上西充子法政大教授
「長時間労働を是正するかのような働き方改革という甘い皮を付けているが中身は #定額働かせ放題 の裁量労働制が入った毒まんじゅうだ。
しかも官邸主導でデータ、事実もねじまげ長時間労働、過労死を増やそうとしている。国会を注視しよう!」
今日の小池晃議員や長妻昭議員のスピーチにもあったように、労働法制とは私たちの働き方に大きく影響するものです。労働法制による規制は、私たちの命と健康を守るためのものです。
それに穴をあけて規制緩和しようというときに、「柔軟な労働制度へと抜本的に改革」などと、それと気づかれない言葉を用いる、あたかもよいことを進めるかのような言葉を用いる、そういう政権に私たちの生活を、命と暮らしを、委ねていて大丈夫でしょうか?
「柔軟な労働制度へと抜本的に改革」というのが、労働時間法制の規制緩和であり、「みなし労働時間」を超えて働いても残業代が出ない「#定額働かせ放題」の裁量労働制の拡大を意味するなんて、普通の人はわかりません。
そうやって気づかれないようにして法改正を図ろうとしてきたのです。
そして「比較データ」問題が表面化したら、何を撤回したのかわからない「答弁撤回」で、事態の収拾を図ろうとしたのです。
それでも野党の追及が続いたら、今度は「1万件のデータの精査」を行うとし、さらにそこで明らかな問題(「最長」の1日を聞いていた)が判明したにもかかわらず、
その明らかな問題に比べれば些末な問題である、データの異常値のチェックのために、さらに「1万件のデータの再精査(調査票との突合)」を行う、としているのです。
明らかな論点そらしです。そんな無駄な努力に厚労省の現場の職員を駆り立てることがあってはなりません。
施政方針演説にみられる「裁量労働制の拡大」という論点隠しは、問題の根が厚労省ではなく官邸にあることを示しています。
安倍首相が本当にやりたいのは、「長時間労働是正」と「同一労働同一賃金」を二枚看板とする「働き方改革」ではなく、労働時間規制という「岩盤規制」に穴をあけることです。
「柔軟な労働時間制度」「戦後の労働基準法制定以来、七十年ぶりの大改革」、そういった言葉に「毒」(裁量労働制の拡大)をくるんでしまえば、「大丈夫、気づかれはしない」、私たちは安倍政権から、そうみなされてきたのです。
そしてそのイメージ戦略が破綻しつつあるから、政権は困っているのです。