[映画紹介]
途中までは面白い。
窪司朗は「くぼ心理療法室」という診療室を経営している心理療法士で、
主に催眠を使って児童虐待の被害者や加害者のメンタルケアをしている。
5年前、家族で遊園地に行った帰り、
居眠り運転の暴走トラックに突っ込まれ、
家族が乗っていた車は大破した。
司朗は足に障害が残り、
母・繭子は植物状態になり、病院で眠ったまま療養を続けている。
9歳の妹の月(るな) は、顔にひどい火傷を負ったため
仮面をつけて生活している。
花だけは無事だったが、
自分が「遊園地に行きたい」とさえ言わなければ、
こんな事故に遭わなくてすんだのにと、
自分を責めずにはいられなかった。
診療室の前に一人の少年が現れた。
少年は幼い頃にくぼ診療室で花と出会い話したことがあると言った。
少年の名は四井純(よついじゅん) 。
純の母親・理沙はいつからか感情も思考も全て失い、
まるで抜け殻のようになってしまっていた。
純は街で母のように抜け殻になった人間を何人も見ており、
なぜこの街にこんなにも奇妙な症状の人が多いのか、疑問を持っていた。
ある日、司朗が「お母さんが目を覚ました」と繭子を連れて帰ってきた。
5年ぶりの一家団欒が嬉しいはずなのに、
花は違和感を感じていた。
顔は似ているが、どうも母とは思えない。
花はソファで横になる繭子を見て、
衝動的に目の下のほくろに触れた。
指でこするとほくろは黒いシミのように広がった。
その瞬間、目を覚ました繭子は目を見開き
眼球を∞マークのようにぐるぐると動かした。
「∞」は司朗が催眠療法を施すときに指先で描くマークだ。
この場面は、ちょっと不気味。
花と純が一緒に市役所に行って窪家の戸籍謄本を取ると、
妹の月は死亡したことになっていた。
では、あの子は一体誰だ。
対決することを決意した純は、
一人で司朗を訪ねた。
司朗は純の母がかつて自分の患者だったことを告げると、
ウサギを純に抱かせ、目の前で∞を描き始めた。
その日以来、純は変わってしまった。
花は母が入院していた総合病院に向かった。
なんと、病院の一室に繭子は植物人間のまま眠っていた。
花は純の家に向かい、そこで花が見たのは、
母親同様、脱け殻のようになっている純の姿だった。
一体、家にいる母親と妹は何者なのか。
純が脱け殻のようになったのは、何故なのか。
そもそも、父親がほどこしている「退行催眠」とは一体何なのか。
等々の謎が散りばめられる。
で、途中までは面白い。
こういう映画は、それらの謎のその真相が分かった時、
二つの着地点がある。
一つは、ああ、なるほど、そういうことだったのか。
あれは、そういう意味だったのか。
そうか、なかなか上手にだましてくれたな、
という、及第点。
もう一つは、えーっ、いくらなんだって、それはないだろう。
そんなこと、科学的にも法的にも不可能だろう。
なんだ、オカルトの話だったのか。
という落第点。
この映画の場合、後者だ。
いくら司朗が退行催眠の達人だとしても、
それは全く無理だろう。
まして、最後に、あの動物まで持ち出すとは・・・
「ヒプノセラピー(催眠療法) 」は現実に行われている治療法で
「年齢退行療法」「前世療法」「悲嘆療法」などが実際に存在するというが、
動物にまで拡大するのは無理筋。
謎が解けても、
あの家族が一家を持続するのは不可能。
法的にそれが許されない。
むしろ、真実が明らかになったことで、
一家離散となった方が納得がいく。
疑似家庭の時の方が幸せだった、という皮肉な結末でもいい。
まあ、言うだけ野暮だが、
観客は料金を支払っているのだから、
納得させなければ、時間と金を返せとなる。
タイトルの「この子は邪悪」の意味は、最後に明らかになる。
それにしても・・・
「TSUTAYA CREATORS’ PROGRAM FILM 2017」準グランプリ作品を映画化したもの。
監督・脚本は片岡翔。
出演は、南沙良、大西流星、玉木宏ら。
5段階評価の「3」。
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