ここ最近、実家の農作業のお手伝いに行っていました。
その時、祖母から「お地蔵さまの頭巾を編んで」と赤い毛糸を手渡されました。
新品のウール100%、2玉。
手渡された瞬間に心の中で「もったいない」と叫びましたよ~。
こういうのはアクリル100%だよ、ばーちゃん。
でもそんなことを祖母に言っても仕方がないのですぐさま了承。
お地蔵さまは祖母の散歩コースにある子育て地蔵のことで、祖母が毎日のように拝んでいます。
私は子育てをしたことがないから信仰は薄口ですが、まぁご先祖さま達が大切にしてきたものだから尊重しています。
祖母「前々からお地蔵さまの頭巾が傷んできたから作って被せようと思っていたら、誰かが編んでくれてね。でもそれが窮屈そうだから、編んで欲しいんだ」
私「いいけど、大きさとか、形とかどのくらい?」
祖母「じゃあ、お詣りがてら見てきて。前のはふっくらしていて、紺色のポンポンが付いていて…」
いくら説明を聞いても分からないので、1人でお地蔵さまをまじまじと見て来ました。
着膨れてますなぁ、お地蔵さま。
お堂の中にあるので劣化は遅いのですが、子どもが生まれると、男の子なら白い襷、女の子なら赤い襷に名前を書いて奉納します。
私の襷も小学生くらいまでは確認できたから7~8年くらいでボロボロになっていたンでしょうね。
私が生まれた頃までは純然たる農村でしたから、襷をかけるのも地元の氏子さん宅の子供の分でしたからこんなに着膨れしていなかったなぁ。
※このお地蔵さまは神社の敷地内にあります。
今はペットが亡くなってもこのお地蔵さまを拝む方がいらっしゃるとかで、お花やらいろいろなモノが奉納されています。
さて困った。
お堂と言ってもちっちゃいので、潜り込むように身体を入れて撮影しましたが、賽銭泥棒と間違われるのがイヤなので、指計りでお地蔵さまに顔の幅だけ確認。
直接お顔を触るわけにもいかず、だいたい幅12~13センチくらいかと思われます。
せめて頭周りのサイズが知りたかったのですが諦めました。
祖母はこのお地蔵さまの頭巾がピタッとしているのが窮屈そうに思えて仕方がないみたいです。
私もお地蔵さまの頭巾なんて編んだことがないのでどんなのがいいかよくわかりません。
祖母にタブレットに映し出したベレー帽の画像を見せて、こんな感じでいい?と尋ねましたが「お前さんに任せる」とのこと。
あー、祖母はもう興味を失ったな、と。
手持ちに毛糸玉があるうちは祖母も心に引っかかっていたのでしょうけれど、毛糸玉が自分の手を離れたら、そこで安堵しちゃったンです。
95歳に集中力を持って生きろと言うのは酷です。
あとは、私が自分で考えて、祖母の意図を汲み取って作るしかありません。
とりあえず2個編んでみました。
右側が棒編みでポンポンつき、ゆったりサイズ。
左側がかぎ針編みで、紺色の玉編みつき、ピッタリサイズ。
お地蔵さまの頭巾の編み図なんてモノは存在しませんから、人間用のベレー帽の編み図を利用しました。
今回のお地蔵さまは、伝承では18世紀後半に安置されています。
制作者は不明ですが、近隣の状況から矢倉沢往還(大山街道)の宿場だった、溝口村か江田村の石工あたりが制作していると思います。
そうなると、江戸市中の職人よりは複雑な造形は作らないだろうから、お地蔵さまの頭部は円筒形のはず。
直径12~13センチくらいとして、頭周りは40センチ前後。
成人女性の頭周りは57センチ前後なので、ベレー帽の編み図からだいたい7掛けで作ればいいことになります。
もう古いお地蔵さまで目鼻立ちが判然としないので、この際、目深になろうが浅くなろうがそれほど気にせず編んでみました。
次回、実家に行ったら祖母に渡そうと思います。
そうそう、内側にでも「奉納」と奉納日の文字を刺繍しておこうと思います。