ずぶ濡れの道に、ずぶ濡れの
車を走らせながら、鈴愛は、
五年前の夜の一番面を、乾いた
心で思い出している。
美しい音楽だった。あまりにも
悲しいコンサートだった。
のちに、正人の流していた涙
の訳を知ったとき、鈴愛は胸
が裂けてしまいそうなほど
泣くことになる。
それでも、あのコンサートは、
少なくともその記憶は美しく、
そして愛おしいと、今の鈴愛は
思っている。
人が成長し、変化するのと同じ
ように、記憶もまた成長し、変化
するのかものしれない。
あの人の心のなかで、あの夜
の記憶は今、どんな姿形をしてい
るのだろう。
車を走らせながら、鈴愛は、
五年前の夜の一番面を、乾いた
心で思い出している。
美しい音楽だった。あまりにも
悲しいコンサートだった。
のちに、正人の流していた涙
の訳を知ったとき、鈴愛は胸
が裂けてしまいそうなほど
泣くことになる。
それでも、あのコンサートは、
少なくともその記憶は美しく、
そして愛おしいと、今の鈴愛は
思っている。
人が成長し、変化するのと同じ
ように、記憶もまた成長し、変化
するのかものしれない。
あの人の心のなかで、あの夜
の記憶は今、どんな姿形をしてい
るのだろう。