モンテーニュは、学問は本来楽しいものであるという強い信念を抱いています。そして、教育には学ぶ楽しみが不可欠のものであることを随所で述べています。
「子どもたちの利益があるところには、彼らの楽しみもあるのでなければなりません。」
「知恵の最も明白なしるしは不断の喜びです。」
「彼の心の中に、すべてのものを探求しようとする正しい好奇心を植え付けてください。」
彼自身、生涯にわたってあらゆることに対するみずみずしい好奇心を抱き続けていました。それを端的に示しているのが、彼がモットーとする「およそ人間に関することで私に関係のないことは何一つない」という言葉です。
学問の中で最も困難な、近寄りがたいものと思われている哲学について、モンテーニュはこう述べています。
「哲学は徳を目標としていますが、この徳は、学校で教えるような、けわしく、でこぼこした、近づきがたい山の頂に立てられたものではありません。」
学校の教師たちは、「この徳を足繁く訪れなかったために、自分達の弱さに引きずられ、あの愚かな、悲しげな、怒りっぽい、陰鬱な、脅かすような、しかめ面の姿を作り上げ゛、これを人里離れたいばらだらけの岩山の上に、人を脅かす幽霊として、打ち立てることになったのです。」
「哲学を、子どもたちに近付きがたいもの、しかめ面をしたもの、眉に皺を寄せた恐ろしいものとして描いてみせるのは大きな誤りです。」「世にこれほど愉快で、快活で、陽気なものはありません。」「悲しい、沈んだ面持ちは哲学がそこに宿っていないしるしです。」
また、歴史について、彼はこう述べています。
「もろもろの歴史を覚え込ますよりも、それらを判断するようにさせることです。歴史は、私の考えでは、すべての学科のうちで、我々の精神が最も多種多様な仕方で注がれる学科です。」
現在でも、歴史は“暗記物”であると思われがちです。テスト前に歴史上の年代や事件や人名を丸暗記して、テストが終わればさっぱり忘れてしまうという勉強のやり方をした人も多いのではないでしょうか。過ぎ去った過去の事柄をなぜ覚えなければならないのかと疑問を持つ人も多いでしょう。モンテーニュは、子どもたちが人間のあり方について豊かな判断力を身に付けるためのものだと考えていました。(鈴)