★「People」6月28日号誌上で特集された、テイタム・オニールの記事。
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1973年(9歳) ペーパームーン
1976年(12歳) がんばれ!ベアーズ
1978年(14歳) インターナショナルベルベット/緑園の天使
1980年(16歳) リトルダーリング
かつては天才的な子役スターとして一世を風靡し、スクリーン誌などの映画雑誌の人気投票では年間1位の常連だったテイタム・オニール。同時代の映画ファンであれば決して忘れることのできない存在であり、「将来はどのような大女優になるだろう」と、その無限の可能性を期待されたものだった。
しかし、1980年頃を境に人気に陰りが見え始め、1986年にテニスのスター選手ジョン・マッケンローと結婚すると、ほとんどのファンは離れてしまった。1992年にマッケンローと離婚後、銀幕の世界への復帰を試みるものの、もはやかつての人気と輝きはなく、これといった目ぼしい役も得られないまま、すっかり過去の存在となり、いつしか、ほとんど音沙汰も聞かなくなってしまう。
そんなところへ、つい先日、思いもよらないニュースが飛び込んできた。なんと、ニューヨークの自宅から3ブロック離れた場所で、路上の麻薬密売人からコカインを購入しようとした疑いで、逮捕されてしまったというのである。
テイタムが長年アルコールと薬物中毒と闘っていたらしいという噂は、以前から聞いたことがある。アメリカの映画界では、そのようなことは珍しくないし、ニュースそのものにはさほど驚くこともなかった。ただ、自分には、高校から大学にかけての頃、同世代で最も好きな女優として憧れていた思い出があるだけに、とても悲しく、複雑な気持ちになってくる。
この事件について書かれた雑誌記事を読む限りでは、テイタム自身はどうにかして立ち直ろうと努力しており、3人の子供との関係も良好なのは救いだが、長年の悪習から抜け出すのは、並大抵のことではない。ここらで、たとえば、思い切ってフルマラソンに挑戦してみる、というような荒治療が必要なのではないだろうか。
現在44歳。まだまだ、先の人生は長い。幸い肥満には陥っていないし、スレンダーな体型を維持しているので、少し練習すれば走れるようになるだろう。マラソンを完走すれば、人生観そのものが一変する。もはや、アルコールやコカインなどに頼る必要もなくなるはずだ。
★最近亡くなった愛犬Lenaとともに。「I'm a sick person trying to get well」という認識が本物なら、回復への道はあるはずだが…。
★岩崎宏美 「Dear Friends Ⅲ」 2006年9月27日発売 (TECI 1136)
収録曲 ①Sincerely/Teach Me Tonight with バリー・マニロウ (The McGuire Sisters 1955年) ②今年の冬 (槙原敬之 1994年) ③どうぞこのまま (丸山圭子 1977年) ④元気を出して (竹内まりや 1987年) ⑤言葉にできない (オフコース 1982年) ⑥愛の讃歌 with 大江千里(ピアノ) (越路吹雪 1949年) ⑦砂に消えた涙 (弘田三枝子 1965年) ⑧卒業写真 with 岩崎良美 (荒井由美 1975年) ⑨青春の影 (チューリップ 1974年) ⑩In My Life with スターダスト・レビュー (THE BEATLES 1965年) ⑪雪の華 (中島美嘉 2003年) ⑫つばさ (本田美奈子.1994年)
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岩崎宏美さんによるカバー名曲集「Dear Friends」シリーズの第3弾。今回は世界的大歌手バリー・マニロウとのデュエット曲を皮切りに、かつてないほどの「最強アルバム」に仕上がっている。曲目の解説は、宏美さん自身のライナーノーツが何よりも雄弁に語っており、それに付け加える言葉は、自分には思いつかない。心を込めて磨きあげられた一曲一曲に、ただ聴きほれるのみである。
現在まで、最も繰り返し聴いているのは、アルバムのトリを飾る本田美奈子さんの「つばさ」。これを聴いたあとに、美奈子さん自身の「つばさ」を聴くと、同じ名曲でも、歌手によって、どれだけ印象が違ってくるのかがわかる。
美奈子さんの「つばさ」は、1993~94年頃に録音されているので、年齢で言えば、26~27歳くらいの頃であろうか。その声は若々しく、どこまでも上昇していく青春の力強さにあふれている。語り草になっているロングトーンの部分を含め、まるで、大空を越えて、大気圏外まで飛び出して行きそうなほどの、勢いがある。季節にたとえるならば、夏をイメージさせるのが、美奈子さんの「つばさ」だ。
宏美さんの「つばさ」は、美奈子さんに比べると、より成熟した年齢で歌われているせいか、力強さよりも、母性的な優しさのほうが前面に出ている。「私つばさがあるの・・・」という最初のフレーズから、どこか、想い出に浸るような感触がある。美奈子さんの「つばさ」のように、大気圏外まで飛び出して行くことはない。そこまで無茶はしないのである。季節で言えば、秋の哀愁を帯びているのが、宏美さんの「つばさ」と言えようか。
個人的には、どちらも魅力的なので、両方とも手元に置いておきたい。この2種類の「つばさ」をカップリングにして、シングルカットする企画を提案したいと思う。(レコード会社の枠を越えなければならないが・・・)
「つばさ」とともに、忘れられない名曲が、弘田三枝子さんの「砂に消えた涙」。この曲がヒットしたのは、自分が小学校2年生の頃だった。当時、弘田三枝子という歌手の名前は知らなかったが、この曲とか、ジャングル大帝のエンディングテーマ「レオの歌」に聴く、迫力あるパンチの効いた歌声は、小学生だった自分も強烈な印象を受けたものである。宏美さんの歌で、この曲を聴くと、幼ない日々の思い出が走馬灯のようによみがえって来る。
「つばさ」「砂に消えた涙」以外では、今のところ、「今年の冬」「青春の影」「雪の華」あたりを、好んで聴く回数が多い。特に「雪の華」に聴くハイトーンの美しさは、2000年以降のJ-POPにおいて有数の名曲に数えられるこの曲の魅力を、オリジナルの歌手以上に引き出していると思う。
先日、「タワーレコード倒産!」という記事を載せたが、実は、まだ半信半疑で、信じられない気持ちのほうが強かった。ところが、その後、タワーレコード66丁目店に行ってみると、なんと、すでに閉店セールが始まっていたのである。
やはり、本当だったのか・・・。今さらのようにショックを受けた自分は、ぶらぶらと店内に入ってみた。気のせいか、閑古鳥の鳴いていた最近の様子に比べれば、そこそこ賑わっているように見える。自分と同じように、閉店が迫っている事実に、当惑と驚きの表情を隠せない人たちも多い。現在、すべての商品が10~30パーセント引き。「Going Out of Business」「Everything Must Go」の表示があちこちに貼られている。
実際、閉店日はいつなのだろう? 店員の1人にきいてみたところ、「クリスマス」という答えだった。NYCでは、12月上旬の2週間が「ショッピング・ウィーク」と呼ばれ、1年中で、買い物客が最も賑わう期間である。この時期をメドに、すべての在庫を売りつくしてしまおうという計画のようだ。
それにしても、タワーレコードが閉店してしまったら、今後、どこでCDを購入したらいいのだろう? ポピュラー系の音楽であれば、ヴァージン・メガストアでも、それほど困らないだろう。しかし、クラシック音楽などの分野になると、タワーレコードの在庫には、到底及ばない。おそらく、比較的手に入りやすい新譜以外は、ネット注文に頼らざるを得なくなるだろう。
時代の流れは、あまりにも速い。ドーナツ盤のレコードで育った自分にとっては、CDの登場でさえ、ごく最近の出来事に過ぎない。そのCD時代も、すでに全盛期は過ぎ去り、より便利で手軽なものに、主役の座を譲ろうとしているのである・・・。
iPodなどの新メディアの普及で、CDの売り上げが低迷していることは、ここ数年来言われていることであるが、時代の流れは、もうここまで来ていたのだろうか・・・。
自分は10年以上、NYCのCD店舗の盛衰を見ているのだが、全盛期の勢いに比べると、ほとんど滅亡に近い状況になっている。
かつては英国の大手レコード会社HMVが、次々と新店舗を拡大し、マンハッタンの中心部だけでも数ヶ所でCDを購入することができたのだが、ある時期を境に、閉店が相次ぎ、今や、完全に撤退してしまった。
ブロードウェイ沿いに2店舗あるヴァージン・メガストアも、CDの売り場が半分以下に縮小され、ヴィンテージ物のTシャツなどが幅を利かせるようになってしまった。
その中でも、アップタウン(66丁目)とダウンタウン(4丁目)に2ヶ所あるタワーレコードだけは、従来からの正統的CD店舗の体裁を保ってきたのだが、最近は、明らかに厳しい様子が見て取れた。たまに来店すると、どの階に行っても閑古鳥が鳴いているのである。以前は、週末などに行くと、レジに長蛇の列ができていて、長時間待たされたものだが・・・。
個人的には、新譜のCDは、なるべくCD店舗で購入するようにしている。ネット注文するのは、どうしても店頭では手に入りにくかったり、海外(ほとんど日本)で発売されるCDのみ。iPodも、まだ購入していないし、「音楽をダウンロードして聴く」と言われても、どうもピンと来ないのである。
要するに、古い世代の人間という話なのだが・・・。
今後、NYCのCD店舗は、どうなるのだろうか。タワーレコードが買収されてしまうと、当然、オーナーの経営方針が変わるので、従来のような正統的CD店舗ではなく、最近のヴァージン・メガストアのような、総合的娯楽ショップに移行する可能性が高い。実際、そのほうが集客は期待できるのである。
そうなると、NYCからCD店舗が消えてしまう。もちろん、CDをまったく買えなくなるということではないのだが、CD専門店ならではの充実した品揃えと、音楽好きの集まる独特な雰囲気と、経験豊かなスタッフによる味のあるサービスは、遠い過去のものとなってしまうのである。
★青い三角定規 「太陽がくれた季節」(EP) 1972年2月発売当時のジャケット。
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今、必死になって、34年前の記憶を呼び起こそうとしている。
あれは、中学校3年の春。新しいクラスになって初めての遠足が、5月頃にあった。
どこへ行ったのだろうか・・・。あいにく場所が思い出せないのだが、クラスでバス一台を借りきっていたので、それなりに遠くへ行ったはずだと思う。
覚えているのは、歌がとても上手な、美人のバスガイドさん。当時の最新ヒット曲、小柳ルミ子の「瀬戸の花嫁」を歌ってくれたのだが、その透き通るような美声は、年若い自分のハートを震わせるのに十分だった。
遠足が終わったあとも、友人との間で、「あのバスガイドさんは、きれいだったね」という話題ばかりが、しばらく続いた。行った場所などは、もはや、どうでもよかったのである。
その「瀬戸の花嫁」と同時期に大ヒットしていたのが、青い三角定規という新人フォークグループが歌う、「太陽がくれた季節」だった。
君は何を今 見つめているの
若い悲しみに 濡れた眸で
逃げてゆく白い鳩 それとも愛
君も今日からは ぼくらの仲間
とびだそう 青空の下へ
山川啓介作詞、いずみたく作曲の、青春のあこがれと翳りに満ちた名曲。
当時、最もナウい曲だったといってもいいだろう。
あれから34年、それぞれの青春を歩んできた、かつての青い三角定規の仲間たちが、再び活動を共にするというニュースを聞いた。
あの「太陽がくれた季節」が、帰ってくる。フォーク史上不朽の名曲が、新しいアレンジで生まれかわる、という期待を抱かせたのだが・・・。
再び、あの仲間たちが集うのは、遠い未来になってしまった・・・。
★河村隆一 「Evergreen -あなたの忘れ物」 2006年5月29日発売
(COCP33711)
収録曲 ①花の首飾り (ザ・タイガース) ②「いちご白書」をもう一度 (荒井由美) ③ブルースカイブルー (西城秀樹) ④LOVE(抱きしめたい) (沢田研二) ⑤オリビアを聴きながら (尾崎亜美) ⑥YES-YES-YES (オフコース) ⑦スローモーション (来生たかお) ⑧Virginity (レベッカ) ⑨恋の予感 (安全地帯) ⑩恋におちて -Fall in love- (小林明子) ⑪真夏の果実 (サザンオールスターズ) ⑫OH MY LITTLE GIRL (尾崎豊) ⑬愛燦燦 (美空ひばり) ⑭I for You (LUNA SEA)
[Bonus Track] Time To Say Goodbye (アンドレア・ボッチェリ)
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1990年代以降、自分は、ほとんどの期間を米国で過ごすことになり、しかも、個人的な事情があって、なかなか帰国できない時期が長く続いた。
今でこそインターネットなどの発達もあり、日本での情報を得るのにさほど苦労はなくなってきたが、当時は、数少ない日本語のニュースを見逃してしまうと、それ以上、情報を得る道がなかった。そうこうしているうちに、いつしか浦島太郎状態になっていったのである。特に、日本の最新ヒット曲などは、ほとんど聴くことがなかったし、「J-POP」という言葉が生まれていたことさえ、かなり長い間、知らずにいた。自分にとっては、日本の流行歌は、あくまで「歌謡曲」であり続けたのである。
久々に帰国することができたのは、1997年10月のことだった。前回の帰国から4年近くのブランクがあり、世の中はガラリと変わっていた。ヒットチャートを見ても、知らない歌手ばかり。どの曲を聴いても、チャカチャカしたリズム音ばかりが耳につき、ほとんど感情移入ができなかった。いつのまにか、歌謡曲の時代は終わっていたのである。
そんな中、ある男性歌手の歌声に、心がひかれた。それは、あるテレビ番組の主題歌として流れていた曲なのだが、思わず、「この曲はいける!」と感じたものである。それが河村隆一の「Love is ...」だった。
その後、自分は、この年に発表された河村隆一の4つのシングル、「I love you」「BEAT」「Glass」「Love is ...」をカラオケで歌えるように練習し、機会あるごとに披露したのである。
さて、今回のアルバムは、ラブ・バラードの名曲カバー集だ。一見して、感性が似ているのだろうか・・・と思ってしまうくらい、選曲が自分の好みにハマっている。
さすがに、どの曲も、艶のある声で情感たっぷりに歌いこなしていて、「これなら女性はシビれるだろうなあ~」と思わずにはいられない。特に、「オリビアを聴きながら」「恋におちて -Fall in love-」などの女性ナンバーは絶品だ。
ボーナストラックとして収録されたライブ録音、「Time To Say Goodbye」も見事。本田美奈子さんも歌っていた、イタリア語の名曲だが、この曲をライブで取り上げるだけでも、すごいと思う。これを聴くと、なかなか堂々たるヴォーカリストぶりで、将来は、美奈子さんのように、クラシックの分野にも進出するのでは・・・とさえ、思えてくる。
次回は、ぜひ本田美奈子さんのオリジナル曲も歌ってくれるよう、リクエストしたい。「the Cross -愛の十字架-」「SLOW WALK」あたりのバラードが、彼には合うような気がする。あとは、やはり、「つばさ」も聴いてみたいと思う。
★エンヤ: 「A DAY WITHOUT RAIN」 (2000年11月11日発売) WPCR-11000
収録曲 ①a day without rain ②wild child ③only time ④tempus vernum ⑤deora ar mo chroi ⑥flora's secret ⑦fallen embers ⑧silver inches ⑨pilgrim ⑩one by one ⑪isobella ⑫lazy days
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2001年9月11日(火曜日)。その日はいつものように、NJ州の自宅からバスに乗って、マンハッタンのオフィスに出勤。8時ころにはバス・ターミナルにつき、その後軽い朝食を取って、オフィスについたのが、8時50分頃であったろうか。その時、エレベーターに乗り合わせた同僚が、「ツインタワーに飛行機が突っ込んだらしいよ」と話しかけてきた。「え、そうなの?」と多少驚いた自分は、まだこの時は、事の重大さに気づいていなかった。せいぜいセスナ機のような小型機が、間違ってぶつかってしまったんだろう、くらいにしか想像できなかったのだ。
オフィスにつくと、何か大変なことが起きている雰囲気が、確かにあった。仕事どころではなく、みんなインターネットのニュースに釘付けなのだ。報道を聞いてみると、ツインタワーにぶつかった飛行機は、セスナ機などではなく、ハイジャックされた民間旅客機だという。そのうちに、なんと、2機目の旅客機が突入してくる。これは大変だ! 事故なんかではない!
自分のオフィスの窓からは、直接ツインタワーは見えない。ただ、煙が立ち昇っているのは、はっきりと見える。それを見た時、テロというよりも、すでに戦争が始まっているかのような、恐ろしい戦慄に、身が震えてきた。聞くところによると、もう1機ハイジャックされた旅客機が、どこかを飛んでいるという。それがエンパイア・ステートビルあたりに突っ込んできたとしたら・・・。
あれから、すでに5年が経つのだが、あの恐怖は忘れられるものではない。
あの時、9月11日の出来事の直後から、毎日のようにラジオで流れていた曲があった。それが、エンヤの「ONLY TIME」である。
Who can say...
where the road goes...
where the time flows...
only time...
(道がどこに向かっていくか、一日がどこに流れていくか、時だけが知っている・・・)
永遠普遍の「時」をテーマにしたこの曲は、文字どおり、この出来事で傷ついた人々に癒しを与え続けた。ここに紹介した、エンヤのアルバム「A DAY WITHOUT RAIN」は、前年11月にすでに発売されていたが、2001年9月11日を境にして、再び、ヒットチャートを駆け上っていったのである。
実際のところ、直接被害にあわなくとも、自分も含めて、心理的なショックが、長く尾をひいている人たちが多かったのだ。NYCに住んでいたり、そこで仕事をしていた人にとって、いつもそこにあったツインタワーがない、という事実だけでも、世界が変わってしまったような喪失感にさいなまれたものである・・・
★ホルスト:「惑星」 + エルガー:「エニグマ」変奏曲 (EMI 5677492)
Sir Adrian Boult 指揮
London Philharmonic Orchestra("The Planets") *1979年録音
London Symphony Orchestra("Enigma") *1971年録音
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先月、国際天文学連合(IAU)の総会によって、冥王星が太陽系の惑星から除外された決議について、アメリカの宇宙科学者たちが反対運動を起こしているという。
2006年1月に打ち上げられ、冥王星に向かっているNASAの惑星探査機「ニュー・ホライズンズ」の主任研究者アラン・スターン博士は、IAUでの総会で決議された惑星の新定義は、あいまいで科学的でないとし、再定義を求める懇願書をインターネットに載せた。すると、数日間で300人以上の著名が集まったということである。
さらに、冥王星の発見者、故クライド・トンボー氏が勤務していたニューメキシコ州立大学では、9月1日、学生や職員ら約50名によって、抗議集会が行なわれ、そこには、発見者の息子、アル・トンボーさんも姿を見せたという。
やはり、発見国アメリカとしては、簡単に引き下がるわけにはいかないのだろう。その気持ちは、よくわかる。もしも、冥王星を発見したのが日本人だったとしたら、日本でも同じように、抗議運動が起こるに違いない。
この冥王星論争であるが、クラシック音楽界にとっては、景気回復のいい機会になりそうだ。「惑星」のCDが、売れまくっているのである。
現在の一番人気は、発売されたばかりのラトル/ベルリン・フィル盤であろう。ここには、原曲の「惑星」にはない、コリン・マシューズ作曲の「冥王星」を始めとして、現代音楽の作曲家によって書かれた、天体をテーマにした楽曲が一緒に収録されていることもあって、特に天体ファンには興味をそそられる新譜なのである。自分はまだ購入していないが、そのうちに、聴いてみたいと思う。
ここで紹介するのは、イギリスの名指揮者サー・エイドリアン・ボールトの歴史的名盤。「惑星」の初演指揮者であり、作曲者と直接の交流があった。他にもいろいろと名録音はあるが、これを聴くと「惑星」のふるさとへ戻ってきたような、安心感がある。1979年のアナログ録音ではあるが、呼吸の豊かさ、音色の意味深さは比類がなく、何度聴いても飽きることがない。
組曲「惑星」を構成する7曲のうち、誰もが耳にしたことのある、あの素晴らしいメロディーは、第4曲「木星」の中間部に現われる。本田美奈子.さんが歌う「ジュピター」の原曲となった部分だ。若い世代の人たちには、平原綾香さんの歌でもお馴染みだろう。
だが、「惑星」の本当のクライマックスは、第5曲「土星」、第6曲「天王星」、第7曲「海王星」と続く3曲だと思う。特に「天王星」の激変に満ちた曲想は、衝撃的ですらある。
一説には、第1曲「火星」の中で、来るべき第一次世界大戦が予見されていたと言われるが、「天王星」を聴くと、それ以降の戦争も予見していたのではないか・・・と考えるのは、あるいは深読みにすぎるかもしれない。ただ、そう解釈することによって、「海王星」の静けさが、まるで核戦争で人類が誰もいなくなってしまったような、不気味さを帯びてくるのである。
もしかすると、われわれの行く末に対する、警鐘が込められているのだろうか。
現在の世界情勢の中で、この曲が再び脚光を浴びるというのも、何か意味があるような気がする。
★久保田早紀 「シングルズ CD&DVD THE BEST」 2005年6月29日発売 MHCL-583~4
収録曲 [CD]①異邦人 ②夢飛行 ③25時 ④みせかけだけの優しさ ⑤九月の色 ⑥真夜中の散歩 ⑦オレンジ・エアメール・スペシャル ⑧長い夜 ⑨レンズ・アイ ⑩日本の子供達 ⑪ねがい ⑫地球はコンサート・ホール ⑬愛の時代 ⑭ルシアン ⑮お友達 ⑯エルドラド ⑰ピアニッシモで・・・ ⑱夜の底は柔らかな幻 ⑲百万本のバラ ⑳風激しく ―讃美歌126番―
[DVD]①25時(ライブ) ②メドレー(ライブ) オレンジ・エアメール・スペシャル~キャンパス街’81~最終便 ③異邦人(ライブ)
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夏のギラギラした太陽は去り、涼しい秋がやってきた。なんとなく、秋にふさわしい歌声・・・を連想させるのは、個人的には、この人、久保田早紀である。
まず、衝撃的なデビューが、秋だった。1979年10月1日に発売された1stシングル「異邦人」は、ヒットチャートの1位を独走し、なんと150万枚の大ヒットとなった。あまりにも、この曲ばかりが有名になったため、あとに続く曲が目立たなくなってしまったが、よく聴いていけば、決して「異邦人」に劣るわけではない名曲が、たくさんあることに、気づくのである。
たとえば、1980年9月1日に発売された3rdシングル「九月の色」。後ろ髪をひかれるような、せつない別れの心象風景が、「九月色の雨のしずく」に象徴される季節感とともに、水彩画のように描かれていく。歌われる声の質が、とても優しく、デリカシーに富んでいて、聴くたびに、癒されていくような気がする。女性のシンガーソングライターはたくさんいるが、これだけ優しい声を持った人は、なかなかいないのではないか、と思わせられるほどだ。
久保田早紀というと、「異邦人」のイメージから、エキゾチックで、神秘的なシンガーと思われることもあるようだが、実際は、ふつうの若い女性らしく、とてもチャーミングで、親しみやすい個性も備えていたと思う。1981年4月21日発売の4thシングル「オレンジ・エアメール・スペシャル」は、彼女のポップで明るい魅力を開花させた名曲で、個人的には、むしろ、こちらを代表作にしたいくらいだ。当時、CMにも使われたので、同世代の人たちは、聞き覚えがあるのではなかろうか。
ここに紹介した、「シングルズ CD&DVD THE BEST」には、彼女が発表した10枚のシングル(引退後に発表した、久米小百合名義の1枚を含む)のAB面全曲が、発売当時のジャケット写真入りで、完全収録されているのがうれしい。また、付属のDVDには、1984年11月26日に行なわれたフェアエル・コンサートの、貴重な映像が収められている。
見どころは「オレンジ・エアメール・スペシャル」で始まる、3曲のメドレー。ピンク色のリボンが可愛らしい。応援してくれたファンのために、精一杯のパフォーマンスを見せてくれる。そして、アンコールに応えて、万感の思いで歌う、「異邦人」。この一曲で、伝説のシンガーソングライター・久保田早紀としての、5年間の活動に、終止符を打つのである。
別れの季節も、また、秋であった。
★NASAのハッブル天文台の望遠鏡が捉えた冥王星(左下)と、衛星・カロン(右上)。
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すでに、大多数の人々がご存知のように、今月23日、長らく「太陽系第9惑星」として認知されてきた冥王星が、国際天文学連合(IAU)の総会によって、惑星から除外されることになった。
アメリカの天文学者クライド・トンボーによって、1930年に発見されて以来、数々のSFドラマで、「さいはての惑星」として描写され、天文ファンのロマンを掻き立ててきた冥王星は、ついに、惑星としての「76年の歴史」を終えたのである・・・
このニュースは、思いのほか、大きな反響を巻き起こした。ふだん、天体などには興味を示さない人々でさえ、今回の天文学者たちの会議の行方には、異常なほどの関心を示したのだ。おそらく、かなり多くの人が、表舞台から抹殺されそうになる冥王星に対し、心情的な理由で、声援を送っていたのではないだろうか。
自分も、当初は、やはり冥王星には、惑星の地位にとどまってほしいという気持ちがあった。ただ、冷静に考えてみれば、いずれこうなることは、避けられない運命だったとも言えるだろう。
近年、天体観測の精度は、飛躍的に向上している。従来、太陽系を周回する天体は、惑星(planets)+小惑星(asteroids)+彗星(comets)のいずれかに分類すればよかったが、1990年代以降、この枠組みではとらえきれない小天体が、続々と発見され始めたのだ。
実は、発見以来、「惑星」として分類されていた冥王星も、他の惑星と比べると、大きさ、材質、軌道などの面で、特徴が大きく異なる。むしろ、最近になって数多く発見されている、海王星以遠の小天体群に近い・・・ ということで、いずれは「政界再編」ならぬ「星界再編」を考える必要に迫られていたのである。
今回の会議では、従来のカテゴリーに収まりきれない天体を、新たに「dwarf planets」(矮惑星? 正式な和名は未発表)というグループに分類。その先駆者的な位置に、冥王星を抜擢する、という決断を行なった。つまり、考えようによっては、冥王星は「左遷」されたのではなく、「栄転」したということになる。
物事、終わりがあれば、始まりがある。冥王星の、「太陽系第9惑星」としての歴史は終わりを告げたが、新勢力「矮惑星(?)の旗手」としての新たな歴史が、これから始まるのだ。