余白のメモ

詩と短歌と好きな本
指の上で四季はほほえむ

昨日がなければ明日もない

2021-07-28 23:27:59 | マイブック(ま)
「昨日がなければ明日もない」
      宮部みゆき 著

イギリスにアガサ・クリスティーがいれば、
日本は宮部みゆき、
僕はそう思うのだ。
さて、杉村三郎。
シリーズである。
杉村探偵が三篇の事件を手掛ける。
杉村は寄り添う。
どう寄り添うのか。
痛みをそっと包み込むように。
一話目は集団の持つ暗黒。
集団はときにあまりにも残酷になりえる。
二話目は手品のように二転三転。
三話目は離せはしないもの。
手放すことができないもの。
永久のミクロの世界。
読了後は物悲しい風が景色を響かせる。


最近は情報がおかしな方向へ向かっている気がしてならない。
今も昔もなのか。
自身の許容範囲をこえてしまっているのか。
すこし遮断し、
ひとはうまれそだちいきて、おい、
しをむかえる。
獲得していくものは花鳥風月のような流れを、
孤独と孤独が手をつなぐ生きもの。
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香水

2021-07-28 22:55:42 | 十五の詩
無作為に搾取した
種はとりあえず食べておく
いずれこの体は花を育てるだろう
色とりどりの花びら
花の香りをビンにつめ
一つしかない香水をつくろう
おちていく花びらは
道中のじゅうたん
花の神フローラの
花びらをひとつゆずってもらおう
春が頬を撫でれば
美の女神も祝福してくれる
三美神は輪をつくり
奇跡の花をつくるだろう
美しさをみせる花も
枯れていくのはとめられず
その儚く散りゆく花の根は
種を宿し
残っている香水を手首に
秋の夢をまとい
麗らかな食事をする
雲の切れ間から射す光が
頭をかぶるベールをとる
漂泊の蕾が花開き
遅めに起きた朝をむかえる
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息をはく

2021-07-28 22:52:17 | 十五の詩
季節の移ろいは艶やかに
ひとつ息を吐けば色を出し
ひとつ息を吸えば匂いと味を取り込む
(名前)
天地がないている
ひざまずき おえつをもらし
足元はさだまらず 目はうつろに
声はなく 耳をあかくそめあげて
(ないている・・・)
おもちゃ箱 ガラクタ山場 お化け屋敷
色濃くうつしだされた物体は
返事をかえすことはなく
無数の数字が飛び交っている
存在意義のあやうさに
ひょいと飛び乗る死刑台
勘違いだらけの世の末に
賛否両論が木霊する
雨が降る 雪が降る 雹が降る 雷が鳴る
見事な崖から見下ろせば
上下乱舞と風をうける鳥達
無残に千切れた哲学思想に
目眩が白目をかもしだす
いずれ壊れゆく身体の脆さに
手の指が意識の彼方で動力する
過去の海がある
デジャヴは過去の遺物
知らずについた爪痕に
反響していたものがトグロする
ひめやかに行われた遊戯は
静かに終わりを告げる
唇の柔らかさをいとおしく
触れながら誰ともしらず
自我の表明
俺はせっけんが好みだった
好みで決めるとしよう
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脱却

2021-07-28 22:46:41 | 十五の詩
マイナス思考
君の考え方っておかしいね
脱却を考えていた
真白な地図には答えをいれず
光を当てて眺める地図
コーヒーブレイクの時間
お気に入りのキャップを椅子におき
らくがきの紙をテーブルに広げる
地図を光に透かして見る
役立たずの地図は
上質な和紙で出来ている
ころがり続けた坂道を
おかしな笑いがでたあとに
そのばかばかしさにはがゆさが
表だってにじみでる
動悸はいつもより尋常に
驚くほどのはやさをうつ
だっきゃくか
しっきゃくかもな
しっかくか
亜鉛の雲が向こう側
あれは雨降らしの雲だろう
フラッシュバックが彼方の脳裏に
いつの頃か身に付けた
過去がうつしだされる
不意に来る甘さと苦さ
どちらも辛さがのってくる
おねしょの地図は当てにはならず
甘美な匂いがよみがえる
いつの頃だったか
舌に残るざらつきは味覚を滅ぼし
焼きついた烙印が浮き出る
だそうとした声音は
空気に振動せず
屈折したプログラムが笑い上戸に
硬質の石を撲りつける
思考は地図を塗ることはなく
ブラックコーヒーが胃を焼かせ
いつまでもわからぬ衝動が
マイナス思考をからめていく
思い立った脱却は
成功も失敗もしないまま
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関節

2021-07-28 22:40:17 | 十五の詩
奥底で時を待つ
竜巻を握りしめ
網目から見る景色は程遠い
なにが程遠いのか
縁遠いと同類
いつの頃からか
ココロにも網目がかかり
理由や訳や目的
そういった類のものものが
不安定に飛び交っている
そう
確かにあるにはあるが
そいつらは不安や恐怖
なにより迷いによるもやを吹きかけ
視界は羽虫で雲隠れ
俺は盲目という偽りで
目覚める術を待つ
奥底がゆれている
憂鬱という渇きを風に変えようと
必死のように
世界は街をつくり
街は俺を個にはしない
海をのみ
海をあおり
グニャリと歪んだ聴覚から
小さく囁く影がある
解毒の理由と調合を
あたかも副作用を含ませて
奥底から熱をうむ
背徳の街の片隅で
小指をカリとかじり
契約と契りを結ぶ
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