現実というものは、あッという間に変わる。
今朝は雨だったのに、昼からはカンカン照りという様に…。
今年は景気が良かったのに、来年は不況になる…。
社会の流れがどんどん変わっているのに、自分の頭にこびり付いた善悪の固定観念を曲げる事ができない。
とにかくなりふり構わず強情に、自分の考えを張り通して、それで勝った積もりでいるのは、最低に下落した人間である事に、一向に気が付かない。
孔子は「過ちては、即ち改むるに憚る事なかれ」の名言を残している。
自己主張はいくらしてもいいが、自分の考えが今の時制に合わない事があったら、面子に拘ってどこまでも押し通す事はしないで、「いや、これは私の間違いです」と、率直に認める。
孔子は謙虚を美徳とし、頑迷を嫌った。
自分の力を頼み、頑として言い張る人に対しては、孔子は何一つ自分の意見を言わなかったという。
「先生ちょっと困った問題が起きたので、相談に乗って欲しいんですが…」と、私の処へある青年がやって来た。
「先生、私はこれこれと思うんですが」
「いや、その考えは違うと思うよ」
「えッ、先生がこの考えを否定されたら、僕は動けないんです。僕の一番大事に思っている事なんですから」
「大事に思っていても、この考えはダメ」
「ダメですって。でも、僕はこの考えでずーっと頑張って来たんですよッ」
ちょっと用事が有ったので、帰って貰った。