Aquascooter Maintenance for Spearfishing アクアスクーターで魚突き 全76回

使いこなそう、アクアスクーター整備ノートby KosakaNatsuki

**全76回で終了済み**

Blog 第57回 前回の補足(ゴムボート型梵天)=小坂夏樹=Inflatable Float

2017年06月26日 | マニュアル
Blog第56回で紹介した水没・簡易整備を済ませた本機を最近の遠征で使用したところ、水面でも一発始動と好調だった。

本年1月に購入したばかりで30日間程使用してきたスーパーマグナムだが、これまで紹介した如く既にいろいろ問題を起こしてしまった。キャブレタの調整膜交換などの整備と点火栓交換は数回行ったが、現状としてはピストン・シリンダはそのままで、始動性は良い。排気弁を排してホース排気にしたのも効果があると信じている。
今後はスタータ・高圧部の水密検査用の点検孔を復活鑽孔する積りでいる。



ところで、前回紹介した梵天の補足として、ボート式梵天の使い勝手を紹介したい。

私の場合は Beuchatブッシャの Guardianガーディアン をたまに使ってきた。
足踏み式の簡易ポンプで3~5分あれば空気充填は済むが、後側のクッションを膨らませて取付けるなどしていると結構手間と時間が掛かる。
この写真の場合は赤旗を下げた位置にして少しは風の抵抗を減らしている。旗竿は差し込むだけ。曳いて泳ぐ場合、ボディーボードなどに比べると風の抵抗は大きいが、どちらにしても流されるので、苦労は同じような気がしている。
底には錘の入ったキールが2本あり、また底は水が溜まって重しになるため、引っ繰り返った経験は無い。その分、曳いて泳ぐにはかなりの負荷となり、ゆるゆるとしか進めない。咄嗟にダッシュで曳こうとしても駄目だ。 
また、銛でうっかり突き破らぬよう神経を使う。

入出水の時は本機を載せてしまえば安心だ。錨を打った時も、載せたままにすれば大きな安心感がある。また、鮫に突いた魚を食い切られることも防げる。
エンスト状態では、自分も半身を載せてキックして戻ることが出来る。


キールやフィンがなくもっと簡易なものなど、海外各社から何種類か販売されている。
Dive Inn の頁などで探せる。


なお、錨は自作の軽量・折畳式で、残材で簡単にというか、かなりいい加減に作ったが、大いに役立っている。


手銛ゴムの引手にフックを引掛け、それに梵天ロープを直列に繋いでおくと、必要時にはさっと投下できる。重く作れば狙いの場所に素早く打つことが出来るが、引手に掛けておくのは辛くなる。
これまでは3Φのステン線を曲げて錨を作っていたが、開きっぱなしなのでうっかりすると梵天ロープと絡まったり、ウエットスーツに引っかかって往生したものだ。

なお、これは岩場用で、砂地で使うとなると、スプーン形の腕にして重量も必要だ。

以上、前回の補足だけ。

Blog 第57回 前回の補足(ゴムボート型梵天) 終り=小坂夏樹=


Blog 第56回 強風で水没し、簡易整備=小坂夏樹=Flooded by High Sea

2017年06月25日 | マニュアル
強風と波とで水没
陸上でも19mの最大風速となった前回の遠征最終日に、錨を打っておいた本機が水没してしまった。
スノーケルに取付けた旗が海上の強風で煽られ、波も高くなってスノーケル先端を何度も水に突っ込んでしまったようだ。錨で本体は曳き止められ、スノーケル・赤旗・排気ホースに掛かる風圧で全体が前方回転気味だ。


何かヒントになるかとこんな状態で写真を撮ってみたが、空気室、燃料タンク内の空気量でバランスは変化する。水面で試さぬと何の意味も無いようだ。

この時は錨を打った周囲でアカハタを狙っていたが、錨を使わねば風で本機と共にあっという間にポイントから離されてしまう状態だった。
急激に強まった風・波に恐怖を感じ、本機に戻ると既に前傾して沈込み、更に風に煽られている。慌ててボードに載せて日光に透かして見ると空気室半分以上に浸水していた。排水し、駄目元でロープを引いてみたが、やはり始動はしない。
それ以上の作業もできないので本機を載せたボードに上半身を預け、正面からの風波に叩かれもみくちゃにされながら500m程の距離をやっとのことで戻った。岸寄りで短距離だったので助かった!

強風時はそもそも入水を避けるべきだが、敢行するなら今後は旗をスノーケルに取付けず、ボードに独立した状態で取付けようかと考えている。ボードに倒して載せて置けば風の抵抗は減るし、安全の筈だが、波があるとすぐに落されてしまう。かと言って、縛り付けるとボードごと引っ繰り返ってしまう。

独立した旗としては、棒に梵天を挿して下に錘を付けるのが普通だ。しかし梵天無しで棒の適当な位置に紐を縛っておき、曳航する梵天やボードに引掛けるだけでも構わない。邪魔と感じたらフックを外しボードの上に倒して置くことも簡単だ。

これは釣用の錘をゴルフシャフトに挿し込んで接着しただけのもの。見辛いが2カ所に紐輪を固定してある。銛と一緒に携帯するのも簡単だ。強風でもこれがぶらぶら揺れるだけで済み、本体やボードには影響しない。

梵天やボードなどの嵩張る道具は常宿に預けてあるが、他地域への遠征の場合には私はゴムボート式のダイビングフロートを使う。空気充填が必要など少々面倒で、また保管にも気を使わねばならない。そして風の抵抗が大きい。しかし本機を立掛けたまま安定して載せておける上、魚を放り込んでおけるなど有利で、もっと使おうと云う気もある。波が打付けている海岸から出入する場合も、これに本機を載せておけば岩にぶつけることもなく安心だ。



他の方法としては、カタログに載っている Comer純正の風船の様なものをスノーケルに挿すか、根元或いはタンク前端に梵天を追加する手もある。


なお、梵天無しで本機だけを錨で停めて置く場合は、流れが強いとその抵抗で本機が押し沈められることがあるというから、こちらも要注意だ。錨で本体が後ろ斜め下に引かれているところへ潮流の力が水平に前へ押す。ベクトルの合成で下方への力が掛かるという訳だ。梵天を介在すれば後ろ向に引く力は水平になるからこれは防げる。
大物に引込まれて浸水と云うのも諸兄が経験しているようなので、梵天などの併用は必須だ。

スノーケルには延長パイプが付属しているが、私は殆ど使ったことはない。波だけが高い場合はよいが、強風時は却って心配になるからだ。今回の場合、長くした上で赤旗は低い位置に付けていたなら有効だったかもしれない。


上陸後すぐにクランク室から大量の排水をし、プラグを替えて再始動はOKとなったので、場所を変えて1時間ほどは使用した。

こんな浸水の場合はすぐに手入れをするべきだが、しばらく運転したので内部の排水は進んだ筈だと思い、また遠征の疲れでそのまま持帰った。2日後になって混合用のオイルをプラグ穴から注入し、更に数日たってからやっと整備に取掛った。


簡単に後始末整備
これまで何度も苦い経験をしたので、キャブレタは点検のため取外した。露出した吸気ポートに細いファイバースコープでも使えばクランク室の状態が分かるかもしれない。そんなことを考えながら、本体を回転して吸気ポートから注入しておいたオイルを排出した。見れば特段水の混入も無く、コンロッドもきれいに見えるのでそのままで使うことにした。

ガスケットは分解時に破れてしまったので、削り取ったが、ゴミが入らぬようティッシュペーパーでポートを塞いで作業した。予めガスケットにシリコーングリスを塗布しておくと、こびりつかず、殆どの場合再利用が可能だ。


キャブのポンプ部はきれい


上部燃料溜りも問題ないようだ。


しかし流量調整膜の大気圧側は、空気室から海水が入ったと見えて僅かだが塩が析出し、上の写真下端の如く蓋の内側にもごく薄っすらと付着していた。

この膜/ダイアフラムは輪状の溝が消え全体にたるんで、ボケた様な状態なので交換したくなったが、調子は良かったので再使用した。簡単に水洗したが、塩は僅かに付着したままだ。

これまではしわが寄ったり凸凹と変形している場合が多かったが、全体にたるんだ方が調子は良いような感触がある。保管中の姿勢、キャブの残燃料の質と量とで変化があるか、比較試験をすれば何か得られるかもしれない。


こんな程度に軽く整備しただけで、今回の作業は終りとした。


加圧確認
液体ガスケットをエルボなどに塗布しつつ完全に組立を済ませ、自信!を持って加圧浸水試験をしたところ、何と吸気ポートから激しく泡が漏れる。
慌てて分解すると、自作ガスケットが不良だった。前回悩まされたスタータケース周りと干渉しそうに感じてガスケットの一部を切取過ぎた詰らぬ失敗だ。
最近は必ず簡易ポンプで加圧して漏れを確認しているが、いじったら必ず確認したい。

すっかり無駄な作業になってしまったと反省し、その後はこの写真の様に、キャブを取付けた段階で先ず加圧試験をした。チューブ類は適当なもの(ここでは時計ドライバ)を挿して塞ぎ、キャブは親指で押さえている。


今度は漏れも無かったので、再度完全に組立して加圧試験を無事済ませた。

キャブを分解しただけでいじってはないので、始動性はこれまでと変わらぬ感触だ。
以上

Blog 第56回 強風で水没し、簡易整備 終り=小坂夏樹=







Blog第55回 スタータケース亀裂とゼンマイ抜け=小坂夏樹=Starter Case Crack

2017年06月16日 | マニュアル

最近の遠征では黒潮真只中の島で、珍しくも20年振りにシイラに遭遇した。とても泳いでいられない激流での成果で、正にアクアスクータのお陰だ。とは言へ足ひれ併用でも強すぎて遡航できなかったり、突端を越えられない場合があり、岸すれすれをやっとのことで移動するなど悩ましい海況だった。


遠征中のトラブル:スタータロープが戻らなくなった
遠征中に始動紐の戻りが悪くなり、海上で全く戻らなくなった。手で巻取り、始動して上陸し、その場で開けてみるとゼンマイ(リコイルスプリング)が伸びてすっぽ抜けだった。ふつうは内側の、プーリーに引っかかる部分の鉤が開いて外れるが、今回は珍しい。

遠征前にロープの戻りが悪いと感じて、2回転ほどゼンマイを締める=きつくしておいたのが原因だろうと反省をした。把手がだらりとする程度だったので、そのままにしておけば何も起きなかったのか。


遠征中の貴重な時間を無駄にしたくないので急いで宿へ持帰り、端を曲げ直そうと修理に取掛った。しかしいじっている内に、用心も虚しくゼンマイが跳ねだしてしまった。
そこで伸びてしまった端の鉤を曲直し PescaSubApneaフォーラムに紹介されていた方法で修理した。Blog第11回に詳細あり・・・即ち空缶の底を切取り穴を開け、スタータプーリーを使って巻込む方法だ。これで巻込んだものをペンチでがっちり掴んで缶から取出し、そのまま収める事が出来た。
初めはビールのアルミ缶で試したが僅かに過大で収められず、鉄の細いジュース缶でやり直した。
この方法は実に簡単で、あっという間に出来てしまう。ゼンマイの跳出恐るるに足らず!

転がっている缶底がこの時使用したものだ。


さあ組立だとリールを嵌めようとして、先端の軸受回りに亀裂を発見、ショックだった。

前に紹介した通り、ここから浸水した仲間の例があるので、一大事だ。その顛末はBlog第43~44回で紹介した。


気休めだとは思いつつも亀裂の拡大を防ごうと、SUS針金を巻付けてエポキシ接着剤で滑り止めとした。 
その後2日間使って遠征終了


帰宅後このスタータケースを交換すべく取外した際に、この取付ブラケットにも亀裂を発見した。キャブに接するブラケットで、何故かこれまでの物でもここに割れが集中している。またかよ!と呆れてしまった。



このブラケットは以前は角を落としてキャブとの干渉を避けていた。そのためそこからの割れが多発していた。そこでComer社になってから他の部分と同じ形状に改良されたが、金型技術がお粗末らしく、見た目がひどく、まるで後から肉盛りしたかのように筋が残っている。不思議なのは、その肉盛した部分は割れなくなったのに、今度はその傍から割れることが多いことだ。本品もまさにその通りだった。



交換品を入手したが 
購入後半年ということでノリモノランドに依頼し、早速交換品を受領したが、先端はOKなれど、これもブラケットに亀裂があった。同社によれば、この部分の亀裂は常に発生するが、内部への進行はしないと考へ、その旨使用者に伝えているとのこと。





そこで私からはこれまでの浸水の実例を示して、更に亀裂の無い物を探して貰った。この写真は再掲だが、角を落としてある部分から亀裂が真鍮のブッシングの周りを進行し、Oリングと接するケース内部に達している。勿論浸水で高圧部はやられた。


この他にも仲間の物で、角を落としてない最近のモデルで同じ亀裂から浸水している。



第2の交換品も・・・
残念ながら、再度提供された交換品にも極細かだが亀裂があった。しかしカンパチ突き最盛期を目前にした焦りもあり、気休めながらも補強を施して使うことにした。


取付ブラケットの補強は Blog第37回 でも紹介したが、これまで何度か試している。今回は単純にコの字型の金具を作ってコニシボンドの5分硬化エポキシで接着した。下地は脱脂し紙やすりを掛けて表面を荒らしてある。



しっかり固着したと思ったが、端をこじってみるとやはり浮き上がってしまった。固着しているのは金属に対してだけらしい。その圧力?摩擦?のおかげで全体がポロリと外れることはいまのところ無いので、やはりこれで様子を見ることにした。


先端部も表面を荒らし、針金で締付てエポキシ接着剤で滑り止めとした。この部分は僅かにテーパがついているので、そのままではタガが緩むのと同じで抜けてしまうからだ。しかしながら今回使ったコニシボンドのものでは接着できなかった。そこで取敢へずボンドSUで接着し直した。


太い針金を使うとリールと干渉してしまうから、細いステンレス線を使う。溝を付けてそこに針金を埋込・接着するのが正解か?


このケースの樹脂材料が何なのか表示もなく接着剤を選べないのは困りものだ。一般的な材料ではポリプロピレン、ポリエチレン等には“硬質”のエポキシ接着剤は、殆ど使用不可となっている。今回のボンドもしかり。
プライマー(下処理液)を塗布すればOKと云う物もあるが面倒だ。

一方“軟質”仕上がりで一液のボンドSUとか3Mのスーパー多用途2は使える。

今まで使ってみて、接着できているらしい?軟質のセメダインEP001Nでも、これら2種のプラには不可となっていることからすると、このケースは別種の樹脂か?


ノリモノランドでは、輸入品のJB Welderというエポキシ接着剤が良いとのことで、早速購入に走ったが一部プラには使えないと表示されていたので使用を諦めた。300℃耐久など高性能と云う事なので、今後改めて試用するつもりだ。東急ハンズに実物がある。


ケースが割れるのは素材か設計が悪いのか、製造が不適切なのかまことに困った問題だ。その上近年の品質は更に低下しているとの情報もあるので、もしかしたら製造を中国にでも移したのかと下衆の勘繰をしてしまう。

いずれにしろ、海上で使用中に故障して大事に至らぬよう、予防整備が最重要だ。
ブラケットを補強・強化して、割れの防止が出来ないものか更に試作などしてみる積りだ。問題は補強の形状によっては次の写真の如くキャブの下端と干渉することだろう。


と言う訳で今回補強した部分も当然?ながら、キャブの下端と干渉してしまってねじ止めが出来なかった。


そこで以前同様に接着したコの字金具の角を削り落とし、同時にキャブも僅かにずらして写真の如く、紙2~3枚分挿込める隙間を確保できた。


残りのブラケット3カ所にも亀裂が入ることはあるが、それらは他との干渉も無く、補強するのは難しくない。


これで一応修理は完了だが、ケースの水密性は現実には確認できない。
そこで以前にも触れたが、予防整備に加えてAS600型以前のモデルの様に、高圧部の水密検査用の穴を是非とも復活させたい。穴を開けてネジを切るだけで済んでしまうのだから、私としては近い内実施したいと考えている。
以上


Blog第55回 スタータケース亀裂とゼンマイ抜け   終り=小坂夏樹=