明日、3月11日が来る。
それぞれに思いを抱えた3月11日。
あの日、あの時間、あの場所、蘇ってくる記憶と恐怖と不安。
3月9日に、東北では大きな地震があり、その日の職場でもその話題でざわついた。
「宮城県沖地震が来る来るって言われ続けてたからね。これで済んだんだったら、まあいいっちゃ」
職場の仲間と、そんな会話を交わした。
その2日後に、あの巨大地震に襲われるとは思いもせずに。
私の家の場合、
ガラスが割れ、食器が割れ、炊飯器が、ポットが、本が、あらゆるものが飛び出しぶつかり、散乱し、
倒れた家具の上を乗り越えて外に出ると、同じマンションの女性がスリッパで飛び出してきて泣いていた。
その時でさえ、あんな大きな津波が沿岸部を襲うことになるのだとは、想像することもできなかった。
沿岸部でも同じように、巨大な揺れに襲われてしっちゃかめっちゃかになった家の中を、
片づけたり、「大きな地震だったね」と近所のひとと肩を寄せ合っていた最中だったかもしれない。
地震→津波 この構図は、もう私達の頭から離れることはないだろう。
あれから一年。
震災後から仙台市内の役場の壁には、「ともに、前へ」という横断幕が掲げられている。
哀しみを乗り越えて町を再建しようとする地元のひとたち、
彼らを支える、全国から派遣された自衛隊の方々や、ボランティアたち。
人間ひとりひとりの手による地道な汗で、
東北は、1年分、たしかに前に進んだのかもしれない。
被害が甚大な余り、その歩みは、遅い。
津波が襲った沿岸部では、今も苦難の只中に。
1万6000人の方が命を落とされ、いまだ行方がわからない3000人余りの人々。
その数の何倍も、哀しみにくれる遺族の数がある。
原発問題の行方も見えない。
事故を起こした東京電力の原子力発電所がある福島では、
いつまで続くともわからない不安との闘いを、いまこの瞬間も、強いられている。
さまざまな立場の違いから、助け合うべき仲間であるはずの日本人同士で、
いがみ合い、傷つけ、傷つけられる場面を、Twitterではたくさん目にした。
震災で助かった命を、この1年の間に落としたひともいる。
東北は、「震災後」だろうか。まだ「災中」であるように思える。
でも、一軒ずつ、瓦礫が片付き、家の中の泥が綺麗になり、そしてまた次の一軒へ。
仮設商店街が各地で開店し、津波ですべて失った商店主たちが立ち上がり始め。
震災から1年、この節目に、日本がもう一度、あの「原点」に立ち返れるといいと思う。
あのとき、死を間近に感じたのは、東北だけじゃなかったはずだ。
報道で、被災地の様子をリアルタイムに観ていた日本中のひとたちが、戦慄したに違いない。
巨大地震で活断層の動きが活発になった日本列島ではもはや、どこにいても、他人事ではない。
地震も、津波も、放射能も。
災害ボランティアの中には、自らも、津波で奥さんと子供を失った人がいる。
そんな状況で、被災した近所の家の泥出しの指揮をとっている。
毎晩、胃痛で目覚め、薬を飲んでいると仰っていた。
被災地だけの力では、疲弊する一方だ。
沿岸部や福島のひとたちに比べれば、私は被災者でもなんでもない。
それは十分わかったうえで、
私なりにも、震災以前の自分が思い出せないくらい、この震災には大きな影響を受けた。
3月11日を前にして、かなり不安定にもなった。
この日、あの時間がきたら、また同じことが、録画再生のように繰り返されるのではないか、という、
根拠のない不安感。
1年経ってもこの状況の中、もっともっと頑張らなくちゃ、どうにもならないのかという疲弊感。
また、ボランティアで泥出しに行った沿岸部で見た情景に、テレビの津波映像が重なり、呼吸困難に。
でも「支援出来る側」であることは、有り難いこと。
これからも、「小さくても、出来ること」をやっていこうと思う。
小さくても、ひとりひとりの力が集まれば、大きい。
ところで、昨春から続けてきた、宮城県の被災犬ボランティアが明日11日で、解散になる。
私は昨日が最終日だった。
春、夏、秋、冬。。。被災犬たちと一緒に四季を感じながら過ごせたことは、幸せだった。
被災犬たちはみんな行き先が決まって、犬も、ボランティアたちも、新しいスタートだ。
通い慣れた動物愛護センターへの道を、来週からはもう、朝、向かうことがないのだと思うと、
ぽっかりと穴があいたような寂しさを感じるけれど、被災犬たちの幸せを見届けられたことは、
犬たちに関わった多くのボランティアたちにとって大きな喜びだっただけでなく、
東北の前進を支える、小さな「一歩」なのではないかと思う。
動物愛護センター以外にも、被災犬の保護施設はあり、
まだたくさんの犬たちが保護されているようだ。
福島にはいまだ保護もされずに、ひとのいなくなった町を走り回っている犬たちがいる。
明日からの1年は、いまよりもさらに一歩、前に進める1年でありますように。
東日本大震災、及び震災関連でお亡くなりになられた方々、動物たちに、
心よりご冥福をお祈り申し上げます。
余りにも大きすぎたショックを癒すには時間が掛かるかもしれません
でも
少しでも前に歩み続けて欲しい
それでは