Aquascooter Maintenance for Spearfishing アクアスクーターで魚突き 全76回

使いこなそう、アクアスクーター整備ノートby KosakaNatsuki

**全76回で終了済み**

Blog第44回 スタータケース先端亀裂原因?=小坂夏樹=Cause of Starter Case Crack

2016年10月30日 | マニュアル
スタータケースの亀裂追加情報
今回は第43回の、仲間のスタータケース先端の亀裂の原因を知りたいという、相当なオタク情報なので、諸兄の興味は余り惹かないだろうと思いながらも紹介する。

前回取外した状態の写真を紹介したオイル(水)シールだが、油脂をふき取って観察しても、リップなど特に劣化はしていない感じだ。





手持の新品(左)と比較してもこのまま再利用OKのようだ。やはり始動ロープを引く時しかこのシャフトは回転しないのだから、そうそう傷みはしないのだろう。ただしリップの押さえバネ・ガータースプリングが錆び切れているときは要注意だ。





一応今後の安心のために亀裂の原因を知りたいと、スタータ先端軸受を外してみた。圧入されていて手では外れないので、プレス機で押出したところ、パリンと音がして外れたという。回止め(滑り止)のためにギザギザがあり、間には防水のシールらしきものも嵌っていてこれが切れる時に音をたてたらしい。


シールらしい輪の材質は燃やしてみれば判るかもしれないが、ゴムのようには柔軟ではないとのこと。プラスチックらしいが、或いはOリングが固化したものか。




写真下側が割れたプラスチックと接していた部分だが、表面はきれいでこの軸受けがひどく錆びて膨らみ亀裂を引起したということは無さそうだ。また塩が析出したということもない。




次の3枚の写真を比べると、軸受けを抜取った後ではケースの亀裂は明らかに縮まっている。





ということは、素人考えだが、ケース自体が収縮して軸受外径より中心穴が小さくなり、割れたのだと思われる。ロープを引ききってガツンとさせるときには最大の力が加わるから、収縮して割れてしまうような材質では、その衝撃が引き金となってより割れやすく困ったものだ。

さもなければ、元々設計上の中心穴径が軸受の外径と合っていなかったか?インサートというか、圧入する部品の径と穴径が上手く適合しないとこんなことは多発する。本機以外でも起きていないか、大変興味がある。ただしこの点は、ケースがいわゆるインサートモールドという、プラスチックを成型するときに一緒に軸受も埋込む製造方法なら発生しない問題だろう。
と言うわけで頻発する4か所の取付ブラケットの割れと今回の先端の割れは同じ理由で起きていることかもしれない。
(この項、投稿後考えると、かなり刻みが大きく複雑な形状の軸受なので、圧入では無理だろう。全くの素人考えだが、インサートモールドだと思うようになったが、そうだとすると、矢張り材質自体が経時収縮して割れるのだろうと感じるようになった。材質不適当と云うべきかもしれない。)

なお、前回記したように、エポキシ接着剤で問題なければ、この場合遠征先などでの応急修理にはこの亀裂を塞いでしまえば使用は可能だろう。しかし長期に亘っての信頼性はない。或いは丈夫な粘着テープもしかりだ。

もし不安を覚えるようなら、予め中心穴の縁に細い針金などを巻付けて接着剤で固めるなどの補強を検討してもよいかもしれない。勿論リールに干渉せぬようにしなければならないが。


以上の様に細かな点を、まさに重箱の隅をつつく感じで検討しているが、こんな作業は現実には殆ど無用で、我々使用者としては、とにかくさっさと交換なり修理なりを済ませて出漁するしかない。
とにかく壊れない、信頼性の高い製品を提供して欲しいものだ。


スタータは新品に交換で、ロープも入換

元々割れたケースを修理して使おうという気はなかったので、購入してあった新品のスタータセットに交換することにした。


そのまま組付けず、一応ばらして様子を見たところ。
ふと、AS450などに使われていた同じ部品より、軸のOリング溝が狭くなっていることに気が付いたと当の仲間が気にしている。まあどうでも良いじゃないのと思いながら私もジャンク箱の部品を見ると確かに昔のほうが僅かに溝が広い様だ。AS650では既に溝は狭くなっている。

改善なのか理由はわからない。どちらの場合もOリング溝としては広過ぎで、私には理解できない。普通はOリング溝というのはリングの太さがぴったり収まる程度の幅だと思っている。


新品スタータケースの縁は相変わらず少々乱れているようだ。



新品ではあるが、ロープは初めから丈夫なダイニーマに交換した。4ミリ径のもので、途中で切れることは考えられないほど丈夫だ。以前にも触れたが、細いとお互いに噛み合って傷みやすいから、少々きついと感じても1列にしか巻けない4ミリ径を巻き込む。初めは色付けなどのため?に糊分が塗布してあるようだが、水中で使えばじきに柔らかくなじんでしまうものだ。長さもできるだけ長くして、引ききってガツンと衝撃を与えぬようにしたい。




AS450/600混成品の本機は、燃料タンクを新しい物に交換したりと、かなり?殆ど?の部品を入換てあり、型式不明の金喰い虫だ。オリジナルはアルミのボディとプロペラ部ぐらいのものか。
そうだ!アクアスクータで壊れないのはそれぐらいで他はすべて壊れるのだ!・・・・いや、余計なことを言えば、私の物では燃料タンクを固定するブラケットすら折れてしまった!

ま、この仲間の場合は、新品を1台購入したほうが安くて、手間も掛からなかったかもしれないが、当人の修理技術が磨かれたという意義は大きい筈だ。
いつも繰返すが、こうした実例も参考にして、中古機を購入する場合は十分な検討をしてほしい。
以上


Blog第44回 スタータケース先端亀裂原因? 終り =小坂夏樹=

Blog 第43回 スタータケース先端の亀裂で浸水 =小坂夏樹=Starter Case Crack

2016年10月27日 | マニュアル
前回のBlogの投稿と入違いに、仲間のAS450/600混成機が浸水したとの情報が入った。
私にとっては初耳の、ショッキングな事例なので、取急ぎ紹介して諸兄にも注意を促したい。


スタータケースの新たな亀裂
浸水個所はスタータ/高圧部だ。始動ロープの戻りが悪くなってきたので、フライホイルと噛み合う爪が異常ではないかと考えて分解したら、浸水していたという。

当人はケース縁を入念に点検したが亀裂がないから、Oリングがらみと考えた。そこで純正品Oリングと私的交換部品表(Blog第26回)記載の互換品との微妙な寸法差を比較したり、私の状況をたずねたりしていた。もちろん高圧ケーブルの差込部も点検した。実はこのケースの取り付けブラケットにはすでに亀裂が走っているので、エポキシ接着剤で割れが進行しないように抑えてある。私は接着剤が本当に効くのか不安で、クリップで補強しているが、当人によればしっかりしているようだ。

ところで、AS600型以前の機種には高圧部のアルミ本体にねじ孔があり、そこから圧力を掛けて水密性を検査できるようになっている。Blog第13回ですでに紹介した写真の再掲:




そこで、面倒臭がる当人に是非とも再組立をして水中で圧力検査するよう奨めておいた。


するとすぐ翌日には驚くべき写真が送られて来た。圧力検査したらOリング周りではなく、ケースの先のほうから気泡が発生しているではないか。




さては先端のオイル(水)シールが劣化したのかと、慌ててロープリールなどを外して分解してみた。
オイルシールは悪い状態ではないように見えたが交換すべく取外した。抑えバネ=ガータースプリングは以前錆び切れていたものと違い、ステンレス系らしくしっかりしていた。


リップ部は一部乱れているようだが、そもそもこの部分は始動時のみ回転する軸が当たるだけなので、劣化は少ない筈





いずれにしろ新品と交換しようと、周りの油汚れを拭取ったところ、何とケース先端孔から大きく亀裂が走っていた。真鍮?の軸受/ブッシングが嵌めてある、そこが割れている。写真で亀裂が白く見えるのは、拭取った時にシリコーングリスが押込まれてしまったからだ。




これで浸水個所ははっきりした。しかしこの亀裂はなぜ発生したか?
現実にロープを引くときに最も力が掛かる部分なので、起きて当然かもしれない。しかし私がいつも参照している現地イタリアのフォーラム PescaSub Apnea ではこんな亀裂の情報は無かったと思う。

このスタータケースは10年程は経っているものだが、考えづらい亀裂だ。ほかの例を見ていても単に経年劣化で亀裂ということは考えられないし、当人は本機のベテランで、ぶつけたり、バカ力を発揮する者でもない。
まあ、一つの可能性としては中心のブッシングが錆びて膨張しプラスチックを押し割ったということがあるか?その辺は今後この部分を切断したりなどでの確認結果を待ちたい。

上記第13回では、AS650型の高圧部に検査用の孔を設ける(復活させる)可能性を述べたが、何だか現実味を帯びたような感がある。


前回はキャブレタのアクセル軸のパッキング?からの浸水を取上げたが、今回は以上の如き不具合だ。いつもいつもグチってしまうが、果てしない故障続出のこんな道具の、替りになる素晴らしい製品は創られないものだろうか。

以上、私の心情としては、急ぎで「新たな?」故障発生可能個所を紹介した。こんな故障は既に経験済みという場合もあるだろうが、殆どの方には初耳だと思う。追加情報が得られたら次回に紹介する。


Blog 第43回 スタータケース先端の亀裂で浸水 終り =小坂夏樹=

Blog第42回 キャブレタからの浸水と整備 =小坂夏樹=Carburettor Water Leakage

2016年10月25日 | マニュアル
キャブからの浸水
前月に整備したばかりの1号機(Blog第41回)が遠征先で浸水してしまった。プラグを外して排水という応急処置だけで始動できるようになったが、原因不明のまま翌日も浸水してしまった。エアタンクにも少量の海水がたまっていたので、スノーケル辺りか、あるいはエルボかと疑った。そこで両日とも、排気ホースに簡易ポンプを接続して加圧水密試験をしたのだが泡も出ず原因不明のままだった。
しかし、ふと排気ホースを塞ぎ、今度はスノーケルから加圧したところ、キャブレタのアクセル軸あたりから盛んに泡が出る。こんな珍しい所からも漏れるのかと驚いてキャブを交換し、今度は排気側・吸気側両方から加圧して漏れの無いことを確認し、3日目は問題なく使用できた。とはいえ、安心してはいられない。停止して魚突きをしている間は曳航しているボディボードに載せるようにしていた。

帰宅後の確認・整備
キャブ自体からの漏れであることを確認するため、持帰ったキャブの空気流路を簡易的にポンプで加圧してみることにした。ビニテープを貼って何とか手で押さへる方法だ。



軽く加圧するだけでやはり写真の如くアクセル軸のレバーから泡がどんどん出てくる。ここから少しずつ浸水し、短時間では分からないが、長時間水面に浮かせておくと内部にたまってしまうのだろう。



軸にはゴムパッキングが嵌めてあるので、それが切れたのかとばらしてみたが、原因となりそうな亀裂などがない=写真右側。このパッキングはOリングではなく、断面がひょうたん型のような特殊形状だ。
ジャンク箱のキャブから同じパッキングを外してみたが、これは既にボロボロで使い物にならない=写真左側。そこで、このまま現品を再利用することにした。ゴムは弾性を保ってはいるが、ある程度硬化しているのかもしれない



キャブのアクセル軸受部の溝は正常だが、塩が固着していたので削り取った。




軸受部にシリコーングリスを塗布し、組立するのだが、端部のパッキングを軸と溝の間に正常に嵌めるのが結構難しい。やはり硬化しているのか? 矢印の様に、中々うまく嵌らずはみ出している。このままネジ止めしたりすれば、パッキング偏りで水密性が失われる可能性がある。パッキングを溝に嵌めてから軸を通すのが正解らしい。
もしかしたら私の過去の組付が失敗だったかもしれない。あるいは何らかのゴミが挟まったりしていたのだろうか?それとも上記の如く、析出した塩でパッキングが押し上げられていたのかもしれない。





ダイアフラム交換
一応アクセル軸は再組立で大丈夫そうなので、ついでながら上下の流量調整膜とポンプ膜を確認した。

流量調整膜は、本機を殆ど使っていなかったにも拘らず次の写真の様にわずかに変形・硬化している。この点に関しては、ゴム面が燃料に触れていないと逆に硬化するとの指摘が PescaSubApnea の記事にあったので、あるいは燃料に漬けておけば戻るのか???ま、手っ取り早く新替した。




なお、交換した調整膜は放り出してあったのだが、1日経てからふと観察すると、分解取り外し直後に比べて歪がよりひどくなっていた。



それではというので、これをまたガソリンに数時間浸して置いたが、歪はそのままで変化はなかった。長いこと使っていてこんなことも理解していなかったのかと非難されそうだ。
この様子では、保管時に無理にキャブ内を乾燥させる必要は無いのかも知れない。あるいは却って悪いかもしれない。
これまでも紹介してきたように、毎週始動させるのが適切なのかもしれない。私としては未だに判断できない。


調整膜とポンプ膜には浸水防止で液体ガスケットを塗布してあったのだがこちらははみ出したりガソリンで剥がれたりして内部のフィルタに引っ掛かったりしていた。




こちらも新替したが、こうなると液体ガスケットを使うのは失敗ということで、今後は避けなければならないだろう。はみ出して脈動圧通路を塞いでしまった経験も以前紹介した。

これで分解前と同様にポンプで加圧してみたが、泡漏れは無く、ほっとした。

以上で取外したキャブの整備は完了し、予備品として遠征時は常に携帯することになる。

なお、この1号機本体はオイル・ガソリンを滴下し、何度もロープを引いて内部を洗浄した。始動には問題ない状態だ。しかしながら、いままでもこんな処置だけで放っておいてトラブルになったことが何度もある。余裕ができたら更なる整備をしたい。


水密検査
水密検査をする場合は、スノーケルまたはプラグ孔に圧力をかけるのが普通だろう。
私の場合は排気ホース方式に改造後は、ホースから加圧していた。しかしピストンの位置によっては圧力がかなり遮られてキャブの方まで十分伝わらないことがあると今回の出来事で判った。
そこで今後は排気ホースからも、またスノーケルからもポンプで加圧することにした。


今回のアクセル軸からの浸水は、パッキングに塩が析出したか、恥かしながら私の組立不良が原因と思うが、それにしてもこんな部分からも不具合が発生してしまうとは恐れ入る。やはりエンジンそのものを水に曝すのは技術的にも難しい事なのだろう。

数十年前にスズキが50ccのウオータージェットエンジンを製造し、それを組込んだジェットスキーのミニ版の様なものと一人用ゴムボートを市販したことがある。直接水に接しないので、信頼性はマシだったと思われるが、すぐに姿を消してしまった。
そんなものがまた出現するとは思われないが、安心して使える何かを切望する次第だ。

以上

Blog第42回 キャブレタからの浸水と整備 終わり =小坂夏樹=