茶の湯 徒然日記

茶の湯との出会いと軌跡、お稽古のこと

続きお薄

2007-02-11 19:13:51 | 茶事
 続きお薄という言葉は、大学茶道部時代から耳にしていた。表千家の先生が卒業生茶会などで濃茶席に入られると続きお薄になって、長々と席が続き、終わらなかったことが時々あったのだ。先生にしてみれば、学生達とのひとときを少しでも長くと思われてのことだったのだろう。一方で席を運営する幹事は、時間が押してヒヤヒヤしていたのだが。今や懐かしい思い出。
 私が続きお薄を点前としてするようになったのは茶事を意識するようになってからで、まだつい最近のことである。

 続きお薄とは、茶事の中で行われる応用点前。通常の茶事は炉の場合、初炭→懐石→濃茶→後炭→薄茶、風炉の場合は、懐石→初炭→濃茶→後炭→薄茶と進みますが、夜咄の茶事や朝茶事といった時間を短く行う茶事では、濃茶点前の途中で亭主が挨拶をして後炭を省略して続けて薄茶を差し上げることがあり、これを続き薄茶と呼びます。
 亭主の挨拶は場合によってになりますが、例えば
 「時が移りましてはご迷惑になりますので、このまま続けてお薄をさしあげたく存じます。」という感じでしょうか。夏に行われる朝茶事であれば、日が高くなると暑くなってきますし、冬に行われる夜咄茶事であれば、遅くなると夜更けて足元も帰りも危なくなってきます。亭主はそれに配慮するのです。
 夜咄の茶事や朝茶事以外でも、客から続き薄茶を所望することもあります。これは、亭主に手間をかけさせないようにとの客の配慮からで、炭の具合がいいのを見て後炭を省略して続きお薄ではいかがでしょうかと挨拶をするものです。
 この場合、もちろん亭主は省略しては折角いらして頂いた客に失礼にあたるとの思いから一端辞退しますが、客がそれでもと勧めればお言葉に甘えてお薄を続けて差し上げますというようになります。

 茶事に限らず茶道の所作には一定の決まりがあり、私達は日々それを切々と学びます。しかし、それは基本として学ぶものであり、実際は席の様子を見て臨機応変にやり取りが行われるもの、その場に応じて動けるようになる為に学ぶのだといつも先生はおっしゃいます。何事も基本知識がなければ、いつか来るべき正式な場所で、スムーズな動きや心くばりができるようにはならない、更に、何度も正式な場所を経験することで、より臨機応変な対応ができるようになるということです。
 続きお薄も夜咄茶事や朝茶事で行われるという基本的な決まりがありますが、それは絶対ではなく、席の様子で客が所望してもおかしくないのです。この見極めや対応が亭主や客の精神性、人間性を表すということになりますでしょうか。

 このことは茶道に限らず、仕事や人間関係など、全てのことにも通じると思います。仕事にも基本ややり方というものがあり、新人の頃は言葉で教えてもらうだけでなく、先輩の動きややりとりを見てひたすら学ぶことから始まります。やがて自分なりの動きができるようになり、ひいては客とうまくコミュニケーションがとれるようになり、信頼を得、仕事をスムーズに回すことができるようになります。基本の動きができるようになると、突発的な問題が発生した際も冷静に対応することができるようになります。
 やはり何事も経験すること、基本的な知識や所作を身に付けることが大切だということを茶事という流れを知るに至って実感しました。
 
 社中にて行われる夜咄の茶事で、僭越ながら私は続きお薄をさせていただくことになりました。大先輩の中での続きお薄、緊張ですが、貴重な機会を与えて頂いたことに感謝して、その日まで精進したいと思います。
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16 コメント

コメント日が  古い順  |   新しい順
夜咄の茶事 (修学院小習)
2007-02-11 23:12:46
夜咄の茶事、わたしも最近させてもらいました。幽玄な気配はなかなか経験できひんもんですけど、辺りが暗ろうて、炭を取る時などよう見えへんで往生しました。m-tamagoさんでしたら、きっとあんじょうしはることやと思います。また、ご感想など聞かせてください。
良いお時間を。
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そういえば、、、 (ゴマたん)
2007-02-11 23:39:21
続き薄茶、よく耳にします。お客様に対する心遣いなのですね。先生のお話、そのとおりだとうなずきながら読みました。
お茶をやっていると「想像力」がつきますよね。あれがああなってるから、こう動こうとか、、これは日常でも非常に役に立つことと、感謝しています。

夜咄のご亭主をされるのですね。やはり12月なのでしょうか? たまごさんなら普段からお勉強なさっているのですし、しっかり勤め上げられると思います。がんばってくださいね♪
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続き薄茶 (雨点)
2007-02-12 08:54:01
続いて お薄を!
シンジラレナ~~イ!

これって  ありそうですが お茶(お茶会)をする者の心持ちから考えるとしてあり得ない 手続きです。
  
夜咄 朝茶事  約束事  であれば可能でしょうが

ふつうにお茶事に伺ってはあり得ない!

お茶事に およばれ  して ご亭主に
時間がないので 続いてお薄 頂戴!
そりゃぁ  ないっしょ!

お茶事 お客さん招いて 続いてお薄  差し上げます   ありえない!


ついつい  楽しくって  話し込み  長くなる
それはあるでしょう

利休さんと藪内剣中   剣中さんの夜咄 に伺って
話し込み  そのまま 朝茶事になった 逸話がありますが


となると 続き薄茶はない!


現代人忙しいから 時間を詰めて 続いてする


皆さんがお客さんとして招かれたら  万全を配して行くはずです  後炭の風情もなく お薄ですか?

ご亭主 お客招くため  ばっちり 腹くくって準備している  それに対して 続いては  ないでしょう

また  逆も然り

現代人  何か  履き違えてはてはいないでしょうか?
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臨機応変 (ゆりかもめ)
2007-02-12 10:36:11
臨機応変に対応できる心構え、なかなかできないですけど、とても大事なことですね。
立派な先生は、そういう心構えができているので、本番でも余裕を持って心豊かなお茶会ができるのでしょう。

先日、藪内流の家元での初釜に行ってきました。
始めにお濃茶をいただいて、その後に引き続いてお薄点前でした。
時間が長くなるので、足がしびれました・・・。
まだまだ修行が足りません。

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続き薄茶 (チャチャ)
2007-02-12 11:54:53
続き薄茶って、正客は拝見のご挨拶があるから、次客が先にお茶をいただきますよね。拝見も、まとめてでしたね。似ているお点前があって、本当に、頭が混乱します。

こういったやり方もあるというのを知ることも、面白いです。 だって、私後炭 苦手なのです。
ゆっくりするという点では、後段付きって、どうするのかしらね?やはり、お酒なのかしら?

続き薄茶は、未熟な私にとって、ありがたいお点前です。
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続き薄茶 (みかん)
2007-02-12 19:16:22
最近このお手前を知りました。
次回の稽古茶事が続き薄茶なんだそうです。
流れは知っていたのですが、なるほど、続き薄茶にはこういう意味があったのですね。
時間短縮、という認識が強かったのですが、決まりごとにとらわれ過ぎてはせっかくの楽しい茶事に水を差してしまう場合も確かにあると思います。
もし無理して体調崩したりなんかしても大変ですしね。
気持ちよく過ごすためにも臨機応変に対応することは必要だと思います。
そのためには、まずいろんなお手前をしっかり学ばないといけないのですが^^;
茶道にはたくさんのお手前がありますが、それは道具の扱いの違いだけでなく、ケースバイケースの対応の仕方で増えた部分も多いのでしょうね。
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続き薄茶 (グランマ)
2007-02-13 16:08:53
皆様のご意見興味深く読ませて頂きました
茶事の形として季節と一体になったもてなしの仕方と
捉えれば非常に合理的だと思いますが?

表では夏の「朝茶」冬の暮れの「夜咄」に続き薄でお持て成しの習いになっています。いつの日かUPしたいと思っています.tamagoさん亭主役頑張って下さい

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悲喜交々? (飛翔)
2007-02-13 18:15:09

 続きお薄の点前自体、嫌いではありません。
ただ、茶器の入れ替えがしっかり身についていないので、好きと言えない辛さ^^;

 苦手な後炭の点前をしなくていいという点では、未熟な私も救われますが、
予定に無い突然の事態が生じた時、時間を繰り上げて早く茶事を終わらせた方がいい時の判断ばかりは、未熟者ではさらりとできないでしょうね^^
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夜咄の茶事 (m-tamago)
2007-02-13 20:45:33
修学院小習さんの夜咄茶事のお話読んで、幽玄な気配が感じられて益々社中の茶事が楽しみになりました。
ありがとうございます。
確かに暗くて手元がおぼつかなそうですね。抹茶をこぼしたりしないように気をつけなければ。。。。
楽しむ余裕があるか微妙ですが、楽しんできます。

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想像力 (m-tamago)
2007-02-13 20:52:02
ゴマたんさん、こんばんは。

おっしゃる通り、お茶をやっていると「想像力」がつきますね。色々なことに目が行くようになるというか。

夜咄、最近はうちの社中は手分けしてそれぞれお勉強する形式なので、私は続きお薄の部分をさせて頂くのです。炭などは他の方がなさいます。夜咄は極寒期に行われるので、何月という決まりはないのでしょうが、二月が多いようではあります。
夕刻から始まる茶事とは初めて、暖かくもてなす為の工夫もたくさんあるらしく、楽しみです。
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