※ナディーヌ・ロスチャイルドの言葉を
ふと思い出した。
「わたしは、夫と家で夕食を食べる
時、一番きれいなドレスを着て、
一番いい宝石をつけるのよ。
だって、彼にきれいだと認めて
もらいたいんですもの」と
ナデーヌは言った。
「あたしみたいに何もできない
女はね、夫に捨てられたら死ぬ
しかないものね」と女友だちは
さらに言った。
「この年でよ、無一文になるこ
とを考えてよ。ゼロから始める
ことを考えてよ。
眼の前に老いがさし迫っていて
よ、病気や死におびやかされて、
たった一人で女が生きていく
ことを思うと、ぞっとするわ」
こういうかわいい女を、男は
絶対に捨てはしないだろうと、
その時私は思った。
今、女たちがずいぶんつっぱ
ていて、自立しているような
ことを言うけれど、男にして
みれば、
つっぱり自立女は別れやすい。
この女には自分がいなくても
大丈夫だと思えば、他に
大丈夫ではなさそうな女
に眼がいくこともあるだ
ろう。
そういえば、最近離縁され
た女には仕事があった。
※ナディーヌ・ロスチャイルド
貧しい家庭に生まれ、1歳半のときから
義父と暮らす環境に育つ。 中学卒業と
同時に家を出た後、町工場、印刷所、
毛糸屋、画家のモデル、映画の端役、
ミュージックホールのダンサーと
職を転々とする。
ある日、パリの小劇場で見つけた
古いマナーの本が彼女を変え、後に
ロスチャイルド・パリ家の大富豪、
エドモン・アドルフ・ロスチャイ
ルド男爵に見初められ結婚。