空飛ぶ自由人・2

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映画『ホーリー・トイレット』

2023年03月11日 23時00分00秒 | 映画関係

[映画紹介]

「フォール」「#マンホール」に続く、
絶対絶命の状況からの脱出を描く作品。
こういうのを「ワン・シチュエーション・スリラー」といって、
既に一つのジャンルとして確立しているようだ。

で、今回の限界状況は、トイレ

建築家のフランクが目を覚ますと、
そこは、横倒しになった工事現場の仮設トイレの中。


フランクは頭部を負傷して意識が飛んでおり、
状況が飲み込めない。
しかも、右腕が鉄筋に突き刺さっており、
身動きが取れない。
外から聞こえるのは、
何か式典が行われているスピーカーの音声。
どうやら、リゾート施設の建設現場で、
起工式のようなものが行われているらしい。
そこは、バイエルン郊外にある再開発地区で、
旧家を爆破処理して、新たなリゾート施設を建てる計画のようだ。
爆破処理の専門家ボブが緻密な計算で邸宅だけを爆破する準備を整えていた。

式典の音声から分かったのは、
前の建物が解体される際、
トイレの周りに大量のダイナマイトが仕掛けられ、
午後2時丁度に爆破が実行されるらしい。
あと34分しかない。
大声をあげても、外には届かない。
身動きできない状況で、どうやって爆破を止め、
脱出できるのか。

フランクは仮設トイレの中の手足が届くものを駆使して、
外部との連絡を取ろうと奮闘する。
救命箱の中にあるもので止血したり、
ガムを噛んで折り畳み定規の先につけてモノを取ろうとしたり、
汚物の中に落ちたスマホを引き寄せて、
恋人と連絡取ろうとするが、うまくいかない。
ウサギを利用して爆破を止めようとしたりもする。
次第に分かってきたのは、
友人の次期市長のホルストの陰謀にはまっているようなのだ。
そうしている間に、時間は刻一刻とたっていく・・・

日本でも、トイレの前に立てかけた物が倒れて
トイレのドアを塞ぎ、閉じ込められるというのが実際にあった。
ただ、閉じ込められただけでは映画にならないので、
じきに爆破される、という仕掛けがミソ。
リゾート施設の出資者がタケシという日本人で、
式典で「君が代」が歌われるなどというくすぐりもある。
最後にフランクが放つのも、日本語。

最後の方で警察と連絡が取れて救助が来るが、
それをホルストが阻止しようとする。
そこからは、怒濤の展開で、
次々とどんでん返しが起こる。
恋人のマリーも駆けつけて、中に閉じ込められる。
最後にフランクが取った方法は・・・

やり尽くした感のあるワン・シチェエーション・スリラーの中でも、
まだ、こんなアイデアがあったか、
という驚きと、
そのワン・アイデアで90分持たせる仕掛けが豊富。

短編映画などを作って来たルーカス・リンカーが監督・脚本を務め、
トイレ内だけでストーリーが展開するユニークな設定は
ブリュッセル国際ファンタスティック映画祭などで話題を呼んだ。

汚い、臭い、痛いの三拍子揃った、
ワン・シチュエーション・スリラーの快作。
ただ、想像力が豊か過ぎる方、潔癖症の方は観ない方がいい。

5段階評価の「4」

ヒューマントラストシネマ渋谷で上映中。

なお、上映劇場のトイレが↓のようになっており、

この映画のポスターやら
トイレ使用時の注意喚起のチラシが沢山貼ってあったのが笑えた。

ドイツ語原題の「Ach Du Scheisse !」、
英題の「Holy Shit !」は、
ともに「クソッタレ」という意味。
日本語では、相手を罵倒する言葉がおとなしい。
せいぜい上に書いた「クソッタレ」とか、
「こん畜生」とか「この野郎」とか。
バカ、アホ、ブスとか。
英語で言う「サバナビッチ」は直訳すると、「売春婦の息子」(son of a bitch)。
すごいことを言うものだ。
「マザー・ファッカー」は、
母親とナニするヤツ。
これもすごい。
「アスホール」は「ケツの穴」。
昔、ラスベガスで、他の車と接触しそうになった
タクシーの運転手が
「アスホール!」と怒鳴るのを聞いて、
ああ、生アスホールを聞いたと、
感慨深く思ったものだ。