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第七場
ジェローム、ヴィオレット
(ヴィオレット) ジェローム!… 彼女は、あなたがここに居るとは、わたしに言ってなかったわ。
(ジェローム) 彼女は、ぼくが居ることを、きみに予め知らせる必要がなかったのではないだろうか… きみがここに居ることを、彼女は知っているのかな?
(ヴィオレット) わたしをここに入れてくれた召使が、わたしに教えてくれるべきだったわね。(沈黙。)
(ジェローム) きみは、自分がぼくにした不都合に気づいているかい?
(ヴィオレット) わたし、ほかにしようがなかったのよ… 起こってしまったことの後では、どうしようもないじゃないの。
(ジェローム) きみが何のことを当てこすっているのか、理解したいものだよ。
(ヴィオレット) それに、あなたは、すべてはこうして、より良くなっていることを認めなければならないわ… (ヴィオレット、部屋を示す。)あなたの言うことをわたしが言葉通りに取っていたとして、あなたが放棄しなければならなかったはずのもののことを、少しは考えてちょうだい。わたし、あなたに、ものすごい貢献をしたわ。
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(ジェローム) そう思っているのかい?
(ヴィオレット) そしてその上に、わたしはあなたに結構な役を残したわ。あなたはわたしに、最も寛大な提案をした。わたしは、それを拒否した。あなたは自分の良心と折り合いをつけている。あなたの物質的生活は何も変わっていない。あなたは、この上に、何を望むことがあるというの?
(ジェローム) それに、ぼくたちの愛を、か? ヴィオレット。
(ヴィオレット) このどんでん返しでは、愛はおそらく生き延びなかったでしょう。愛の断末魔であったもののことは、考えないほうがよいわ。
(ジェローム) 今は? 愛はどうなった?
(ヴィオレット) わたしたち各々が、答えを見いだすのよ、自分の心の底で。
(ジェローム) きみは、自問するなら、何を理解する?
(ヴィオレット) どうしてアリアーヌが降りて来ないのか、解らないわ。
(ジェローム) 彼女は自分の寝室に居るんだよ。
(ヴィオレット) この部屋を除いては、すべての部屋が暗く見えるわ。
(ジェローム) 時々、彼女はこうやって灯り無しでいることがあるんだ…
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(ヴィオレット) 彼女、祈っているのかしら?
(ジェローム) 自分を集中させているんだと思う。
(ヴィオレット) なんということでしょう! すべてをやり直そうというのね…
(ジェローム) きみに言っておくけど、彼女はぼくたちの関係をよく知っているよ。
(ヴィオレット) 彼女がそれをあなたに言ったの?
(ジェローム) うん… きみはそれで驚くふうでもないね。
(ヴィオレット) ええ… 盲目でないかぎり、ぜんぜん察さないなんてことはないわ。
(ジェローム) きみは突然、なんてわざとらしい口調になるんだ… ぼくがきみを許せないのは、ぼくの手紙に返事を書かなかったこと、きみの住所をぼくに教えるのを、きみの家の管理人に禁じたことだ…
(ヴィオレット) わたし、自分を信用していなかったのよ… ほかに、自分を守る手段が無かったの。
(ジェローム) さっきは、きみはぼくに答えなかったけれど、きみはぼくをまだ愛しているのかい? ヴィオレット。
(ヴィオレット) 分からないわ。
(ジェローム) どうして分からないんだい?… この六週間のあいだ、気分が悪かったのかい?
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(ヴィオレット) とてもひどく。
(ジェローム) ぼくのせいなのかい?
(ヴィオレット) なによりも、あなたのせいよ。それから、モニクの健康のこともあったわ… あなたは、あの子のことはわたしに訊きもしないのね。
(ジェローム) 分かってる、よく知ってるよ… きみには、すまない…
(ヴィオレット) すまないって… もし、あなたがわたしをほんとうに愛しているなら、ジェローム、ほかに言うことは無いの?
(ジェローム) きみのその娘は、ぼくが大嫌いな男の子供だ。あの子は彼に似ている。もしもぼくがあの子の… ぼくのせいじゃない、ヴィオレット。まさにぼくがきみを愛しているからだ。解ってくれ。愛とは、心地良い付属物と一緒にあるような全き休息の感情じゃない。
(ヴィオレット) それはひとつの病気じゃないのかしら。
(ジェローム) きみはそこから完全に治りきったように、ぼくには感じられる。立派だよ…
(ヴィオレット) わたしは何からも治っていないわよ。
(ジェローム) ロニーに来るなんていう考えも考えだ! まるで、ほかの処では治療できないみたいに! ぼくに近づくためではなかった。きみは、ぼくがここに居ることを知らなかったのだから。(つづく)
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(つづき)想像もつかないことだ… きみは、脈絡のない衝動にしか従わない精神異常者みたいに行為している…
(ヴィオレット) あなたは今、わたしが健康を回復したことを咎めたばかりなのに… 苦情の種にも少しは秩序をつくってちょうだい、ジェローム。
第八場
同上の人物、アリアーヌ
(アリアーヌ) 来てくれてありがとう、ヴィオレット… 来るには、たいへんな努力が要ったことと察するわ。
(ジェローム) まるで、彼女が、おまえに近づくためにロニーを選んだのではないみたいに!
(アリアーヌ) すこし灯りをちょうだい、あなた、頼むわ。ランプを灯して、そこよ、あなたの右のほう。(ジェローム、スイッチを回す。暗がりの中にあったピアノがすっかり明るく現われる。)
(ヴィオレット) でも、アリアーヌ… このピアノは、(つづく)