顔を見たり、直接、
言葉をかける機会がなかった平安時代。
想いを伝える第一歩は、
「和歌」を送ることでした。
いわば、ラブレターです。
紙に趣をそえて、芳しい香を焚き
しめ、
墨色を気遣いながら、
その筆遣いに想いを炊き込む。たとえば、木々が芽吹き、
地上にいのちが咲き誇る情景を
目にした日には、自らの燃え上
がる想いをかさね合わせ、歌
を詠んだのです。
人が、人を想う気持ちを、人の
手で、心をこめてカタチにする。
和歌は、手作りの贈り物なのです。
自由に、人が、人と会えなかった
時代。
会えない時間が長いからこそ、
人を想う時間は色濃く、
鮮やかだったのかもしれません。