モンテーニュの時代に広くおこなわれていた教育といえば、子どもたちを鞭による苦痛と恐怖で締め上げることでした。彼はそのやり方を厳しく批判しています。
「人は子どもたちを学問へ誘う代わりに、事実上は、子どもたちに恐怖と残酷をしか与えていないのです。どうか暴力と強制をやめてください。私の見るところでは、良く生まれついた本性をこれほどはなはだしく堕落させ、萎縮させるものはありません。」
「授業の最中にそこへ行ってごらんなさい。聞こえてくるのは、罰せられた子どもたちの泣き叫ぶ声と、怒りにのぼせた先生達のわめき声だけです。あの感じやすいおどおどした子どもたちの霊魂に学科への意欲を呼びさますのに、あんなにこわい顔をして、手に鞭をにぎって、彼らの霊魂をそこへ連れて行こうとは、なんというやり方でしょう? 不正で危険な方法です。」
「お子様が恥辱と罰とを恐れることを、もしあなたがお望みなら、彼をそれに慣れさせてはいけません。」
大人は子どもが罰を恐れて勉強するようになることを望んでいるのかもしれませんが、あまりに罰を受け続けてそれに慣れてしまった子どもは、もはや罰を罰と受け止めなくなるかもしれません。
「若者は放埒にならない前から罰せられるので、かえって放埒にさせられてしまいます。」
子どもの行為に対して子どもが思いもよらない悪徳を大人がかってに意味づけて罰を与えることによって、子どもはかえってその悪徳を身に付けてしまうことがあります。モンテーニュはそんなやり方ではかえって子どもたちを駄目にしてしまうと考えました。(鈴)