茶の湯 徒然日記

茶の湯との出会いと軌跡、お稽古のこと

三嶋暦と三島茶碗

2007-01-30 22:56:45 | 茶道マメ知識
 初釜で社中の方から三嶋暦を頂いた。お正月、初詣に出かけたついでに、社中の皆にもと購入してきて下さったのだ。茶の湯でよく使われる三島茶碗は三嶋暦に似ていることから名づけれた茶碗だと聞き、そのルーツである暦がどんなものなのかと気にはなっていたが、初めて手にすることができ、とても嬉しかった。

 三嶋暦についての詳細は以下添付HPをご参照下さい。知らないことばかりで勉強になりました。
三嶋暦に関するHP
http://www.geocities.jp/mishimagoyomi/index.htm
http://www3.tokai.or.jp/mishima-chawan/3.html

 詳細はHPを読んで頂くことにして、軽くまとめます。
 三嶋暦は三島神社(現三嶋大社)の下社家河合家が編暦、奈良時代の宝亀年間( 778年頃)、河合某が伊豆の国三島に土地を賜り、山城(京都)の国より下向し、賀茂姓を名乗り、天文台を設けて作暦したのが始まりという。地方暦だったにもかかわらず、重用され、江戸時代には徳川幕府は三嶋暦を公式のものとし、毎年11月に三島から河合家の当主が献上暦を持って江戸城へ参内したとも言われる。
 江戸初期の三嶋暦の販売テリトリーは、伊豆、相模、武蔵、甲斐、信濃、駿河、遠江とかなりの広範囲、幕府が天文方を設置するに至って後期は伊豆、相模と限定された。記載内容は干支、二十四節気、七曜、六曜、五行、八将神等30以上に及ぶ。
  明治維新と共に徳川幕府は全ての権力を失い、編暦は文部省の管轄となり、明治六年改暦され、太陽暦となったが、明治15年までは河合家も弘暦商社として専売権があった。16年からは伊勢の神宮司庁から頒布することとなり、700年に及ぶ頒暦に終わりをつげた。三嶋暦師河合家も50代で廃業、51~53代と公職、サラリーマンと続いて現在に至る。こんなに長く広い地域で重用された暦も珍しいのではないか。いつか三嶋大社と三嶋暦師の館を訪れたい。

 今回頂いた平成十九年度の三嶋暦をめくると、上から新暦日付、旧暦日付、月の形、日の干支、七曜、六曜、休日名・二十四節気・雑節、そして最後に三島の七十二候と行事、月の出入り時刻が書かれていました。
 中でも三島の七十二候が興味深いです。一月から、ロウバイ咲き始める、初雪一面を覆う、雪朝と夕に降る、水仙咲き始める、ネコヤナギ芽がふくらむ、ホトケノザ蕾をつける、朝零下五度二分になる、ナズナ花開く、梅一輪咲く、ふきのとう顔を出す、春一番、セキレイ初めて見る、梅満開になる、沈丁花咲き始める、ハクモクレン咲き始める、うぐいす鳴く、ミモザ満開、雷鳴りあられ降る、桜開花始まる、草木萌えだす、イチョウ並木芽吹く、たけのこ顔を出す、黄砂到来大氣霞む、肩平満開の山桜で埋まる、卯の花咲き始める、藤の花満開になる・・・・・といった具合に続いていく。読み進むと季節と自然の変化をつくづくと感じることができる。
 暦とは、今は日付を知るだけのものになっているが、日本人の生活に根ざしたものであったのだなあと思った。

 さて、三島茶碗のルーツは高麗(朝鮮)茶碗。日本には、室町末期(1550年頃)に伝わった。作り手に価値あるもの、美の探究といった意識はなく、李朝期に造られた一般雑器の素朴さや侘しさを日本人が見出し、愛用したものである。薄鼠色の粘土に箆やスタンプで文様を描いた上に白土や白泥で化粧し、透明釉をかけて焼いた紛青紗器(ふんせいさき)とよばれる茶碗。茶碗に押された文様が三嶋暦の記号のような丸文字やヒゲ文字によく似ていたため、当時の茶人たちから「三島手(みしまで)」、「暦手(こよみで)」と名づけられた。技法としては 象嵌、 印花、 刷毛目、線刻、 掻落とし、 粉引 、 鉄絵など。
 三島茶碗の呼称の由来にはこの「三嶋暦説」以外に、昔、貿易の基地だった島が三島だった、高麗時代に壱岐・対馬・五島を総称して三島と呼んでいてこの島を経由して入荷したといった「地名説」、三島は古い朝鮮の呼名だった為、朝鮮産の茶碗の一括して三島と呼んだという「語源説」、李王朝が支配指導した磁器所で造らせた作品に官庁名や特徴ある家紋を入れた特製品を朝鮮の異名であった三島と呼ばせたとする「朝鮮官窯説」など色々。
 三島茶碗にはかわいらしさ、温かみがありつつも、シャープでシンプルな雰囲気もあって、私もつい手にとってしまいます。技法によっても雰囲気が異なるところも魅力です。

 歴史ある三嶋暦の文字や文様を改めて見て、自然に根ざした温かみのある三島の七十二候を読んでいたら、朝鮮から伝わった素朴な茶碗との繋がりがなんともしっくりときて、益々三島茶碗のファンになってしまった。

暦の歴史
http://blog.goo.ne.jp/m-tamago/e/374c7148d8b51a69adabbf7361c8de0d

太陰暦太陽暦
http://blog.goo.ne.jp/m-tamago/e/1396fe5b09532c69d6c08b88387bfa60
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10 コメント

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Unknown (とく)
2007-01-31 02:14:46
三島茶碗の名前の由来については今まで考えもしなかったな~f(^^;)
三島暦というのも知らなかったです。
いい勉強になりました。ありがとう~
ちょっと技術的な事を言えば鉄分の多い土だから粘土の状態では茶色系なんです。
透明釉を掛けて還元で焼くと釉薬の掛かった所は薄鼠色になるんです。
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三島茶碗って (みかん)
2007-01-31 13:38:02
暦からきているんですね~知りませんでした。
素人の私は菊花の模様が並んでいると三島だって思う位で…
こんど三島茶碗見るときは暦をイメージして見てみます。
七十二候、面白いですね。
近頃はなかなか注意をしないと季節を直に感じるのが難しくなりました。
食べ物の旬も判らなくなっている人、多いのではないでしょうか。
こういうのは忘れたくないものですね。
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三島手茶碗 (グランマ)
2007-01-31 17:06:17
三島暦のHPを見て手に取りたくなり注文してしまいました。幸い在庫があるとのことで首を長くしているところです。一昨年三島手茶碗を色々作り、8月担当の茶会で数茶碗として使いました。やみくもに印花を押していったのですが、tamagoさんUPの暦の知識があったらよかったな~と思っているところです
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Unknown (kazimodo)
2007-02-01 02:07:02
 三島暦の話はむかしどこかで聞いたことがあったんですが、なかなか思い出せません。

 茶の湯の茶碗から三島暦にたどりついたそうですが、なんでもそうなんでしょうが、ひとつのことを突き詰めてゆくと、あるところからパット突然視界が開けることがあるとおもうのですが、サイトで見させていただいた三島暦、とても素敵なもので私も注文したい誘惑に駆られました。

 でも恐らく江藤淳さんの講義のなかで、漱石の話をしていたときにでてきたような気がしますが、なんだか定かではありません。多くの人が密かに着目しているものだと思います。貴重なきっかけを頂きました。 
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由来 (m-tamago)
2007-02-03 10:00:31
とくさん、おはようございます。

三島茶碗、三島暦、私もお茶を習って先生から聞いて知りました。それぞれの歴史を知ると楽しいです。

>ちょっと技術的な事を言えば鉄分の多い土だから粘土の状態では茶色系なんです。
あー、ありがとうございます。粘土が鼠色ではなくって、焼くことでその色が出るのですね!さすがプロ、教えて下さってありがとうございます。
釉薬や火、空気の具合で変化する、土って魅力的ですね。
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三島茶碗 (m-tamago)
2007-02-03 10:03:42
みかんさん、おはようございます。

今は暦の字と似てない文様もたくさんありますけど、暦を見ていると独特な字体は趣があって、いいですよ。

>七十二候、面白いですね。
>こういうのは忘れたくないものですね。
本当に。周囲にある誰にでもわかるような事象が書いてあって、とても温かい気持ちになりました。
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三島手茶碗 (m-tamago)
2007-02-03 10:06:25
グランマさん、おはようございます。

>三島暦のHPを見て手に取りたくなり注文してしまいました。
まあ、そうですか!なんだかご紹介のしがいがありました。

数茶碗、お手製ですか。素敵ですね。
今度ブログでご披露下さいませんか?
それで一服頂きたいものです。
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三嶋暦 (m-tamago)
2007-02-03 10:11:36
kazimodoさん、おはようございます。

>ひとつのことを突き詰めてゆくと、あるところからパット突然視界が開けることがあるとおもうのですが、
本当におっしゃる通りと思います。今までは何気なく見ていた茶道具も、よく考えると由来があり、意味があり、それをひとつずつ知ると点が繋がって線になっていくんですね。今は新しい発見が楽しくて仕方がありません。

>でも恐らく江藤淳さんの講義のなかで、漱石の話をしていたときにでてきたような気がします
kazimodoさんは博識でいらっしゃいますね。茶道とは違った観点から三嶋暦や三島茶碗についてお話を伺いたいものです。
 
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三島暦 (fairy)
2007-02-07 01:16:13
三島暦の七十二候は、二十四節気のようなズレがないのですね。暦をめくると、その季節でなくても、思いを馳せ、自然を楽しむ事が出来そうです。
茶道具には、いろいろな意味があるのですね。興味は尽きませんね。
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三島暦 (m-tamago)
2007-02-07 20:57:11
fairyさん、こんばんは。
本当に、三島の七十二候は、言葉を読むだけで季節に思いを馳せ、楽しむことができました。
茶道具には色々ないわれがあって、まだまだ感動すること(=知らないこと)はたくさんありそうです。
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