沖縄県の首里城のすぐ近くに、琉球王朝時代の面影を色濃く残す首里金城町(しゅりきんじょうちょう)石畳道がある。
その石畳道を進んで行き、少し離れた所にそこだけぽっかりと木々に緑が豊かに残された神秘的な場所にたどり着く。
ここは沖縄独特の信仰における聖域の御嶽(うたき)の一つである「内金城嶽(うちかなぐすくたき)」だ。
境内には「首里金城の大アカギ」と言われる、国の天然記念物に指定された6本の立派なアカギの大木がそびえている。
一番大きなものは樹齢200年を超すと推定され、樹高は約20mもあるという。
この付近でこの様なアカギの大木が茂っているのはここだけで、まるで人里から唐突に森の中に紛れ込んでしまったかの様な、不思議な印象を受ける。
だが、それも当然の事だと言える。
なぜなら、かつて沖縄県内で当たり前に生えていたアカギだが、1945(昭和20)年の沖縄戦の時に、殆どが焼き尽くされてしまったからだ。
首里金城のアカギの森だけは消失を免れたのは、まさに奇跡的な事だった。
その昔に村人がここを通るたびに、ただならぬ霊気に打たれ、琉球王府に願い出た事から拝む場所が置かれて、神々と王府の交流の場所となったと、伝えられているのも頷ける。
古くから聖域とされたこの場所の持つ神秘的な力が、どんなに激しい戦火からもご神木のアカギを守ったのかも知れない。
琉球王国から沖縄への激動の歴史を見つめ続けてきた神の木々は、これからも静かに沖縄を見まもって行くに違いない。