Aquascooter Maintenance for Spearfishing アクアスクーターで魚突き 全76回

使いこなそう、アクアスクーター整備ノートby KosakaNatsuki

**全76回で終了済み**

Blog 第61回 スタータケースの補強 =小坂夏樹= StarterCase Reinforcement

2017年08月24日 | マニュアル
スタータケース先端軸受周りの亀裂防止・補強帯輪

誠に情けないが、スタータケースの樹脂は自然に亀裂が入り、高圧部浸水が起き易い。
前回に続き、亀裂防止の対策をした。

実は前回古いスタータケースに新たな亀裂が入ったことを紹介したが、今回も実寸合わせなどあれこれやっている内に、驚いたことに更に増えて亀裂が2カ所になってしまった。

派手に対向2カ所に亀裂


軸受部を越えて長い亀裂だ(縁が欠けているのは、今回試験目的で切取っただけ)


反対側も同じく長い亀裂

交換した廃棄品の事など通常は気にしないだろうが、何でこんな事が起きるのか、全く呆れてしまう。そして何より、手持品にも突然同じことが起きるのか、と不安になる。

改めて紹介すると、このスタータケースは Blog第11回で紹介した、Comer社に製造移管後初期の AS650組付品だ。取付ブラケット4カ所全てが割れて、1カ所は中まで達して浸水した。移管に伴う混乱で樹脂そのものが問題なのかもしれないが、同じ亀裂が今、最新製品にも発生しているのだから何をか言わんやだ。以前の Arkos社より樹脂の品質が低下している感じがする。

理解できないのは、取外してベランダ物置の、環境劣悪なジャンク箱に放り込んであった物を取り出してあれこれ見ている内にこうして新たに亀裂が入り、それが広がっていくこと。このまま放置しておくと全体がパカッと真っ二つに割れるんじゃないかと逆に期待してしまう。

組付しておかぬと割れるのか? グリスなど塗っておくべきか? ナイロン樹脂の様に水分と共に密封して置くべきか? PescaSubApneaには「シーズンオフにはビニ袋に入れて保管」との記述があったが、何か関連があるのだろうか? ・・・・海という過酷な環境で作動するものだから有り得ないと思いながらも、疑念が深まる。


こんな状況から軸受回りに不安が募り、怪しい細線巻付でなくしっかり補強することにした。
結局この部分の外径が25Φなので、内径が目的にぴったりの、SUS304の公称27.2Φ 肉厚1.2mmパイプを使った。こんな厚さは無用だが、パイプは標準品として入手できるから選んだだけで、一応内径は公称からして24.8mmという事になり、そのまま先端軸受け周りに5mm程挿込が出来る。テーパがあるので、押込めばがっちり嵌る。それだけでも十分割れ防止になると思うが10mm幅程は被せたいと、いい加減に先端のテーパに合せて内径を少々削った。

現実にはこんな加工でも私の腕とベビー旋盤では切断すら上手く出来ず、相変わらず文句たらたらディスクサンダやらグラインダを動員して大汗の手作業だ。ベビー旋盤はせいぜい真鍮か小径のSUS向きだ。

これは10mm幅の積りが切断ミスで8mm程度になってしまった物



スーパーマグナムのケースから、巻付けておいた細線を取り除いた。この様にドライバーでこじるとボンドSUが滑って外れる。基本的にはかなりしっかり留っているが、きれいに剥がすことが出来る。



その跡へ真面目にテーパ削りした幅12mm程の輪をセメダインPPXで接着した。この接着剤は初使用で効果の程は不明だ。マーカーペン型容器のプライマーを塗り、大急ぎで接着剤を流して補強輪を嵌込む。 効果は不明だが念のため輪の前後断面部にもプライマー・接着剤を流した。



こちらは予備機のスタータケースで、輪幅9mm程と短か目
ここにも前回紹介の如く、細線を巻いてセメダインEP001Nで留てあり、滑止の目的は果たしていた様だが、簡単に取除くことが出来た。


こんな輪を嵌めながら思ったが、割れは必ず?先端から生ずるので、内面テーパ削りなどせず、5mm幅程度に切出した輪で先端を押えるだけで十分ではないだろうか。内径25mmのパイプがあれば何でも構わないだろう。
しかし板金加工というか、このような作業は手間が掛る。そこで細線をぎっちり巻付けて締めながら硬質のエポキシで固めるというのはどうだろう。ノリモノランド推奨の JB Weld
等は強力で好適だろう。但しそのままでは滑って全体が脱落するだろうから、そこへセメダインPPXを流して更に固める。その後細線を撚合せた出っ張りなどはリールと干渉せぬよう削り落して構わない・・・・ 或いは炭素繊維など巻付けて PPXを流すとか。

既に割れが発生している場合は、必要なら破断面を少し削り取り十分脱脂して接着剤を流し、そこにこの輪を押嵌めすれば何とかなるかもしれない。リールと干渉しない程度に粘着テープで更に保護するべきか・・・・これはあくまで素人考へだ。

放置すると割れが広がる。

以上 気休めとは思いながらも、補強を施した。この先どれ程の故障・欠陥が出て来るのか、終りなき苦労が続く気がする。
新たに本機を入手する諸兄には、いきなり海へ持って行かずに、細心の注意を払って毎回事前の点検をして欲しい。バケツなどで構わないが水中での試験は必須だ。

以上 

Blog 第61回 スタータケースの補強 終り=小坂夏樹=

Blog 第60回 スタータのトラブル対策 =小坂夏樹= Starter Troubles

2017年08月11日 | マニュアル
スタータケースのトラブル
このところ何度も投稿してきたとおり私自身にも、仲間にもスタータケースの亀裂が頻発している。昔から起きていたことだが、最近はむしろ新しい機体で増えている気もする。
整備不良でもないのに沖で割れ、浸水、エンストとなったら元気な若者は兎も角、遭難騒ぎになりかねないから重大な問題だ。

何度も記載してきたが、割れは取付ブラケットと先端の軸受周りに発生する。そこで改めてこれらを補強してみた。

金属板でブラケットを包み込むのだが、先ずはガムテープで形状を検討してみた。
鍋蓋形或いは凸形とでも云う形に板を切出しこの様に曲げて穴を開け、取付ボルトでブラケットごと締付ける。当初この形を予定したが、折からの暑さにめげて少々加工が面倒だと諦めた。




次はブラケットと本体の間に板を挟み、端を曲げれば強固な締付が出来るだろうというもの。しかしケース全体が板厚の分だけ浮上ってしまう。
Oリングの嵌め合いに数ミリ?の余裕があるのでそれでも構わないとは思うが、ケースの縁が異常振動したり場合によっては開いた隙間に砂などが付着してしまうかもしれない。単に粘着テープで覆ってしまえば何とかなるかも知れない。
或いは本体のアルミブラケットの方をこの板厚分1mm程?削り取ってしまう手もあるか。



他に考えたのは、ケースの開口部にぴったり合う、4カ所の耳付の輪を切出し、ケースに挟んで全体を取付ける形。隙間が出来ないから異常振動も起きないだろう。その上で曲げ代の分だけ大きく切出した耳を曲げてブラケットを抑えるということも考えた。
ガムテープで検討するとこれが最も良さそうに見えるが、私にこんな加工は大変だ。まあやるなら、輪の内縁はきっちり合わせる必要があるが、外縁は大きく、つまり幅広に切出して構わない。・・・・一応今後の課題としておこう。




結局手間を厭い単にコの字型の板でブラケットを挟むことにしたが、そうすると脱落防止に接着が必要になってしまう。しかしその接着剤が難題で、適当なものが見当たらない。


私が試した限りの独断だが、ケースへの接着力は:
◎:セメダインPPX =強固だが、耐衝撃・振動性能が不明 このプライマー塗布後1分以内に接着剤を流さねばならないが、コの字板をはめ込んでいる間に乾いてしまう。屋外使用不適
〇:ボンドSU =着くが軟質で強度に不安残る。厚塗りすると内部が中々硬化しない
△:セメダインEP001N =これも軟質でそれ程強固ではない。しかし乍ら2液混合で40分で内部まで硬化し使いやすい。
✖:一般的なエポキシ=ボンド5分硬化などどれも駄目
✖:JB Weld =ノリモノランド推奨だが、金属には非常に強固だがこのプラ部分には残念着かない
というような性能だ。


単に魚突きの道具として使いたいだけなのに、接着に至るまで素人の使用者にこれ程の不安と作業を強いる機器というものが他にあるだろうか。遊泳力の乏しい私には今や必需品なので詮方なく、かなりムカムカしながら今回も振り回されてしまった。

結局、EP001Nは疑問が残るが、耐衝撃であり、エポキシなので内部まで雰囲気に無関係に速く硬化するので今回も使用した。



駄目な例だが、これは前回ボンド5分硬化エポキシで接着したもの。初めからはみ出した裾部分は浮いていた。


見た目はくっついていたが、今回指で押しただけではらりと脱落




今回はこの如くEP001Nで4カ所のブラケットに接着した。勿論脱脂し、表面は荒らしてある。はみ出しがひどいが、無視。弾性エポキシなので、押え付ける圧力がまともに効くのか不安有り、しょせんは気休めだ。


キャブレタに近接し、常に?割れる右舷上部側のブラケットはかなり削取らねば干渉する。


ブラケットが露出するまで削り取ったので1mm程は隙間を確保できた。

キャブの底板が干渉するのだからその角を削取る手もあるが、その結果漏水と云う心配もあるので、手は付けないことにしている。


以上、コの字板での補強を試みた。
ドライバーで接着部をある程度こじってみても外れないので、一応効いてはいるようだ。


予備機用にもコの字板を一緒に作ってしまったが、今後は怪しい接着に頼らずしっかり固定できるボルト止め式(冒頭写真)にする積りだ。耳付輪を切出す方式も更に検討してみたい。

なお、ブラケットを補強した結果、他の部分つまり円周部分に収縮が集中して割れる心配は無いのか、これだけ信用できない部品だと常に点検すべきだろう。それにしてもこんなことまでしなければならないとは、馬鹿々々しい思いが続く。 



スタータケース先端の割れ
ケース先端の軸受け回りの割れは直ちに浸水を引き起こすので、非常に深刻な問題だ。それが最近頻発?しているのが大いに気になる。



これはジャンク箱にあった古いスタータケースで、以前紹介したが、ブラケット4カ所が全て割れ、浸水もしたものだ。
今回接着剤のテストにこのケースを使っていたが、ふと気付けば先端に小さな亀裂が入っていた。そして2週間ほど経って更に気付けば、その先端割れがこんなにまで進行していた。十分古く枯れた物で安定していると思ったのに、あれこれいじっている内にこんなことになるとは驚きだ。
矢張りそもそもの材質が不適当ではないかと感じる。


予防整備としては:
最近のS.マグナムスタータケースの割れで交換してもらった物には、このようにSUS細線を巻付けてボンドSUで固定してある。しかし巻き数が少なく、ゆるんでしかも接着剤が弾性なので押すとグラグラして非常に心許ない。近い内きっちりしっかりと巻き直すか、薄い金属リングを嵌めたいと思っている。



これは予備機に施したのだが、少しだけ太めのSUS細線を巻き、セメダインEP001Nを塗布した。
ロープリールの内側と干渉気味なので、上記とあわせて内側を少し削り取る積りだ。原形は口径=細線を巻いた部分は≒25Φで、リールの内径≒28Φ テーパが付けてある。
どちらの場合も効果の程は怪しい、気休め程度かとも思っている。



スタータ軸プーリーの滑り・空転
仲間がこの故障を立て続けに経験した。正に驚きの不具合と云うしかない。
ある日突然ロープが空回りして始動できない、というのだから怖い話だ。事前点検でもこれは判らない。
仲間と私とでは使用頻度が違うとは言え、最近は私もS.マグナムばかり使っているので、不安になっている。

S.マグナムは僅かだが容積を増し出力を上げたが、その分以上にロープを引く時のトルクというか抵抗が大きく感じられる。つまり先行機種より始動時にプーリーに掛る負荷が大きくなっている。だから樹脂の破壊・滑りが起き易いのだろうと、私は勝手に解釈している。


ではどうしたら良いのか・・・・ふと思いついて、軸を貫通する回り止めピンを立てることにした。
難しい事ではないが、手持ちの普通のドリル刃では円盤に邪魔されて軸に直角に鑽孔することが出来ない。そこで斜めに2.5Φの孔を開け、硬質SUS304の針金を圧入気味に挿し込んだ。このピンが飛び出して脱落すると更にトラブルとなるので、ここもセメダインEP001Nを塗布した。PPXを使ってみたいのだが、ここでもプライマーを孔の中に塗布できないから諦めた次第。



孔とピン



ピンを接着剤と共に圧入した

プーリーと噛み合うフライホイルの爪に、このピンが悪さをしないように削ったりした。実使用はまだ先なので吉凶どちらになるか判らないが、楽観している。



点検孔
以前にも紹介したが、AS600型以前はスタータ/高圧部の点検孔があった。それを復活させたいと考へてきた。
実は今回本体をばらさず穴開けに取り掛かろうとしたのだが、ハウジングを3次元で位置決めしないと正しく鑽孔出来ないと判り、諦めた。
これも今後の課題で、本体をばらした時に、クランクケース前半部単独で、適切に位置決めして実施するしかないようだ。


以上、未完成ながらスターター関連での最近の作業を紹介した。頑張っている積りだが、機械マニアでもない私としては一気呵成に改修をすることも出来ず、少しづつ試行錯誤している。


いつも言訳ばかりで恐縮だが・・・「しょせん素人のこんなBlogはもうやめだ!」と叫び始めると奇妙なことに未経験の故障が起きる。その驚き・怒りでついつい継続しているが、必要な情報は必ず自分で確かめて戴きたい。


Blog 第60回 スタータのトラブル対策 終り =小坂夏樹=