Aquascooter Maintenance for Spearfishing アクアスクーターで魚突き 全76回

使いこなそう、アクアスクーター整備ノートby KosakaNatsuki

**全76回で終了済み**

Blogの維持について Maintaining of Blog Pages=小坂夏樹=

2025年01月18日 | マニュアル
当ブログの現状
閲覧有難うございます。10年前に開設し、2018年12月に第76回を以て終了したこのBlogだが、ある程度は皆様の参考にして戴けるものと考へ、閉じずにそのまま保存してきました。
しかしその後更に6年が経過し、流石に陳腐化しただろうし、自身の引退と共に抹消=退会すべきかと、昨今気にしていた次第です。 しかし、この間に機種の更新も無く、また改めてBlog閲覧状況をみると、未だに結構な訪問者数となっている。更に、大ベテランの仲間が、参考になるからと維持継続を勧める。実際、この間に、メーカーの名称は変わったり、小さな技術的変更はあったものの、実質的に同じ品が供給されている。
と言う訳で、まだ当分はこのまま残して置くことにしました。

Blogの情報が、どの程度皆様の参考になっているかは不明ですが、関西で気を吐いているK氏などの例を見ても、ここで提唱した内容が取入れられている事もあり、意義はあると信じます。
実際、私はこの6年間にも、ほぼ月例で離島へ遠征し、常にアクアスクーターを使用してきました。その間故障は繰り返し体験したものの、その内容は記載例に沿ったものばかりだった。
特筆すべきは、この間水没は全く無かったということか。これは偏に空中排気方式を採用したからと考えています。

今後も、電池式の性能向上と、価格の低下が達成されるまでは、アクアスクーターは使われると思います。ただし将来、排気ガス規制が課される様な場合は、新品の販売だけは規制される可能性があるでしょう。

残念ながら、傘寿の老化には勝てず、昨12月の遠征を最後に、私は魚突きを引退し、本機の使用も終了としました。
本Blogは様子を見ながら、数年?はこのまま保存(放置?)しますから、役立てて下されば幸いです。

Blog第76回 ブログ最終回 The last blog =小坂夏樹=

2018年12月07日 | マニュアル
現状について
7月以来長期間休止してしまったが、その間不思議と本機のトラブルに悩まされることも無く平和に過ごすことが出来た。多分浸水防止策が功を奏したかと感じている。
私にすれば、こんな順調な経験は初めてだが、いつまた不調の連鎖に巻込まれるかは不安だ。

この間にした事と云えば、時々始動させて様子を見る程度で、遠征後にプラグを点検しても劣化の感じが余りしない。

唯一細工したのは、ステンレスのパイプでプラグレンチを作った事くらいだ。本機の付属品で十分だが、Blog第61回のスタータケース補強輪の残材を何かに使えないかと考えたもの。
27.2Φ 肉厚1.2mmと太過ぎるので切込を入れ、古いプラグを芯にして叩き、ほぼ6角形にした。かなりヤワなので、捻じるときは一気にガンと回す。



不要不急の、その他周辺情報

1、コメル社が整備業者の認定制度を持っていることに最近気が付いた:

Facebookを開くと勝手に表示されてしまう写真の内に、アクアスクータの文字が見えたので、翻訳を見るとアクアスクータ修理の認定証だった:


内容は:

アクアスクータ修理コース受講証明書:
アクアスクーターAS650CEモーター(エンジン)の製造会社である Top-Kart(トップカート)社は、G.S氏を
「スクータのメンテナンスコースを受講し、(指定地域での)純正部品のみを使ったAS650CEの修理者として認定する」

というもの。なお Top-Kart という商標はコメル社の本業?であるカートエンジン関係だ。
HPは https://www.facebook.com/giovanni.scarpinati
作業卓が並んだ冒頭写真が、どうやらコメル社の実習室らしい。

そこでコメル社のHPにあるサービスセンターのリストを見ると、この名前がすでに掲載されている。

こんな情報を引用したのは、品質の悪すぎる割に、COMER 社がしっかりと整備業者への教育ををしているらしいことに驚いた為だ。
それとも悪過ぎるから業者教育が必要なのか?(失礼!)

他にも、流石は原産国だけのことはあって、別のスクータ修理業を謳う認定?業者のSNSページがある:
Davide Aquascooter Piacenti
https://www.facebook.com/davide.piacenti.142
しかしこの業者名はコメル社の上記リストには記載されてない。

日本では、千葉県柏市の「東京貿易」のみが掲載されているが、同社は本機の輸入商社であって、実務はお馴染みの「ノリモノランド」がやっている。
あちこちで整備が受けられれば有難いが、日本国内の本機普及状況では、独立の修理業者は求めるべくもないだろう。

初心者など本機の不調で大苦労するというか、殆ど諦めて放棄してしまうような現状なので、せめてこうした実習の資料を一般にも公開して欲しいものだ。



2、もっともっと驚いたのは、そうした業者の先頭?に居た者の事故だ。



アクアスクータを含む潜水機材の整備業者 Paolo La Parola 通称 Paluzzo(パオロ とも パルッツォとも)が最近(2018年7月)急死して大変驚いた。本機整備の超ベテランであり、いつも引用している原産国イタリアの潜水魚突きフォーラム PescaSubApnea の主要メンバーだ。皆からの質問にも積極的に答えていたし、コメル社の現行モデルAS650スーパーマグナムの設計時にもあれこれ助言したと当人のBlogにあった。
その彼が、本年7月に200気圧9リットルタンクを整備中に爆発し、バルブの直撃で即死だという。
これだからスクーバは怖い。
私としては力尽きて水中で失神死などというのは、それまでの事と諦めているが、機材故障でというのは余りにも口惜しい。

フォーラムにあったニュースサイトからの引用情報:
Without words, our dear friend and friend is gone
from keoma »Friday 13 July 2018, 18:49
Palermo: exploding dive tank, died the holder of Tecno Mare Incidente mortal at work in Palermo by Tecno Mare. Died the owner "Paluzzo", Paolo La Parola 54 years in Palermo. The man was hit by the valve of a nine-liter diving tank loaded at a pressure of 200 bar. The incident occurred at 5.30 pm in Via Vincenzo Di Marco, 17.
source palermo.republica.it



営業していた整備場のHPがある。本人死亡ではこのページも消去されてしまうのだろうか。
http://www.tecnomarepaluzzo.it/

その中に、標準、ホース排気式、直結ホース排気式の3台のアクアスクータを回して回転数の違いを見せているビデオがある。 https://www.youtube.com/watch?v=fZWlviI7HC8


実は以前 本Blog 第19回で彼の頁を引用した。するとそれに気付いた彼が、SNSで本ブログについて冗談を言っていたことがあって、私には親近感があったのだ:

TECNO MARE Paluzzo srl (パルッツォ海洋技術会社 とでも訳す?)
2016年5月1日 ·
Mi sa tanto che dovrò mettermi a studiare giapponese.
L'amico Kosakatsuki ha già trovato parecchie mie recensioni ......... ma sarò più chiaro.
Anche in Giappone parlano di me !
http://blog.goo.ne.jp/ko…/c/2535707172739750e1f7737f143cc3e4

私は日本語を勉強しなきゃならない。
友達の小坂夏樹はすでに私のレビューをいくつか見つけている...... 勉強すればもっとハッキリするだろう。 日本でさえも私のことを話題にしているのだ!
(小坂夏樹は筆名です。音読即ち意通ず!)


こんな現状で当面の話題も尽きたと思われるので、本ブログは今回で終了とします。技術ブログと云うには拙い内容で汗顔の至りですが、見て呉れた皆さんに感謝します。


なお、アクアスクータ初心者諸兄が頼るべき情報は殆ど無いので、怪しい点も多々有るとは思うが、当面公開は継続します。いつも言訳していますが、内容には常に疑いを持ちながら参照してください。

なおまた、文字を読むのが面倒がられる今の世の中、こんな長たらしいブログではなく、詳しい整備作業の動画公開をしてくれる方の出現を期待します。
以上

Blog第76回 ブログ最終回終り The final blog=小坂夏樹=


Blog第75回 キャブレタ及び Blog 休止の件 Carburettor =小坂夏樹=

2018年07月17日 | マニュアル
流量調整膜(ダイアフラム)比較

前回第74回でもキャブの流量調整膜(ダイアフラム)を取上げた。丁度手持の新品が払底したので、格安品を探してウオルブロ社純正品 D22-HDA と互換品を購入した。

純正品は八宝屋 D22-HDAリペアキット670円

互換品はキャブレターパーツドットコム
Walbro用 HDA系ダイヤフラムセット社外品 3セット 900 円


どちらもネットでもヤフオクでも購入OKで、互換品は半額だ。

いつも調子が悪くなって慌てて交換する膜なので、その時々で純正品を使ったか、互換品だったかは後で思い出せない。そこで、性能に差があるのか、ちょっと試してみようと考えた。

調整膜は純正の方が輪状の凹凸がしっかり付いている様だが、極僅かな差だ。触感などは私には変りなく感じる。

純正品の大気側に塗料の青い識別?印が付けてあるが、今までも印が付いたものと無いものがあって、気にしていなかった。


純正品の中心のカシメ鋲の頭(表面)には恰も特殊な識別印かと感じるような細かなプレスの傷??がある。もしこれが治具の傷に由来しているとしたら、相当ひどい製造現場を想像させる。


燃料漬けにして、両社に相違が出るかどうかを見た。

浸漬して2日目には、混合だが無色だった燃料が茶色に変色した。
この写真は3日目で、比較対象は無いがはっきり色が判る。
添加物のカーボンが溶出したのだろうか?
ゴムの性質が変化(?劣化)することはないのだろうか?


数日経っても形状変化は感じられなかった。
実機のキャブレタでは片面だけが燃料に接し、他面は空気で乾燥しているから反り易いかも知れない。そこでキャブに取付け燃料も実機状態にして、何か変化が有るか数日置いてみた。

上が試験した物で、下側は新品だ。
写真でははっきりしないが、互換品は輪状の凹凸が少し小さくなったようだ。
純正品のほうは周辺が僅かに反り、一部に歪みが出た。純正品のくせに!と品質に疑いを持ったが、こんな短期間では正しい評価は出来ない。
純正品の青い点は燃料に溶けて消えた。




今更だが、今後は純正品と互換品を区別して実機での寿命を点検して行きたい。今のところ、青い点と加締の傷で識別は簡単にできる。


離島の仲間はスーパーマグナムのキャブを点検

このSマグナムは全体をオーバーホールして2カ月程使い、その後1年近く使わなかったものだ。
これを最近また使い始めたところ、加速時に息継ぎするので、燃料通路の詰りかと考えて開けてみた。
ポンプ側の燃料フィルタにゴミがあったが、この程度なら影響することは無さそうだ。




膜がへたったかというと、そこまでの劣化は無い様だ。青い点が付いているので純正品らしい。



結局このままこのダイアフラムを使い続けることにした。


私の場合は流量調整膜にはこれまでも紹介した如く、凸凹と縦筋が入り、結果的に?不調になることが多い。この様に滑らかに弛む・たるむというか窪むのは少ない。互換品を使う事が多いが、上記の如く今後両者に違いがあるかどうか見て行きたい。



針弁(ニードルバルブ)
膜に問題が無ければ、針弁かとこちらを確認した。
写真からは段が付いたようにも見えるが、実際は滑らかで、再装着した


超簡易的に点検はこれだけで終了、その後毎週使っている。調子は変らず、何となく息継ぎする様だが、問題なく使用できている。


尚、この離島の場合は魚突きの良いポイントまで移動距離が長く、アクセル固定金具を利用し、最高速又はそれに近い状態で2km程移動する事が普通だ。そこで燃料の混合比も、通常の50:1でなく、40:1として潤滑不足にならぬよう配慮しているとの事。

暑さでボケて思い出せぬが、速度を上げると負荷は2乗だったか3乗以上・・・?で増えて各部の損耗も極大となるから、この様な使用実態では特に潤滑などに配慮をし、頻繁な整備が必要となる。

私自身、最近もこの仲間らと、汐に抗して片道2kmを最高速で、場合によっては足ヒレも目一杯使って往復した。そんな時は常に故障の不安を感じているが、まさかの時は追汐に乗って戻ることを経験済みで、その為に転流する潮時を良く調べて出漁するのだ。混合比は50:1だが、こんな時はオイルを意識的に多めにしている。


それにしてもこんな使い方をしているとガス欠の危険も伴うから、予備燃料も携帯している。ちなみにこの時は潮時の選択が出来ず、向かい汐に抗して行き、追い汐で戻ったところ、残燃料は僅か200ccだった。


尻紐


今までは表スキンスーツで、ビニールテープ巻の円盤形玉付き尻紐を使ってきたが、最近の遠征で久々に表ジャージのスーツを使ったところ、これが股の間から滑って外れてしまい、大変使い辛かった。数日は我慢したが、とうとう海岸の流木を叩き折ってナイフで少し溝を付けて紐を固定した。こんな不格好なものだが、滑らず安定感があった。
PescaSubApneaのページには10cm程の板片の付いた尻紐があったが、成程スーツの素材によってはこんな細かな事も考えねばならないようだ。
木などの丸棒でしっかりしたものを作る積りだ。


Blog 休止について
本Blogは当人が驚くほど回を重ねてしまい、既にアクアスクーターの故障情報は出尽した感がある。
そこで私としては既に筆を置く気になり、取敢えず本年2018年12月までは更新無しのBlog休止 とします。

雑誌なら休刊=廃刊を意味するが、Blogは簡単に復活出来るので、その折にはまた閲覧をお願いします。

私としては時日を戻して随所の怪しい記事の加筆訂正をしたいとか、諸兄の便宜に、各部毎にまとめた記事にしたいとの思いもありますが、このまま廃止も有得ます。

以上


Blog第75回 キャブレタ 及び Blog 休止の件 Carburettor 終り =小坂夏樹=

Blog第74回 最近の使用状況 Recent Operation =小坂夏樹=

2018年06月08日 | マニュアル
最近のスーパーマグナムの使用状況 

1、4月に4日間連続で本機を使った魚突きをし、実運転は合計5時間程度だが、全く問題なく好調だった。

帰宅後にはガソリンでマフラ内を濯いだのみだが、少々気になったのはこの写真の様に、水がかなり含まれていたことだ。スポイトで吸い上げ、濾して試したら塩味は感じないので燃焼生成水だろうと安心した。海水混入だったら原因を探らねばならない。排気ガスを冷却せずに排出してしまえば、このような水分も油分も結露せずに済むのだが・・・・



2、5月も同様に4日間で6時間程の実運転をした。
この間始動などに問題は無かったが、水面移動中に中速だとアクセルを一定に保持しているのに時々回転が低下することがあった。

そこで、キャブ膜が劣化していると想像して帰宅後に点検した。

流量調整膜のみだが、見たところそれ程変形もなかった。どうも変形し易い物とそうでないものがあるような印象が強くなる。この膜は良い方だと感じる。Walbroの純正品だ。





迷ったが、新品に交換した。
これはいつも使っている安価な互換品だが、膜の凹凸が浅いと感じている。
寿命など純正品と互換品で差があるかどうか、しっかり比較したいところだ。

この状態では、キャブは問題無く正常だったようだ。いや、ポンプ膜の点検を省略してしまったので、そうも言い切れないか。

そう言えば、以前にも紹介した気がするが、イタリアのPescaSubApneaフォーラムでは、キャブレタ内部をカラにしてキャブ膜を乾燥させるのは良くないという記述があった。
少々怪しい記憶だが、膜の性質が変化してしまい次の使用時に正常?に戻るまで時間を要すという様な主張だった。
しかし新品膜は乾燥しているのに、交換すれば明らかな如く作動は全く正常だ。

今回取り外した膜は、乾燥すると凹凸が僅かに小さく(浅く)なった気がする。保存しておき、再使用してみたい。


3、点火プラグはネジ部にカーボンが堆積しているが、電極周りは良さそうに見える。
しかしこれが原因で回転が落ちることもありそうなので、次回使用時には新替する積りだ。


4、マフラ残滓の確認
本ブログ第70回で、まるで切開手術で器具を体内に置き忘れるかの如く、コの字形の板をマフラ内に残してしまったと記した。
気になっている残滓の状況を確認しつつ、これを取り除こうとマフラを分解した。


どうせ分解するからと、使用後内部を洗浄せず放置してあったが、柔らか目の残滓と水も少し残留していた。気温・水温が上昇しているので、もっとサラッとするかと思ったが意外に大量だ。



やっとコの字板を回収することが出来た、


このところ残滓を気にして試行錯誤が続くが、今回程度に残滓が蓄積していても始動性が悪くはならない。こんな事なら本当に始動困難になるまで見ぬ振りをする積りになっている。
以前の如く気にせず使い、既に実行している空ぶかしのみでの “残滓飛ばし”だ。

以上

とりとめの無い内容になってしまったが、長期遠征前のあれこれを記した。

Blog第74回 最近の使用状況 Recent Operation 終り=小坂夏樹=

Blog 第73回 分解整備で浸水判明 Leakage Found by Overhaul=小坂夏樹=

2018年05月09日 | マニュアル
仲間のオーバーホール作業 
マンネリ化している本ブログだが、今回はまた仲間の自動車整備士による分解作業のみを、提供された写真で紹介する。大いに参考になることと思う。



同氏は、2年前に分解整備したAS600を週2回魚突きに使用し、合計200時間ほどの実運転をした。始動・運転に支障はなかったが、数か月前からゴロゴロという音と振動を感じて分解整備の時が来たと判断。これまで同様コンロッドの大小端部ベアリングが劣化したと予想しつつ黄金週間に作業を進めた。


イタリアのフォーラムでは、少なくとも180時間毎に整備せよとあった気がするので、長すぎる時間経過だ。しかし同氏には、壊れたら直ちに修理する実力と、交換部品の集積があり、しかもAS650スーパーマグナムを予備に所有しているから呑気にしていた。
私なら、異常を感じたらすぐに対策をする。単独行動が殆どの私にとって、沖でエンストする危険は絶対に冒したくない。


さて、2年前の分解整備では多くの部品を新替したが、内容は;
*プラグ
*クランク組立ASSY
*ピストンリング(トップリングのみ)
*前後クランク軸ベアリング
*前後メインオイルシール
*プロペラベアリング
*プロペラ・オイルシール
*キャブレターO/H(シール4枚のみ)=ダイアフラムとガスケット??
*各ガスケットは再利用
*Fバンパー取付

但しスタータケースは旧品のまま使用➡(半年後に)先端割れで浸水➡スタータ全体をアセンブリAssy交換➡1年後にスタータ軸とプーリ=円盤が空転➡軸を旧品に交換
という顛末は過去に紹介した通りだ。

分解状況

プラグは2年間そのまま使用してきたが、問題ない



圧縮比は1MPa程あり、良好だ



スタータケースを外すと、100cc近い浸水と飛び散ったグリスでひどい汚れだ

始動ロープの戻りが悪く、最後の半回転程は滑らかに引き込まない状態となっていたが、この浸水でゼンマイの油切などの影響が出ているとも思われる。


フライホイルも汚いし、Oリングは伸びて、矢印の如くはみ出し気味だ

このOリングは純正品が伸びずに良いと当人は云うのだが・・・
私の経験では装着された純正品はゆるい。そう感じるのが、既に油分により膨潤して伸びてしまったものか、未使用状態でも緩いのか現在は記憶が曖昧だ。
第65回でこのOリングにつき、私のAS650の装着品を取除き、より小径の新品に交換したと紹介した。それにも拘らず、組立時にそのOリングがはみ出してしまった。今どうなっているか、バラしてみたいところだ。
なお、シリコーン系のグリスなら塗布してもゴムに影響しないと通常は考えるのだが、ゴムには使用不可と表示しているグリスもあるし、Oリングの材質にもよる。従って、第26回に示した互換品のOリングを選択する場合でも、塗布するグリスとの相性をよく勘案して欲しい。


高圧部のCDIユニットとプラグコードを取外した状態。 メインベアリングにも汚染は広がっているが、シールがあるので、ベアリング内部は見えない


こんなに悲惨な状態でも、パーツクリーナで汚れを落とすと、錆もなくきれいになった。浸水からあまり時日が経過していないのかとも感じられたが・・・・
各部にはたっぷり、同氏によれば必要以上!に、グリスアップしていたお陰?なのか、CDIユニットも全く浸水の影響を受けず、プラグコードのねじ込み部からの漏電もせずに、問題なく火花が飛んでいたわけだ。
驚くべき耐久性に大いに感心した。しかし余計なことを言えば、CDIはコメル社が作っている訳ではなく、ドカティDucati社製だ。

浸水原因はまたしてもスタータケースの先端軸受け部の亀裂だ。新品から1年半持たずに割れていた
本機には折角点検孔があるのに、今回は点検しなかった。
私からは第61回で紹介した補強輪を嵌めるよう推奨しているのだが・・・・
素材の樹脂が収縮して割れるのだということは、私のジャンク品の例を見てもはっきりしているから、それを抑え込むのが安心だ。



本体を分解
クランクAssyは予想と異なり、大端部、小端部ベアリングなども問題ない。
クランクシャフト前側=スタータ側=はかなり傷が付いていた。

クランクシャフト前側オイルシールは良さそう

しかし、スタータ側から見えていたベアリングがひどい状態で、錆びた鋼球がばらけてきた。クランクシャフト前側の傷もこれらボールベアリングによるものだろう。これでゴロゴロ、振動の原因は判明した。

ボールの錆からでは、浸水からどれ程の時間が経過したかは判断できないが、異音がし始めた時期には既に劣化していた筈だ。

スタータ/高圧部の浸水がベアリングに入り、ボールを錆びさせたが、オイルシールで止まり、クランク室には侵入しなかったらしい。
クランク室はピストンの上下動に従って、陰圧~陽圧と圧力が変化する。
(その脈動がキャブの燃料ポンプ膜を駆動するエネルギだ)
燃焼室圧縮行程つまりピストン上行時には陰圧になる。そうすると水はオイルシールの背面にあるのだから侵入というか吸込まれそうだが、入らなかった。この辺りの技術は私には良く解らない。或いは、ベアリングのゴムシールが役立っている、その為に前側にはシール付が装着されるのだとも思われる。後側のベアリングはシール無しの開放型設定だ。

マフラをばらしたところ





以前にも紹介しているが、通常は毎回使用後には溶剤をマフラに入れて内部を濯いでいる。今回はどうせバラすのだからと、その作業を省略した為か、かなり残滓が付着している。2時間ほど使った後でこれくらいは溜まってしまうということか。
こんな様子を見ると、私のホース排気式のマフラに溜まる残滓も同じことで、特段異常ではないと思われる。
彼我の違いは、毎日使用後に内部を溶剤で濯ぐか、数日間の遠征から帰宅して初めて濯ぐかの違いらしい。


プロペラシャフト、つまりメインシャフトの後ろ半分はこの様な状態で、ありがちな水混入によるグリスの乳化もなく、プロペラ側からの浸水は無かった。


バラした全体像


ここまでで、要整備箇所ははっきりした。
あとは単純に部品新替で組立を済ませるか、或いは追加で不具合対策を施すかという程度だ。
本人は、もうすっかり整備作業に習熟したと豪語しているので、何か目新しい工夫でも盛り込むのではないかと楽しみにしている。

追加情報が得られたら紹介する。
以上


Blog 第73回 分解整備で浸水判明 Leakage Found by Overhaul 終り=小坂夏樹=