高千穂神社で夜神楽がある、というので、一度宿に荷物を置いてから再び夜の神社を訪れた。
秋の収穫が終わり、祖母山の頂が初雪に染まる頃、高千穂の村里で、氏神様への感謝と祈りを捧げる祭りが始まる。
各集落で、日中から始まって徹夜そして翌日までかけて、三十三番(曲)の神楽が奉納される。
そうした村の伝統的な儀式である夜神楽を、観光客向けに毎日行っているのが高千穂神社のそれであり、
夜20時から年中無休ということだ。(詳しくは各自お問い合わせください)
ここでは、三十三番の中から、
・手力雄(たぢからお)の舞
・鈿女(うずめ)の舞
・戸取(ととり)の舞
・御神躰(ごしんたい)の舞
の四番(曲)が演じられる。
自分は、卒論で「能」をやったこともあり、神楽や古代日本の神話にもすこしは興味がある。この神楽の内容はというと、
【天岩戸(あまのいわと)にお隠れになった、天照大神(あまてらすおおみかみ)を呼び出す】ために、
いろんな神様がやってきては、岩戸の前で踊ったり祈ったりして、奮闘している、というもの。
【お隠れになる】という説明がまたわかりづらいけど、ようするに『天岩戸という洞窟の中にひきこもっちゃった』ということでしょう。
なんでひきこもっちゃったかというと、アマテラスの弟スサノオが悪さばかりするもんで、ということらしい。
ちなみに、天照大神は女の神様です。やんちゃなスサノオノミコトのお姉さんというわけですね。
ここでの神楽には出てこないけど、スサノオが、「僕が悪うございました、もうしません」と反省した証文(絵)が、
前記事で書いた高千穂渓谷の一角に残っているそうな。(月形日形)
下は、ひきこもりになっちゃったアマテラスを誘い出すために岩戸の前で踊っている鈿女(うずめ)さん。
『日本書紀』によれば実際には、一糸まとわぬ姿で舞っていたようだ、と冒頭の説明で神主さんが話しておられた。
でもアマテラスは女の神様なのに、呼び出すために裸で踊る理由はなんなんだろうか?おおいに疑問。
そして神様たちが、日の丸の描かれた扇子を手に舞っていたので、「あれ?日の丸っていつからだっけ?」と
初めはすこし違和感だったが、日の丸、っていうより、天照大神は太陽神なんである。
古来日本の原始宗教は自然崇拝・精霊崇拝(自然界の森羅万象すべてに神様が宿る、やおよろずの神、の思想)であり、
火にも水にも、山や川、野の花や草木、雲などなんにでも神様が宿ると考えた日本人、
その中で、理由はなんだったか太陽神が天皇家に選ばれて、国旗の日の丸にもなったんで、
そう考えると日本の国旗は太陽でなくても、川とか山とか花、とかだった可能性もあるんじゃないかと思ったり。
あ、まったく間違ってたらすみません。ぜんぜん知りません。ごめんなさい。
それはともかく。「鈿女の舞」だけは能みたいだな、と思っていたら、その通りこの鈿女の舞だけは、能の影響を受けた踊りなのだそうだ。
次の写真は3つめの「戸取の舞」。私は一番これが感動した。迫力に圧倒されて見入っていたので、一番よかったのに、一番写真が少ない。
最後の演目、「御身躰の舞」は、冒頭の説明で神主さんが、「ちょっとHな神楽です」と仰っていた。
実際の夜神楽は日中から夜を徹して行われるので、ちょうどこの舞の頃は夜中の1時2時あたりなのだそうで、
観客が皆、うとうとと、睡魔に引き込まれそうになっている時間帯。そこでこの演目は「目覚まし神楽」ともいえるのだそうだ。
「国生みの舞」ともいい、イザナギとイザナミという夫婦の神様が酒を作ってお互いに仲良く飲んで抱擁しあう。
でも途中で、それぞれが客席に行って、浮気をするというのだ。イザナミ(奥さん)は男性と、イザナギ(旦那)は女性と。
神主さん曰く、「お客さんの協力なしには完成しない神楽です」。
さあ、いったいどんな展開になるのか。
これはですね、実際に高千穂神社の夜神楽を観に行かれてのお楽しみ、ということにしておいた方がいいような気がします。
日本の神様って、なんだかゆるゆるでユニークですね。お姉ちゃんに叱られたり、ひきこもったり、浮気をしたり。
というわけで、夜神楽の巻はこれにてちゃんちゃん。
次回は、天岩戸神社です。
※コメント投稿者のブログIDはブログ作成者のみに通知されます