソリン、その他 =小坂夏樹=Con.Lod Bearing Failure②

2016年06月23日 | マニュアル
1、スーパーマグナム故障状況の続き
すっかり時間が経ってしまったが、Blog第35回で仲間の、故障したAS650スーパーマグナムを分解中の状況を紹介した。修理はとっくに完了し、実用に供している。組立時の写真は撮らなかったということなので紹介できないが、分解時の写真が少しだけ追加されている。組立には格別問題はなかったという。
と言う訳で今回も仲間の作業状況を紹介する。第35回と併せて読んで欲しい。

クランクシャフトの前側オイルシールの裏側 =全体に削れたゴム紛が付着



表側はゴム縁の摩耗で内部の金属が露出、ガータースプリング(押へバネ)はステンレスではないのかひどく錆ており、リップも傷んでしまっている。



前側メインベアリングのクランクに面する側



前側メインベアリング 高圧部に面する側



ベアリングの内輪 齧りあり


ベアリング外輪


玉はきれいで、保持器の写真は無かったが、正常だったようだ。後側のメインベアリングはガタも無いという。



オイルシールとベアリングを抜き取ったクランクケースハウジング前側
 


今回修理用の購入部品
以前紹介した私的な交換部品表にあるような汎用部品は手持もあり、入手も簡単だった。
肝心の純正構成部品はネット通販で以下の様に入手した。ガタが来ている?予備機(AS600とAS450との混成品)用も同時に注文した。
ノリモノランドで扱の無いクランクAssy(組立)も含み、金額は数万円と、馬鹿にならない。今回の仲間の場合のように、大きく破壊してしまったアクアスクータは修理を諦め、新品を購入した方がお徳ということもあるので、よくよく吟味すべきだろう。
この事はまた、中古機の購入にも当てはまる。私はオークションの品物には特に注意すべきだと述べて来たが、劣化の激しい海用機材を中古で購入するには、それなりの覚悟というか、技術力があり、追加で発生するかもしれない整備費用の負担に耐へられなければならない。それが今まで大変な苦労を強いられた、素人の私が得た教訓だ。

スタータケース
以前購入時の肉厚が不均一だった物と比べると成型の出来は普通に見える。

スーパーマグナムのクランク組立



スーパーマグナムのピストン・シリンダ組合わせ


小物部品



最高速度の追及はやめた
さて、修理が完了し、以前通り使用開始に当たり、当の仲間は、これまでのようなアクセルを一杯に握って最高回転を保ったままでの運転をやめたという。それは、これまでも紹介した通り、潤滑不足?に因ると考えられるベアリング破壊が多発しているためだ。
船外機エンジンは、最高回転域で使うのが普通だと思っていたが、それは勝手な思い込みかもしれない。実は改めて昔の小型船舶操縦士の教本を覗いたら、最高出力の80%程度での運転が当たり前だとしてあった。現実を目の当たりにするとある程度は回転を落として運転した方が安心と感じられる。本機の場合は5000回転で2馬力とマニュアルにはあるので、それが一応常用回転数だということなのか。しかしYoutubeではホース排気式のチューニングで5600回転辺りでガンガン回している映像もある
https://www.youtube.com/watch?v=HZ9QYLcJDdc

離島の様に移動距離が長いと、ついつい全速前進を続けたくなるが、やはりある程度は絞って運転した方が安心ではある。2サイクルエンジンの潤滑は厄介なものと感じている。


なお、本Blog第18回で御当人のアクセル固定金具を紹介したが、金具の角度も変更するなどして、最高回転での運転は続けない様にしたという。すると、明らかに燃料消費も低下した。この点も以前論じた通りだ。私もそうした固定方法を考えていたが、今まで通り、速度を変えながらの運転で行こうと改めて思う次第だ。


2、AS600/450混成品も大端部破壊
Blog35回の末尾に追加情報として、やはり同じ仲間の予備機が異音を発しており、故障が近いようで楽しみだと紹介した。
そこで当の仲間としては、やさしい運転をして何とか使っていたが、結局スーパーマグナムの修理が終わるとほぼ同時に動かなくなったという。
このスクータは高圧部などの前半分はAS600で、燃焼室後部からはAS450を組み合わせたもので、古い部分は10年も経過している。これまでに小端部ベアリング、ピストン・シリンダなどは交換した経歴があるが、コンロッドとその大端部は多分古いまま、500時間も使用したと思う。

ピストン・シリンダの状態はひどくはなく、コンロッドはガタついていたが小端部は破壊されてはいない。そこで、大端部ベアリングの破壊でその欠片がピストンに引っ掛った、と断定してクランクセット(組)全体を交換した。
そのまま分解はしていないので、ベアリング破壊?状況は解らない。
なお、今回購入したクランク組の小端部ベアリングは、前に紹介した保持器付きであり、旧品は外輪型だったが、旧品のピストンピンをそのまま使って組付け出来たという。


何時からだったか、ネット販売の写真で見るとコネクティングロッド大端部の中央に切込が施されるようになったが、この購入品はその形だった。ベアリングの潤滑には有利だと感じる。
しかし兎角ベアリングが破壊する小端部には切込がない。こちらこそより潤滑を狙いたいところなのだが。


3、空気室に燃料が溜って始動不可
燃料タンクから逆止弁を越へて燃料が逆流し、空気室に溜る事がある。その状態では、混合気が過剰となり、始動できなくなる。この事は米国販売業者のHP (aquascooter.com)でも注意されていることを Blog第31回 で紹介した。私もこれまで始動できない時にガソリンが溜まっているのを何度も経験しているが、致命的な影響はないと軽く考えていた。しかしつい最近、はっきりそれと判る始動不良を経験してしまった:

海岸に車を止めて本機を降し、一発始動が出来ることを確認し、燃料コックを閉じ、直射日光下に置いた。他の道具を用意し、10分ほど経ってさあ入ろうと始動を試みたが、さっぱり掛からない。プラグ被りが原因だろうとしてプラグを新替までしたが、それでも駄目。
結局使えないと判断して本機は車に戻し、泳いで魚突きをした。
その後、排気ホースを巻き付けてあるため動かしにくいスノーケルを外し、点検すると、空気室に燃料が溜まっていた。ひっくり返して排出しても出て来るのは10滴もないが、あとは内部に付着している。さてはと思い、この状態で空気室を少しでも乾燥させようと、何度か息を吹き込んでみたりしたところ始動できた。
この燃料逆流は、強烈な日射で温度が上がり、膨張した燃料の圧力に抗しきれず、逆止弁が燃料を通してしまったようだ。気温は低めだったが、日射が強烈だったので、その温度変化は大だったらしい。
遠征中はスノーケルに排気ホースをテープ止めして本体に付けっ放しにしているので、内部に溜まったとしてもガソリン分は適当に発散すると思ったが、そうはいかないようだ。
また、今までもタンク内圧が上昇することを気にして、海岸に本機を置く場合は、ボードや足ひれを日除けにしたり、始動前には必ずタンクキャップを一旦緩めるなどしていた。しかしその後は、更に燃料タンクキャップを緩めておくようにしている。但し入水時は必ずキャップをしっかりねじ込んでおかねばならない。

逆止弁の先端が見えているが、近々交換する予定だ。



4、その他:パーツクリーナ
最近気付いたことだが、自動車整備などに多用されているスプレー式のパーツクリーナの成分表を何気なく見たら、アルコールが含まれているではないか。ゴム類はアルコール耐性が低いものが一般的だ。そして気が付けばメーカー側の説明でも、ゴム、プラスチックには不適当だとしている。以前本Blogで使用OKと書いてしまったと思うが、読者諸兄には常識だったのだろうか。
勿論、製品によって違いはあるのだろうが、今後は使用箇所を限定していこうと私は考えている。プラグの清掃はOKだが、特に気になるのはOリングまわりだ。
無くもがなの話題で締め括りになってしまった。

以上

Blog 第39回 端部ベアリング破壊②、空気室にガソリン、その他 終り =小坂夏樹=