Aquascooter Maintenance for Spearfishing アクアスクーターで魚突き 全76回

使いこなそう、アクアスクーター整備ノートby KosakaNatsuki

**全76回で終了済み**

Blog第68回 スーパーマグナム分解整備始末=小坂夏樹=SuperMagnum Overhaul FollowUp

2018年02月27日 | マニュアル
S.マグナム分解整備の関連作業が少々あったのだが、流感にやられている内に長期遠征が迫ってきた。今回は簡単な紹介だけ:

高圧部水密検査
旧モデルに合わせて共通の5Φネジの点検孔を新たに設けたが、簡易ポンプのホース口寸法には合わない。そこでホースの内径10Φに合わせ、手持の10Φ真鍮端材で5mmのネジ口金を作った。後端には̠⊖ドライバー用の溝も付けた。真鍮を切削するのはステンレス材に比べて夢の様に楽だ。
貫通孔は2.5mmΦで、ねじ込んだだけでは空気が漏れるので、ガスケットを嵌めた。ネジ山に液体ガスケットを塗布するだけでも、漏れはしないと思う。


点検孔にねじ込んだこの口金に蛇腹ホースを直接挿し込む。
加圧してみたが外部への漏れは無く、一安心した。
なお、メインオイルシールが劣化していたら、クランクケース側に圧は漏れてしまうが、本方式では検知できない。


水中運転は上と同じ水槽で行い、問題は無かった。


プロペラシャフト周りのグリスについて
水分混入で乳化していたグリスは、新グリスで押し出したが、残存分が有る筈で、その水分がどう影響するか不安だ。分かっていれば溶剤で完全に洗い流すことも可能だったのだが、気付かず残念だ。
本機の場合、1年経過と云っても実運転時間は大したことが無く、この部分をいじったこともないのに浸水したのだから、シール新替でも再発の心配を拭えない。
仲間の場合も、ここからの浸水でグリスの乳化だけでなく、ベアリングが錆びていた例が多い様だ。ばらさぬと判らないというのが困りものだが、ここにもグリスを抜き取って確認できるようなネジ穴1個だけの“点検孔”または“グリス注入孔”を設けたら良いかも知れない。


マフラ残滓の対策?
マフラ残滓については、本ブログの23、30、31回に他の使用者の例も含めて紹介したが、今回もひどい残滓が付着していてショックだった。
離島の仲間の場合は、使用後は清水中で運転し、その後必ず排気弁(ゴムカップ)を外してクリーナ液を注入し、丁寧に内部を濯いでいる。
しかしこれも以前紹介したが、同じ場所で同じ様に魚突きをしている別の仲間の場合は、使用後海水が乾かぬうちに、必ず現場へ持参した清水で濯ぐだけ。但し排気ゴムカップだけは、次回出漁時に「休ませておいた」別のカップに交換する。2個のカップを交互に使うと言う訳だ。これで長期にわたって使へている。これはへたりを防ぐ合理的手法だ。
移動距離が長い離島なので、この2名ともアクセル一杯に吹かしていることが殆どで、排液の放出には有利だと考へられる。

私の場合は月例の4~5泊の遠征中は、上陸後本体を前後に傾けて排液を飛ばそうと数秒間空吹かしする以外には(疲れ切っていて)何もしない。翌日は入水前に排気ホースをあさっての方向に向けて始動する。 すると内部あるいはホース内に溜まっていた、結構な量の排液が飛び出す。帰宅後には排気ホース伝いにマフラにガソリンを入れて濯ぐ。

普通のアクアスクータなら、排気バルブを外さないと、排液は出てこない。それに対して排気ホース式では、常時垂流しなので、傾斜さえつけて置けば排出にはより有利な筈だ。
また、低水温や低速でマフラが冷えると排液の粘度が高くなるからより残留し易くなる。いっそのことマフラにカバーをして保温してしまうのも効果あるかも知れない。但し排気音圧を低減する本来の機能が損なわれる・・・と言う様な事を考慮して、今後は毎日の使用後には保温と傾斜とを心掛けてみたい。遠征終りには、時間を置かず残燃料を利用して内部を濯ぐことも忘れぬようにする積りだ。


塩析出対策?
スタータケースの嵌合部やマフラの合わせ目には、いつもそうだが今回も塩が結晶化していた。Oリングを押上げて浸水し易くなる心配もあるし、アルミが錆びるのも好ましくない。この対策として合わせ目に液体ガスケットを詰めることも検討している。しかし却って海水をそこに滞留させて、逆効果となるかも知れない。
すぐ清水で洗う、或いは水洗するまではビニ袋などに入れておくと云うのも塩の析出を防ぐ手かも知れない。
この辺り、更に検討したい。


キャブレタの浸水
第66回で紹介した、キャブのアクセル軸からの浸水が起きる。
予備のキャブのアクセル軸から取外したこのXリングは、素人目には劣化しているとは見えないが、原因となっているらしい


購入したXリングに交換すべく、リング溝を清掃し



4隅の間にグリスを入れながらリングを押し込む



ワッシャがリング溝の構成要素になっているので、正しく配置するのが重要らしい


一方こちらはチョークの軸で、アクセル軸と違い、ねじ止めせずバネと鋼球でカチッと停止する構造だ。キャブ本体に載せて撮ったので却って見難くなってしまった。軸にはXリングは使われておらず、ごく細いOリング様の輪が嵌められているが、リング溝は無い。ここから漏れたことはないと思うので、グリスアップして再組立をした


なお取外した物と新品とを比較してみるが、大きく差がついているとは思えない。

2カ所でシャフトに接しOリングよりシール性が大だと云うが、この様に細かな場合は却って劣化しやすい感じもする。


当然キャブ単体で水密検査をしなければならないが、他事に忙殺され先送りとした

以上


Blog第68回 スーパーマグナム分解整備後始末 終り=小坂夏樹=SuperMagnum Overhaul FollowUp






Blog 第67回スーパーマグナム1年目分解整備⑥ =小坂夏樹=SuperMagnum Overhaul

2018年02月14日 | マニュアル
組立と水密検査

いよいよ最終段階だ!と作業に取り掛かろうとしたのだが・・・・
前回キャブレタのニードルバルブを再点検したと記したが、今度は別のところが気になりだした。

Blog第63回で、プロペラシャフトを抜き取り、錆も無くきれいだったせいもあり、残存グリスが綺麗だ、問題ないとした。偶々使おうとした「リチウム万能グリス」が半透明で同じような印象を持ってしまったからだろう。しかし残っていたのは柔らかな灰色っぽいグリスであり、水混入で乳化していたのではないかと思い始めたのだ。拡大写真がこれ


それに対して前方スタータ側に付着していたのははっきりした茶褐色だ。同じく拡大写真


そう云えばと探してみたら、Blog第23回に掲載したこの写真はAS650のプロペラシャフト周りから取外した部品だが、今回の前側と同じ茶褐色だ。



更にしつこく2個目、つまり内側のプロペラシールに残っていた微量のグリスと前側メインオイルシールに残っていたグリスを比較するとこんなに色が違う。
しかも灰色のグリスを火にかざすとパチパチと音を立てて燃へ、混入した水が突沸していることが明らかだ。

本体に浸水したことは1度だけ有るが、クランク室の圧力は高くは無いので、短時間にメインオイルシールを通して海水が浸入する筈はない。(スーパーマグナムはクランク室とカウンタウエイトの形状を見直して吸気の充填効率或いは掃気効率?を上げたようだが、少しの違いだろう。)
こうなると2重にしたシャフトシール2個が1年で劣化し、プロペラ回転と共に海水が巻き込まれていたという事だろう。この写真通り、見た目も、触ってみてもそのリップ部はしっかりしているのだが、上記通り裏面のグリスがリップを通過して前面に回込んでいる。
シール2個は新替したが、また1年経過したら海水混入しているのだろうか?


オイルシール類の寿命をどう判断したらよいのか?専門家の意見が聴きたいところだ。
なお、このプロペラシャフトシールのガータースプリングには錆が浮いていた。ステンレス系らしいが磁石にもくっつく。NCO980と云うのが型番らしいが、メーカーは?PIAと云うのがそれなのか判らない。

NOKのHPを見るとオイル用にはピアノ線など鉄系も使っているが、水用にはSUS304、316を使っている。これらステンレス材でも海水では錆びるから、水洗いが大切なのだろう。

今回交換した海外市販品シールの耐銹性は不明だ。


いやはや、オーバーホールは必要なかったなどと記したが、実施してよかった!
私が呑気にグリスは問題ないと記したのを、写真を見てこりゃあ駄目だ、何やってんだと嘲笑った人も多かったのかもしれない。
いつも言訳ばかりだが、これだから素人考へは危険だ。諸兄にも慎重に判断・作業して欲しい。

さて、今更本体を再度分解してもなす術が無いので、このままで組み立てを進め、2週間の遠征後、さらに点検して状況を投稿したい。1台のみで遠征しようとの考えはとっくに改め、荷物が2個口になっても予備機を持参することとした。


またしても寄り道の様で作業が捗らぬが、こういった不具合が出て来るので、結果的に今回はまともな分解整備をしていると言える感じになった。


タンク組付前の本体だけで水密検査

キャブを取付けて、そのエルボ接続フランジを塞ぐ。コルク栓を使ったが、削り過ぎて隙間が生じ、ゴムテープで塞いだ。
チューブ類を塞ぐには以前も使ったが、時計ドライバーがぴったりだ。



この状態で排気ホースから加圧したところ、この様に泡が出て来る。

派手に漏れているのは、緩いコルク栓をしたキャブ入口だから、心配無用。

上端の泡はプラグの締め付けが不十分と判る。ここは圧力が外へ漏れる方だが、エンジン停止状態では逆に浸水してしまう。後で増し締めするか、液体ガスケットを塗布する積りだ。
シリンダヘッドのガスケットから漏れているのは多分馴染んでくれば止まると考える。
キャブの上部から漏れている分も水分で馴染めば止まるだろう。

こんな風に経験上簡単に裸状態での水密検査を済ませた。

高圧部の点検孔は接続するネジつきノズルが未完成なので、後にする


エルボには液体ガスケットを塗布し、タンク取付、チューブ類を接続し、やっと全体の組立が済んだ

水密検査
予想通り、どこからも泡は漏れず組立はOKだ。



ついでに、予備機にしているAS650も、久しく確認してなかったので検査して問題なし。



始動試験
組立時にシリンダを保護しようと、ピストンリングにグリスを塗布しておいたが、初めはロープが重くて驚いた。そこでプラグを抜いて少量の燃料を滴下し、摩擦を減らしてからは簡単に始動が出来た。
水中での運転をしたかったが、辺りが水浸しになるので、本日はこれで完了とした。


排気ホース中の残滓が前回使用時からかなり付着したままなので、多少温まって排出できるかと階段に倒立しておいたが、効果は無かった。


共同住宅なので、迷惑とならぬよう、様子を見て水中運転など更に実施の積りだ。
細々した手入れもまだ残っているが、一応今回の分解整備は大苦労の末に完了!とした。

なお、前回紹介したXリングは近日中に入手できることになった。今更本機のリングを交換するのはおっくうなので、当面は予備のキャブユニットの整備にだけ使うことにした。勿論遠征時は予備品に含める積りだ。
以上

Blog第67回 スーパーマグナム1年目分解整備⑥ 終り =小坂夏樹=SuperMagnum Overhaul


Blog 第66回スーパーマグナム1年目分解整備⑤ =小坂夏樹=SuperMagnum Overhaul

2018年02月12日 | マニュアル
分解整備継続

遅れ気味の作業で仲間にも呆れられている様だが、次回あたりには何とか完了すると期待している。
長期遠征には本機2台を持参するのが常だったが、黒猫が寸法、重量共に制限してしまった為、1台で何とかならぬか、気を揉んでいる。


先端ウオーターシール
スタータケース先端にあるシールは交換するはずだったが、他の部品も劣化は少なく、ましてシャフトは起動時しか回転しないので滅多に劣化しないと思い始めた。そこでグリスを拭き取って点検し、このまま交換せず使うことにした。何せ点検孔を新設したので、漏れは常に試験可能だ

スタータプーリ円盤の空転止めに、点線部に斜めに圧入したピンはしっかり埋没しており問題ない。また、この写真では見えないが、シャフトにはOリングが嵌めてある。私にはどうもその作用が理解できないが、これもそのままにした。


ここまでくればさあスタータAssyを高圧部に嵌めようと、グリスアップして押込んだら、Oリングがはみ出してしまった。この状態のままでも、取付けネジ4本をまともに締付ることが可能なので、気付かないことがある。それで浸水した例が「軍艦島」へ通っていた柿田氏のHPに出ていた。
今回はケース全体が完全に嵌らないうちにはみ出してしまい、すぐ気づいて大事には至らなかった。

このような失敗も点検孔から加圧すればすぐ発見できるので、私としては不安が減った感じだ。
是非メーカーのコメル社で高圧部の点検孔を復活して欲しいものだ。


ブラケット補強金具はしっかり付着している。接着剤は弾性エポキシのセメダインEP001


プロペラを取付けようとして、中心部裏側が自作の抜具の滑りで大きく削られている。機能上の問題は無いが、次回は抜具を改善しなければならない。

抜具は第15回で紹介したもので、ボルトの頭を削っただけだが、精度と剛性不足らしく、脚が開き気味になって滑ったもの。

余談:加工技術も材料工学も半可通の私だが、このプロペラにしろ、今回ドリルで穿孔した本体アルミ部にしろ、ごく軟らかい印象がある。純アルミなのだろうか。少々硬質の等級にして呉れれば安心感が向上するのだが?


本体部の組立が進んでかなり気が軽くなった。
マフラ固定ネジには液体ガスケットを塗布した。この部分は銅のワッシャを使って密封してある筈だが、浸水した経験がある。


さて今回のオーバーホールで、Blog第62回の写真を見返したところ、キャブレタのニードルバルブ(針弁)周りを点検し忘れたことが気になりだした。
そこで再度蓋を外して上部燃料溜りを点検すると、この写真の如く、針弁の連結悍の支点棒に塩が析出して錆びていた。錆びても機能にすぐ影響するわけではないが、嵌る溝と棒とを清掃した。
針弁の先端を見ると輪形に筋が入っている。弁座に当たって開閉する部分だ。ゴム?状のコーティングがあるが、パーツクリーナで拭くときれいになり、摩耗で段付になってもいなかった。従って、これもこのまま使用することにした。


下側のポンプ室は、上記第62回でも紹介した通り、ポンプ膜に塩が析出(侵入?)していることが最近は多い。こちらの蓋はネジ1本で固定するため、浸水し易いのではないだろうか。
その対策の積りで、液体ガスケットをポンプ膜や蓋の内部合わせ目に使って、はみ出したものが不具合を起こしたことがある。クランク室の合わせ目には必須だが、他への塗布は要注意だ。今回は気休めだろうが、組立後の留ネジと蓋の合わせ目に外側だけ液体ガスケットを塗布してみた。



念の為としてキャブ単体で水密検査をした。以前は木片にキャブをねじ止めして簡単に確認できたが、今回は板が割れてしまって失敗。
金属板では面倒だったので、手近なアクリル板にネジ孔2か所だけを開け、ガスケットを挟む。アクリル板が反って漏れるのを防ぐために、ジャンクのキャブ接続フランジを裏から当ててねじ止めした。伊のLorenzo氏もYoutubeでこれと同じ感じの治具を紹介していた。


浮袋用ポンプをつないで水中で加圧すると、な、な、なんと今回触りもしなかったアクセル軸から泡が出て来た。これは洗面台の水中だ。


泡喰って軸を抜いて特殊Oリングと云うのか、断面がひょうたん型のようなゴムパッキンを点検するとかなりの塩が析出している。実は手持の別のキャブではこのゴムパッキンが劣化していて、困っている。この現品も25倍のルーペで観察すると、表面はかなり荒れている。1年でこれでは困ったもので、普通のOリングで何とかならないか検討中だ。 
寸法は、ゴムなので正確に測れぬが 4.7mmΦ X 7.8mmΦ X 1.8mm厚で、アクセル軸の方は4.75mmΦとなっている。


掃除とグリスアップで再組立し、また水中で加圧したところ、今度は泡の漏れが無くなった。甚だ不安だが、これでキャブは組付しようと思う。



Xリングだった!
この特殊形状のOリングというか、パッキンについては自動車整備関係者に尋ねても判らなかった。しかしキャブレタメーカーが独自に作れるような物ではないから、標準品として有る筈だとその形状からネット検索したところ、それらしい “Xリング” に行当った。
やれやれ今朝の事だ。

キャブの修理に必要なので、入手を急ぎたい。適合品が見つかると良いのだが・・・・

これはツイスターリングが正式名称で、断面から通称Xリングと呼んでいる物だ。こんな特殊製品が有ったのかと誠に驚いたが、それよりも、当然必要になる部品なのだから、交換部品として Walbro社がキャブダイアフラム修理キットに含めるべきだ。
取急ぎ一例として「華陽物産」の頁を見て欲しい。機能も説明されている。販売もしている。
ここの T-008 というものが適合しそうだ。
URLも紹介する: 
http://www.kayo-corp.co.jp/common/pdf/twistar_ring.pdf


更に、元は矢張り米国規格だというので、念のため過去に購入経験のある “Oringsandmore.com” という業者ページを見ると、品番 008 というのがほぼ同じサイズだ。但し厚さというか高さが僅かに小さい。
20個組で2ドル以下と安価だと感心したが、互換品だ。送料の方が何倍も高い。
http://www.oringsandmore.com/x-rings-size-008-price-for-20-pcs/


華陽物産の方は見積依頼をしなければならないので、逸る気持ちでたった今、さっさとUS業者に注文した。仮に不適合でも、費用は僅かだ。また、純正でなくとも、点検はしょっちゅうしているので、これで良しとした。

また寄り道してしまったが、多少時間が掛かると思うので、本機の組立はこのまま進めようと思っている。
以上
Blog 第66回スーパーマグナム1年目分解整備⑤ 終り=小坂夏樹=SuperMagnum Overhaul

Blog第65回 スーパーマグナム1年目分解整備④ =小坂夏樹=SuperMagnum Overhaul

2018年02月09日 | マニュアル
スーパーマグナム分解整備④=苦闘中=
無いない尽くしの狭い共同住宅での作業は過酷で、ノロノロと進めている。
作業手順など、もっとスマートにこなせるのかもしれないので、今後取り組む諸兄はよく計画を立てて欲しい。

動画にすれば投稿が簡単かとも考えたが、却って編集作業が膨大になりそうで諦めている。
なお、イタリアの Aquascooter lorenzo77 でyoutubeに有ったビデオは静止画を流すだけになってしまっているが、他にも有用なものが結構投稿されているので、未だの諸兄は是非一覧あれ。

高圧部点検孔
今回の最大の関心事として、旧モデルに有った高圧部の水密性を点検するための孔をやっと穿孔した。
穿孔位置は内部に残る元々の点検孔の肉盛に開けるため、旧品と全く同じにすればよい。それを見ると、孔はクランク室の真横90度から円の中心に向いている。しかし後退角というか、機体の後方へ角度が付いている。それ故2軸式と云うのか、高圧部の筐体つまり本体前半部を傾けて掴める万力の様な物が必要だと思っていた。だがふと気が付けば、必要な角度を付けて板にねじ止めし、それを普通の万力で掴めば可能なので、実行した。

位置決め
AS500型のジャンク品に合わせてポンチを打つ。この写真では、縦位置は両側の縁からそれぞれ21mmほどの中心で、横位置はクランクシャフト孔中心に合わせる

穴開け
まず点検孔があるジャンクの旧品を、板片に30度の角度を付けてねじ止めし、万力を利用して孔を鉛直に調整して位置決め印をつけた。その後旧品を取外し、本機の前半部をねじ止めし、位置決め、確認後ボール盤で4.2mmΦで穿孔した。結果は・・・ナント位置がずれてしまった。アルミで簡単にドリルが進むので、一旦確認をしないまま開けてしまい失敗した。使った板が薄くてぐらついたのも敗因だったか? 玄人筋の哄笑は忘れ、恥を忍んで “普通の” 諸兄の参考までに掲載する次第。

大工の墨糸ではないが、何か針金のようなもの、或いは巧い型紙を、中心から肉盛部に張って位置決めした方が、後退?角も示すことが出来て確実かも知れない。その場合は旧品見本など無くても穿孔が出来そうな気がする。

開通
角度はほぼ正しいようだが、位置ずれの分だけ?孔もずれてしまった。実はこの台座というか肉盛部は結構な厚みがあるから、少々ずれても問題ないと思っていたので、まあ良しとした。そもそもこの部分はメインのシール吹抜でクランク室内圧が掛かることはあっても、外部水圧は僅かだから、ネジと液体ガスケット塗布で問題ないと思う。

ネジ切
旧品は5Φネジで塞いでいたので、同じにタップを立てた。

点検孔完成
ネジ頭を沈める為に10mmΦの段付孔とし、段付部は止ネジでの密閉を確保するため平面にしたい。試しにそのままボール盤で初めてエンドミルを使ってみたがグラグラで巧く行かず、ドリル先端のままの円錐段付で済ませた。しかし上記通り液ガスを塗布すれば密閉性も問題ないと思う。
ワッシャとネジは旧品をそのまま流用した。
段付と云ってもあまり深くするのは不安だったので、ネジの頭はかなり出っ張っている。平頭のネジにすれば凹状になるだろう。

点検孔には実際は、いつも使っている浮袋用のポンプを挿し、加圧して空気漏れがあるかどうかを確認する。しかしメインオイルシールが不良の場合はクランク室へ漏れてしまい、判明しづらいかも知れない。そうなると長い時間を掛けてクランク室側も均圧するまで加圧し続けるのか。
圧力計付きのポンプなら、その圧が抜けていくかどうかでシール不良も判断できるのだろう。


前側メインオイルシール
シール抜き取りはいつも苦労するが、本機の場合は簡単だ。前後のメインシールは下に強固なボールベアリングがしっかりと嵌っているので、間にマイナスドライバーを突っ込んでこじる事で、他に傷も付けず、簡単に外すことが出来る。この場合はシール自体に傷も付かず、再利用も出来そうな感じで外れてきた。なお、プロペラシャフトシールは1個目は同じやり方で外せるかもしれないが2個目は奥まった位置で、前回紹介したように引掛け具がないと難しい。この後交換予定のスタータシャフトシールも少々厄介だ。


シール交換
後側に付けたのと同じNOKのオイルシールを挿入


クランク室組立
ピストンリングが正しく嵌っていることはシリンダを回して開口部から確認した。回転止の小さなピンがあるので、リングの切欠き部をそれに合わせなければならない。
シリンダの位置合わせはネジ穴で簡単に決まるので問題ないが、以前見たイタリア?の投稿に、クランク室を止めているネジを緩めず、シリンダを鏨か何かで叩いて外した例が有った。それでは再組立時に、ピストンリングを巧く挿入するのが、かなり難しいのではないかと想像したものだ。


シャフトの回転を確かめながらネジを締付けようと、キー溝に適当な円盤(座金)を挿してセロテープで留め、手掛とした。なかなか便利だ。

スタータ部Oリング
Oリングは再使用可能とも感じたが、僅かにざらつくところがある。塩粒なら洗えば良いかとも思いながら、新替した。写真外側が取外した物。内側が交換品で、他の物にも使ったが、オリジナルより小径の95mmΦだ。この点は前にも記したが、スタータケース取付時にOリングがはみ出す事があり、私としては、この程度の径が適度だと感じている。


高圧ユニット取付、プラグコード根元縛り
点火タイミングが狂わぬよう、予め印をつけておいた位置に合わせて固定した。
プラグコードを動かせなかったが、プライヤで口ゴムの脇を咥へ、CRCを吹き付けたところ、滑らかに動くようになった。過去に問題は無かったが、念のため口ゴムの根元を針金で縛っておいた。
そういえば、プラグコードとCDIユニットの接続部は相変わらず動かせず、触らぬ神に祟りなしとばかりそのままにした。接続端子は10mmほどの長さの木ネジの様な電極で、コードはそこに捻込んである。捻じれば抜けて来る筈だが、動かないのでコードも傷みやすいかと心配した。その分、ラップ材を巻付けて作業中は養生とした。

なお写真でOリング部にごみが付着していることに後で気が付いた。ケースを嵌めるときには再度清掃しなければならない。このような部分は最後に作業すべきなのだろう。


マフラ嵌合部清掃
いつもながら、この部分には塩が付着し、錆も出て清掃が厄介だ。外から隙間を塞ぐよう何か塗り付けた方が良いのかもしれない。

Oリング交換
多少ざらつくところがあり、また外側リングはこの写真の如く、外すと捩れた状態なので、どちらも新替した。

マフラ組付
手で圧力をかけても嵌らないが、長ネジ2本で締付けると簡単に組付出来る。分解もこんな感じで簡単に出来れば内部の残滓清掃が楽だろうと思うが簡単ではない。最後にこの長ネジにも液体ガスケットを塗布しておく。

やれやれやっとここまで来たかという感じだが、まだかなりの作業があり、簡略なオーバーホールでもこれかと聊か辟易している。


以上

Blog第65回 スーパーマグナム1年目分解整備④ 終り =小坂夏樹=SuperMagnum Overhaul

Blog第64回 スーパーマグナム1年目分解整備③ =小坂夏樹=SuperMagnum Overhaul

2018年02月07日 | マニュアル
分解整備③ 各部品の点検整備

少しずつ分解整備を続けて何日も経過しているが、折から某国軍用ヘリが、整備が原因で墜落したという。
本機も何とか使へているものを、敢てばらして組直しているので、却って調子を悪くするのではないかと、素人としては不安が消えない。
なお、今回の分解整備作業は、各部の現状確認として今後役立つと思うので、小生の覚へ・便利帳として詳しく記録している。諸兄には冗長かもしれないが、悪しからず。



クランクシャフト・ピストンアセンブリ(Assy)
コンロッドの小端部ベアリングは新品同様で全くガタも無い。
ピストンピンも見たところ摩耗も無く、触っても凸凹なしで、このまま再使用で問題ないと感じる。
メインシャフトは僅かだが擦れたり嵌合していた痕の様に見える部分がある。しかしこれは新品時からのものらしい。業者のページ写真にもある通りだ:
ドイツ業者(Aquascooter.De)HPから
http://aqua-scooter.de/goshop/catalog/popup_image.php?pID=233
イタリア業者(Aquascooter Land)HPからhttps://www.aquascooterland.it/product.php~idx~~~57~~ALBERO+MOTORE+D_41+SM~.html


シリンダ内部
パーツクリーナとぼろきれで掃除した。ニッケルメッキで耐久性を改善したと云う通り、光沢があって滑らかな良い状態に見える。

ピストン
三角=▷印 が排気側だ。AS650まで39mm径だったものがスーパーマグナムでは41mm径に増大されその旨刻印されている。

ピストンリング 
表面は擦れて磨かれ、ピカピカしているはずだが、この部分は元の黒色表面がかなり残り、シリンダと密着していないのかと心配になった。しかし本機の様な2ストエンジンのピストンリングは4ストと違い回転しないので、シリンダヘッドの▷印や対応するシリンダ部を見ると、それは排気口を横断する部分だった。その分だけ摺動が少なく、磨かれないらしい。

こんな場合は上下のリングを入替れば均一に摩耗していくと思うが、判断できず、このままとした。

ピストンスカート部
全体に綺麗な状態だが、この赤枠内に浅い僅かな縦傷があった。映像を少し強調してある。そしてピストンリングの対応する部分も少し荒れている。何か、砂の様な物が吸い込まれたのかもしれない。吸気フィルタがないので、気を付けねばならないと感じる

コンロッド大端部
大端部自体は10.5mm厚で、カウンタウエイトの隙間は12.0mm つまり横方向即ち本機の前後方向には1.5mmの遊びがある。従って本機全体の組立時にその分(ピストン前後位置)の寸法差は吸収できるということになる。
隙間から見えるベアリングの状態は全く正常だ。
またコンロッドの長手方向へ引いたり押したりしても全くガタが感じられず優秀だ。
更にピストンを組付けてみても、上下動には全くガタを感じない。

この状態から、コンロッドAssyは大・小端部ベアリング含めて部品交換などは無用と結論付けた。
これこそ素人考えだが、両ベアリングにはシリコーングリスを塗布した。すぐに流れ去ってしまうだろうが、逆に悪さをしなければ良いと思う。


シリンダヘッドのガスケット
DIYというかケチ精神を発揮して、ガスケットはいつもシートから切抜いている。これは1.0mm厚のもので、切り抜くのは中々手間が掛かる。ボルトの孔は100均のパンチで開けるが、なまくらでこの切れ味は非常に悪く、砥ぎながら使っている。

クランクシャフトAssyとシリンダ
点検の結果問題ないとし、このまま組付けする。


シール交換
クランクケース後ろ側というか本体後ろ半分からメインオイルシール及びプロペラシャフトシール2個を外した。
議論のあった2重のプロペラシャフトシールは2個とも外向きに(正しく?!)挿入されていた。
手製の引掛鉤で外したが、中々外れない。途中でマイナスドライバーも併用し、他に傷を付けぬよう用心したがシール自体はいつもの如く壊れてしまった。

シールを外して見えるようになったベアリングは、メインベアリングもプロペラベアリングも滑らかでガタもないので、このまま再使用することとした。

グリスの交換
全体を分解している際に、清掃目的でプロペラシャフトが通る軸受周りに、多量に溶剤のパーツクリーナを吹き付けてしまった。しかしメインベアリングの裏というか奥のグリスは取除けない。それらを交換するにはメインベアリングを抜かないと無理だが、かなり大変だ。・・・・しかし気が付くと、内部の円筒(カラー)をずらすと大きな隙間ができる。そこに布を何度も押し込んでグリスを吸い取るというか、拭取った。このカラーというのは、単にプロペラベアリングの内輪が脱落しないように抑えて(突っ張って)いる物だ。

グリス注入
その後からリチウム系の透明なグリスを注入した。品質的にこのグリスで適合するのかどうか? 既に別のAS650の整備には使っているが、事後の点検はしてない為、現状は良く解らない。
手持のグリスチューブの口は細くなってはいないので、ストローを粘着テープで固定し、カラーの隙間に挿込んでグリスを押込んだ。カラー自体には詰め物をして漏れを防いである。しまいにはメインベアリングの隙間から写真の如く古いグリスがはみ出してきた。同様に、プロペラ側からも、カラーの後端からはみ出して来た。こんなことで我ながら巧くいったと安堵した。


古いグリスを拭き取った状態 
グリスアップが出来た様で、透明の新グリスがベアリングのボールの隙間からはみ出して来ているのが見える

交換用のシール

プロペラシャフト・シール
グリスを塗って2個とも外向きに挿入した。元々のテフロンワッシャ(白)を載せて木片で押し込むことが出来た



メインオイルシール
挿入が少々難しいと感じたが、木片で押して挿入した。

しかしよく見ると外側縁が乱れて写真手前が微妙に凹になっているように見える。触った感じでも僅かに差がある様に感じて、あれこれやってみたが変化しない。これで問題ないのか、組立時に再検討したい。



と云う次第で、まだまだ作業が待っている。
今回はクランクシャフトAssyというか、燃焼室周りの分解整備は無用だったか?!と感じている。果たしてどうなのか? 玄人はどう感じるのだろう。
以上


Blog第64回 スーパーマグナム1年目分解整備③ 終り =小坂夏樹=SuperMagnum Overhaul