数学教師の書斎

自分が一番落ち着く時間、それは書斎の椅子に座って、机に向かう一時です。

みすず書房

2022-03-22 09:46:57 | 読書
 前回アインシュタインの来日に貢献した、出版社の改造社は戦前では岩波書店と双璧をなす出版社であったが、今は存在しない。10年ほど前、京都の百万遍近くの古本屋で店頭に積まれていた「改造」の何冊かを目にしたが、今思えば買っておくべきだったかなと思うことがある。なぜ、そんな改造社が今はないのか?それが氷解したのがこの本を読んだからです。
実はこの本は数年前に買ってあったのですが、積読状態で、いつか読んでみたいと思っていたものの、少し厚い本でもあるので、いつしか本棚に眠っていました。いつ買ったというと
この岩波茂雄の伝記とも言える本を読んだ時でした。信州長野に生まれた岩波茂雄に続いて、みすず書房の創業者、小尾俊人も同じ信州長野の生まれで、信州長野には文化、教育という視点からも注目すべき出版人が排出されていることに気がついたのです。
 みすず書房は戦後の復員したこの小尾俊人によって創業されたが、「昭和24年の出版恐慌」によって、改造社等の戦前からの出版社も倒産の憂き目を被ったのである。そんな動乱の最中に創業して今日までその独自の立ち位置を続けている出版社に岩波書店ほど私自身には関わりがなかったのは、その出版物が人文系のものが多かったのが一番の要因です。物理では、朝永振一郎などのものもありますが、数学関係では少なかったと言えるでしょう。
 唯一読んだのは、
です。白い表紙がみすず書房の印象ですが、改めてその装丁のデザインもよく見るとどの本もしっかり考えられていると思います。この「ガロアと群論」は数学書というより、詩集といったほうが良い本ですが、少し気になっていたのが、訳者が元高校の数学の教師だった人で、買った当時は何故かな?と思っていました。そう思われる人もいるかと思います。しかし、「小尾俊人の戦後」を読んで、その疑問を解くヒントをもらった気がします。訳者の「浜稲雄」氏は信州長野で高校の数学の教師として、岡谷工業高校や諏訪清陵高校で教鞭をとられていて、最後は岡谷東高校の校長を務められた方です。そこに、小尾俊人との関係性があるように推測しますが、ご存知な方はいますか?
 さて、既刊のみすず書房の本を本棚で探していると、表紙が白でなかったこともあり、みすず書房の本だとは思っていなかった本で、しっかり読んだ本として、

があります。数学者が片手間で書いた数学史の本ではなく、数学史の専門家でありながら、物語しか書かないような数学史家ではない数学もしっかり修めたという著者の熱気を感じる著作で、こちらも引き込まれる思いをした本でもあります。

 さらに、少し本棚を覗いてみると、
これもみすず書房の本ですね。数学教育では有名なポリアの本です。他にも「MODERN ALGEBRA」で有名なファン・デル・ベルデンのこんな本もあります。

 そして今読みかけの本はというのが、以下の本で数学書ではなく、ゆったりした気分で読めますね。
世代的に近いので、同じ目線で社会を見てきたことに、共感を覚えてしまう自分がいますね。

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