和田校長は、ADHDの障害を持つ父親に電話で・・・
『申し訳ないけれど入学式には息子さんは参加しないでほしい』『泰明小にこんな子が来るなんて前代未聞ですよ。・・・』
「アルマーニ騒動」泰明小の入学式出席を拒否された児童の父親が告白
「銀座らしさ」って、そういうこと?
給食はミシュラン店監修
「私の家は父の代から泰明(小学校)に通っており、愛着がありました。学区内に住んでいたこともあって、4年前に息子も母校に通わせることにしたんです。しかし3年前、和田校長とトラブルになり、息子を転校させることになりました」
こう語るのは、息子を3年前まで泰明小学校に通わせていたという同校OBのA氏だ。
泰明小学校といえば来年度の新1年生から標準服(制服)を海外高級ブランド「アルマーニ」がデザイン監修したものに切り替えることが明らかになり、国会でも取り上げられるほどの騒ぎになった。
「和田校長は外部へのアピールには熱心ですが、教育の中身に関しては薄っぺらい人だという印象です。今回のアルマーニの制服の件を聞いて、『あの校長らしいな』と思いました」(前出・A氏)
なぜ親子三代で通った小学校から息子を転出させることになったのか。
それを語る前にアルマーニの新標準服導入を独断で決めた和田校長の評判に耳を傾けよう。
PTAからの信頼も篤く、とても良い先生だと語るのは小学5年生の息子を通わせる母親。
「和田校長は地域とのつながりを深くしようとマラソン大会や盆踊りを企画してくれました。マラソンは銀座の外堀通りやコリドー街を通る普段なら絶対に走れないコースで保護者も子どもたちも大喜びでした。
あとミシュラン二つ星の割烹料理店の料理長に給食を監修してもらったこともあります。小泉進次郎さんも視察に来たんですよ」
ただ、最近は執拗に「泰明小学校が周囲からどう見られているか」を気にしていたという。
「保護者会のたびに、『近隣から児童がバスの中で騒いでいる、地下のコンコースを走り回っているという苦情が殺到している。家庭でちゃんとしつけをしてほしい』と繰り返すようになりました。
『またあの話をしてたね』とうんざりするママ友も多いですね」(小学4年生の娘を通わせる母親)
そこで和田校長がすがったのがアルマーニというブランドだった。「高級ブランド制服」を導入することによって、「泰明らしさ」「銀座らしさ」を取り戻そうというのだ。
とはいえ新たに導入される制服は基本セットが約4万5000円でセーターなどと合わせると約8万円にもなる。公立小学校にしてはあまりにも高額だ。元文科官僚の寺脇研氏は言う。
「公立学校が標準服を設けるのは、私服で家庭の経済的な格差があらわれてしまうのを避けるためです。文科省内に取り決めがあるわけではないが、常識的にそうなっている。公立だから贅沢じゃないほうに全体を合わせるということです。
泰明小学校の方針は、これとは逆で贅沢なほうに合わせるということ。払えない方は別の服を着てもいいと言いますが、公立学校の方針としてはいかがなものか」
もっとも場所柄ゆえか、保護者の間では新標準服を歓迎する声もある。
「アルマーニの制服を見ましたが、可愛いし、いいじゃないですか。泰明は特認校といって学区外から通っている子どもが大半。わざわざ銀座の学校に通わせようっていうんだから保護者はそれなりに収入がある人たちです。
泰明に通わせている親で8万円そこそこの制服が買えない人なんていませんよ。むしろこんな騒ぎになって迷惑してるくらいです」(1年生の女子の父親)
同校OBで銀座の老舗居酒屋「三州屋」の跡取りでもあるプロレスラーの三州ツバ吉氏は、保護者の間でも意見が割れていると語る。
「区外から通学している児童の保護者は納得している人が多い。一方で昔から銀座に住んでいる父兄は、『なぜ伝統校である泰明の制服が海外ブランドなのか』と複雑な思いを持っています。
ただ個人商店がほとんどなくなってしまった現在、銀座に住んでいる父兄はごくわずかです」
会見で「泰明らしさ」とは何かと問われ、「一体感」だと応じた和田校長。確かに学区外から通っている保護者から信頼されており、銀座らしい華やかなイベントも評判がいい。
しかし、その「一体感」からはじかれてしまう人々が、和田校長の目には入らなかったようだ。
「排除の論理」でいいのか
冒頭のA氏が泰明小学校から息子を転校させた経緯を語る。
「実はうちの息子はADHD(多動性、不注意、衝動性などの症状を特徴とする神経発達症のひとつ)でして、どうしても集団行動が苦手。
上級生からもいじめにあってしまったんです。それでいじめから逃げるためにトイレに立て籠もるようなことがよくありました」
和田校長には江東区の教育委員会でいじめ対策に取り組んでいた経験もあり、なんとかしてくれるだろうと期待していたA氏。しかしいっこうにいじめがやむ気配はなく、息子も授業に参加できない状況が続いたという。
「どうしたものかと悶々と一年を過ごしていたのですが、忘れもしません、3月30日のことです、和田校長が直々にうちに電話をかけてきたんです。
なんだろうと思っていると『申し訳ないけれど入学式には息子さんは参加しないでほしい』というのです。『なんでですか』と尋ねると、『他の子に危害が及ぶかもしれないから』と。いじめられていたのは息子のほうなんですよ。
さすがにそれはないだろうと抗議したら『泰明小にこんな子が来るなんて前代未聞ですよ。私たちもずいぶん妥協してきたんです。今回はそちらが妥協してください』と言われ、一方的にガチャリと電話を切られてしまいました。怒りで涙が出ましたよ。それで次の日、すぐに転校届を出しました。
たしかに一部の保護者にはいい顔をしていたようですが、それは学区外から来る教育熱心でブランド好きな人たちに対してだけ。中学受験でいい成績を収めれば校長の実績になりますから」
本件について泰明小学校に問い合わせると、「児童保護者様と学校とが話しあうべき内容と存じます。したがって、ご回答は差し控えさせていただきます」との返答があった。
いじめを訴える児童を入学式から排除して見えないようにしてしまう一方で、アルマーニ制服で外面を飾る。それを「銀座らしさ」というのだろうか。