先進国トップの成長率?「ミスター円」が予測する"2014年の日本経済 ... リテラ 2014.1.1
2014年の経済に対して、明るい見通しを立てるのが、大蔵省財務官時代に為替・金融制度改革で辣腕をふるった「ミスター円」こと、経済学者・榊原英資氏です。書籍『2時間で未来がわかる! 「通貨」で読み解く これから7年・・・・
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古賀茂明「南北会談で“外交の安倍”のウソが露呈 日本の危機とは?」
連載「政官財の罪と罰」
strong>著者:古賀茂明(こが・しげあき)/1955年、長崎県生まれ。東京大学法学部卒業後、旧通産省(経済産業省)入省。国家公務員制度改革推進本部審議官、中小企業庁経営支援部長などを経て2011年退官、改革派官僚で「改革はするが戦争はしない」フォーラム4提唱者。元報道ステーションコメンテーター。最新刊『日本中枢の狂謀』(講談社)、『国家の共謀』(角川新書)。「シナプス 古賀茂明サロン」主催
南北首脳会談が終わり、ゴールデンウィークが始まった。
これに先立ち、安倍政権の支持率低下に危機感を募らせた安倍総理は、北朝鮮問題で蚊帳の外にされているというイメージ払しょくを狙って日米首脳会談を行ったが、米朝首脳会談で拉致問題を取り上げると約束してもらっただけで何の成果もなく帰国した。
【図表でみる】世界ビジネス環境ランキング2018
【表2】アジア大学ランキング(Times Higher Education)
追い打ちをかけるように、南北首脳会談では、南北に米を加えた3カ国、または米中2カ国を加えた4カ国協議を行うことが発表され、ますます「蚊帳の外」のイメージが広がってしまった。
「外交の安倍」は完全に不発どころか、逆にそれで躓いてしまった安倍総理としては、次の切り札である「経済の安倍」で勝負するしかなくなってきた。そのため、来年秋の消費税増税の影響緩和を大義名分として、来年度予算での巨額の対策費計上などが早くも画策されている。いつも繰り返される支持率目当てのただの大盤振る舞いである。
しかし、いくら目の前の株価や大企業の利益が上昇したからと言って、地方経済を含めた日本経済の競争力が回復するわけではない。安倍総理の立場に立っても、このままでは、彼にとっての最重要課題である中国との軍拡競争に勝ち抜くことなど夢のまた夢という状況だ。
日本経済の長期展望を語る時、財政赤字や少子高齢化と社会保障の問題などが議論の中心になっている。しかし、私が最も不安に感じているのは、日本の競争力の源が揺らいでいるということだ。中でも、人材と新規事業の創出における日本の立ち位置を冷静に見つめてみると、凍り付くほどの恐怖感に囚われる。
■先進国から転落しかかっている日本
まず、これはかなり広く認識されていることかもしれないが、日本は今どれくらい裕福な国だと見ることができるのかを再確認しておきたい。国民の豊かさを図る代表的指標が一人当たり国内総生産(名目GDP)だ。そのランキングで見ると、日本は世界何位くらいに位置するのかと聞かれたら、先進国のトップが集まるG7(先進国首脳会議)というものがあるから、3位くらいか、まあ、悪くても7位くらいかなと思う人がいるかもしれない。しかし、日本の順位は世界25位(2017年のIMF統計より)。90年代は、最高3位で、一貫してベスト10に入っていたから、その地位の低下は明らかだ。25位と言えば、先進国から転落寸前と言っても良い。
そうは言っても、アジア・中東諸国に比べれば、まだまだ断トツ1位だろうと考えたくなるが、実はアジア・中東でも、日本の位置づけは大きく後退している。順位は毎年変動するが、17年は、マカオ、カタール、シンガポール、香港、イスラエルに次いで6位(2017年のIMF統計より)である。イスラエルとは為替レート次第で順位は入れ替わる可能性はあるが、今やシンガポールに追いつくのはほとんど不可能という状況だ。
経済規模では、まだまだ日本の規模は大きいが、ついこの間中国にGDPで抜かれたと思ったら、今や中国は日本の2.5倍近くにまで成長している。つまり、日本経済の規模は中国の4割程度しかないのだが、これも意外と知られていない。
米中では、新興企業が短期間で急成長し、世界を動かす影響力を持つまでになるが、日本ではそういう動きが全くない。安倍政権もそうした事態を憂慮し、お得意の「成長戦略」で、新興企業などのビジネス環境を他国に負けない水準にしようとぶち上げた。その時のスローガンが、世界銀行が発表するビジネス環境ランキングで「先進国3位を目指す」というものだった。そもそも、「先進国」3位としたのは、ビジネス環境の整備には途上国が非常に力を入れていて、既に上位に陣取っているので、世界3位というとあまりにも実現性がないから、先進国に限って3位に入ろうというまやかしの目標にしたのだ。しかし、この構想は全く不発。かえって順位を落とす結果となった。2017年の世界ランキングでは、日本はベスト20にも入れず34位。35位のロシアに激しく追い立てられるという始末だ。ベスト5には、1位のニュージーランドに続いて、2位シンガポール、4位韓国、5位香港とアジア3カ国が並び(表1)、この他にも15位に台湾が入っている。
つまり、世界各国が新規事業を育てようとそのための環境整備に邁進しているので、日本が多少アリバイ作りの政策をやっているだけでは、完全に置いてきぼりになっているということなのだ。このままでは、さらに世界との差は開き、新規事業の成長で大きな後れをとるのは確実だ。
■将来を担う人材教育でアジアに遅れる日本
日本経済の将来を占ううえで最も重要なのが、人材だ。そこでも日本はアジア諸国に大きく遅れている。
世界の大学ランキングというものがあるが、実は、日本の大学は、東大でも世界46位と大きく順位を下げている(Times Higher Education2018)」。
世界ではどうしてもアメリカやイギリスの大学が上位に入るので、アジアだけのランキングで見るとどうなるか。当然東大が1位だと思う人が多いかもしれないが、実は、毎年順位を落としてついに8位まで下がってしまった。1位シンガポール国立大学、2位清華大学(中国)、3位北京大学(中国)、4位香港大学、5位香港科技大学、5位南洋理工大学(シンガポール)、7位香港中文大学で9位と10位は韓国の大学である。上位21校中(20位が2校あるので21校)のうち、日本は東大と京大(11位)の2校だけ。中国は7校、韓国と香港が5校、シンガポール2校だった。
将来のことを考えると、子供や孫の進学では、東大や京大よりも中国やシンガポールや香港の大学を勧めた方が良いということになるのだが、実は、日本人には、これらの大学に進学するのは極めて難しい。語学の壁があるということもあるが、それ以上に入試のレベルが、中国などの大学の方が日本よりもはるかに難しいからだ。
この傾向は、経営大学院(MBA)については、より顕著だ。フィナンシャルタイムズが発表した世界のMBAランキング2018では、ベスト100のうち大半はアメリカの大学院だが、アメリカ以外では、英国の14校に次いで2番目に多くランクインしたのが、中国の7校だった。1位スタンフォード(米)、2位INSEAD(仏)、3位ペンシルバニア大ウォートン校などの常連に交じり、何と中国の中欧国際工商学院が8位とベスト10入りをして世界を驚かせている。その下に続く9位がMIT(マサチューセッツ工科大)、10位カリフォルニア大バークレー校と聞けば、そのすごさがよくわかる。5、6、7位がハーバード、シカゴ、コロンビアだが、今の勢いだと、10年以内にトップの座を占める可能性もあると言われるほどだ。ちなみに、この大学院の卒業生の卒業直後3年の平均年収は、16万2858ドル。1ドル110円で計算すると1791万円だ。日本のMBAを卒業してもほとんど箔付け程度にしかならないのと比べると雲泥の差と言って良いだろう。
この中国の大躍進に対して、日本のMBAがベスト100にいくつ入っているのだろうかと思って、ランキングを上から順にスクロールしてみると、ついに一番下の100位まで行っても発見することはできなかった。つまり、100位以内にゼロである。中国の7校に比べて、何とも寂しい話だ。
これらの情報は秘密でも何でもない。新聞などでも報じられている。ただし、記者に何の問題意識もないので、これが何を意味するのかが理解できず、極めて小さな扱いでごく一部の情報を載せるだけである。
一方、優秀な若者は徐々にこうした事実に気づき始め、東大よりも海外の有名大学を目指す動きが広がっている。しかし、それは、残念ながら、まだごく一部である。
「ママ、中国は日本をドンドン追い越してるのに、日本人は、気づいてない。それって、相当ヤバくない?ここで勉強したことをちゃんと生かせる仕事がないから、日本に帰っても仕方ないね。アメリカかシンガポールで仕事を探すわ。給料もずっと高いから」
もう一人、カリフォルニア大バークレー校でMBAを取って、アメリカで今年起業したある日本人の若者の話を聞いた。
「日本に帰る理由を考えたけど、一つもなかった。強いて挙げれば、そこそこおいしいご飯がタダ同然で食べられることかな。ランチの定食が10ドル(1100円)なんて信じられないよね。アメリカだと、その何倍もするからね。でも、アメリカの大都市なら、お金さえ出せば、おいしい店はたくさんあるし、日本の何倍も稼げるから、結局、安いご飯は大した魅力にはならないな」
そして、こう付け加えた。
「日本人留学生は、ほとんどが政府や企業のひも付きで、日本に帰る前提で勉強している。留学は箔付けというレベルだから、米国で独立して活躍できる人材は少ないね。中国人ならたくさんいるよ」
日本の未来を支えるはずの若者のレベルが国際比較でこんなに低下しているとしたら、日本経済の将来は本当に危機的状況にあると言って良いだろう。
しかし、よく考えると、それ以前に、「日本礼賛」論がもてはやされる中、こうした事態を国民が認識していないこと、そして、何よりも安倍総理という政府のトップがその深刻さを全く理解する能力がないように見えることこそ、最大の危機ではないだろうか。
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