宮城県産「ゆきちから」の玄麦を選んだことや、なぜ石臼になったのかは、既に書かせていただいておりますが、これからそれぞれのことについてもっと詳しくお話ししたいと思います。
まず石臼について。
このインターネットで情報を得られるという社会のシステムがなかったら、どこで石臼が販売され、各社どのような違いがあるのか、見当もつかず、石臼で挽いた玄麦でらーめんの麺を作るという考えに至らなかったはずです。
それだけ情報は貴重であり、ネット社会のおかげで「食」の世界も進化してきていると思います。
「石臼」を調べていくと、宮城でもかつて製造されていたのですが、3・11の震災で大打撃を受け、現在は納入先のメンテナンスしかしていない、ということがわかりました。
もともと石臼は一般的ではなく量産してどうかなる商品ではないため、小さな町のこうばとかが、細々と受注生産しているケースがほとんど。
しかも「蕎麦」のための石臼であって、麦や玄麦を挽けると謳っている石臼はないのです。
そんな折、ある石臼の販売会社に問い合わせてみると、なんとお店まで電動石臼を持ってきてくれて、動作確認してみましょう、というお話が舞い込んできました。
その時の嬉しさといったら、飛び上がるほどでした。
そうして翌日、まだ改装前のお店で、石臼が回ったのです。
玄麦が挽かれていき、それを目だての違うふるいに2回かけると、少し茶色が混じった粉ができました。
石臼を回転させながら、同時に電動でふるいもできる機械も試しました。
でも思ったような粉には挽けてなかった・・・
案の定、その粉で製麺してみると、まるで石巻焼きそばのような、茶色の麺ができました。
「麺はコシがあって躍るけど、色がダメだね・・・」
そう妻に言われて、なんだか途方もないところに運ばれてしまった・・・と思いました。
無理じゃないか、とも思いました。
ところが、妻から日本で石臼を製造しているこうばのリストを渡されて、可能か不可能か徹底的に調べてみようということになり・・・
そうして私は玄麦を抱いて祈るような気持ちで新幹線に乗り、国内産では最高級と言われる羽黒青糠目石の石臼と出会うことができました。
羽黒青糠目石の石臼で挽かれた玄麦をふるいにかけると、白い綺麗な粉になりました。
それを触った時、これなら美味しい麺が作れると確信しました。
出会いは財産だなぁ~、と今製麺室で回っている石臼を見るたびに思います。