♦️213の6『自然と人間の歴史・世界篇』民族主義の変遷~2017)

2017-10-01 09:33:53 | Weblog
213の6『自然と人間の歴史・世界篇』民族主義の変遷~2017)

 民族主義というものは、それを高く掲げれば掲げるほどに、他者を排除する力が増えていくものではないでしょうか。
ここに「民族自決」のスローガンがこれらの国の独立に大きく貢献したのはいうまでもありません。半植民地の立場から世界史の歯車を大きく前に前進させた意義には大変大きいものがあると思います。同時に、行き過ぎた民族主義、愛国心の鼓舞は、他者への差別を主内容とする排外主義への傾向を色濃くもっていることも注意喚起されているところです。

(続く)

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♦️826『自然と人間の歴史・世界篇』アメリカのイラク戦費

2017-10-01 09:19:45 | Weblog

826『自然と人間の歴史・世界篇』アメリカのイラク戦費

 積算が大変難しいのは、国対国の戦争にかかる費用であり、論者により積算に開きがある。ここでは、ジョセフ・E・スティグリッツとリンダ・ビルムズが2008年にまとめた報告「世界を不幸にするアメリカの戦争犯罪」を紹介したい。同書による戦費(2001年度から2007年12月25日のアメリカ一国の戦争コスト)は約3兆ドルと見積もられている。彼ら二人は、その作業を次のように振り返っている。
 「わたしたちは、緊急資金、二重帳簿、戦争に要する資源の常習的な過小評価などが健全に入り混じる中から、政府がこれまでいくら支出したのか、そして最終的にはいくら支出しなければならないのかを確認しようと努めた。
 そしてたどり着いたのが、3兆ドル以上という数字だ。私たちの計算は、控えめな想定に基づいている。技術的に複雑な部分があるとしても、コセプトとしては単純だ。すべての見積もりとは、政府の情報源である議会予算局(CBO)、政府説明責任局(GAO)、国防総省、国務省、退役軍人省(VA)、と、その他の既刊の政府報告書をもとにしている。
 さらに、アメリカ医学研究所「ニューイングランド医学報」、アメリカ脳外傷協会、退役軍人傷害補償委員会、アメリカの帰還負傷兵の医療に関する大統領委員会(ドールーシャララ委員会)など信頼性の高い情報源のデータや、情報公開法にしたがって退役軍人組織から得たデータも使用した。計算の詳細に入る前に、その枠組みを理解しておくとよいだろう。わたしたちはそれを10のステップにわけた」(楡井浩一訳、徳間書店)のだという。そこでいま、その各ステップの見出しのみ引用する。
 「ステップ1 今日までの軍事活動に関連する予算割り当て/支出。これはもっとも簡単なステップで、戦争に充てられたさまざまな支出をすべて合計するものだ。2001年度から2007年12月25日までの、25種類の戦争関連の歳出をすべて計算した。(ステップ4で、2008年度の補正予算案の残りが成立すると想定した)。これには、国防総省、国務省、国際開発庁の補正予算と通常予算両方の資金と、退役軍人省の医療費が含まれる。
 これらの資金は、国防総省がイラクとアフガニスタン周辺の活動に対して名付けた世界的な「対テロ戦争(GWOT)を構成する三つの活動について、軍事活動、基地の安全確保、復興、対外援助、大使館のコスト、退役軍人の医療コスを賄っている。三つの活動とは、イラク自由作戦(OIF)、不朽の自由作戦(OEFーアフガニスタン)、高貴な鷲作戦(ONE)であり、そこには基地建設や大使館の安全確保なども含まれている。
ステップ2 国防予算の別の場所に隠されている運用費と節約の加算
ステップ3 インフレーションの貨幣の時間的価値の調整
ステップ4 将来の運用費(直接支出と予算の別の場所に隠されている支出の両方)の加算 
ステップ5 退役軍人の障害補償と医療にかかる将来及び現在のコストの加算
ステップ6 開戦前の軍事力を回復し、消耗した軍備を補充し、メンテナンスを先送りされた装備品を修理する将来のコストの加算
ステップ7 政府の他部門にかかる財政コストの加算。それらのコストの一部は、退役軍人に支払われる恩給に関連している。重傷を負った退役軍人は、住宅供給、社会復帰のためのリハビリテーション、家族扶助、奨励金付きローン、その他の恩給など、さまざまな追加プログラムを受ける資格がある。
ステップ8 利息の加算
ステップ9 経済に対するコストの見積もり
ステップ10 マクロ経済への影響の見積もり」
 「現在高:マクロ経済的コストの追加ーイラクとアフガニスタン
現実寄りの保守的シナリオ、単位は10億ドル
マクロ経済的コスト
原油高の影響800 
支出転換の影響1100
マクロ経済的コスト小計1900
財政コスト及び社会経済的コストの追加
今日までの総運用費(今日までの支出)646
将来の運用費(将来の運用費のみ)913
将来の退役軍人のコスト(医療+障害補償+社会保障)717
その他の軍事費/調整(隠された国防費+将来の国防リセット費+解   隊、飛行禁止空域削減による節約の差引)404
財政的コスト合計2680
社会的コスト合計415
財政的コスト+社会的コスト総計3095
財政的コスト+社会的コスト総計+マクロ経済的コスト総計(利息なし)4995」(166ページの表10より抜粋して引用)
 これほどの詳しさで戦争の戦費を解析した、その原動力は一体何であったのだろうか。

(続く)

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♦️889『自然と人間の歴史・世界篇』アフリカで帝国主義は生き延びているか(2012年)

2017-10-01 08:52:55 | Weblog

889『自然と人間の歴史・世界篇』アフリカで帝国主義は生き延びているか(2012年)

 2012年現在、アフリカ諸国の産業には、それぞれの国における基幹産業となりうるものとしては何があるのだろうか。ここでは、資源開発に関係するところに限って取り上げたい。なお、以下しばらくは、2013年1月18日付け朝日新聞等などの記事を中心に取りまとめている。
 さて、アフリカ地域には、フランスとイギリスが今なお大きな権益を持っている。まずは、フランスについて、大まかに現状を掴みたい。
 最近の新聞記事には、図や表がふんだんに用いられていて、ありがたい。アフリカに展開するフランス軍、フランス企業が権益を持っているウラン鉱山、油田開発、天然ガス資源の分布(2012年末時点)が、図示されている。これによると、マリの隣国ニジェールに原子力大手のアレバ社がウラン鉱山を保有している。ナミビア西部にTrekkopje鉱山を保有している。この鉱山は2007年、原子力大手アレバ社が南アフリカのUramin社から買収したものだ。コートジボワールの油田開発では石油大手トタルが権益を握っている。セネガルの油田開発でも石油大手トタルが権益を保有している。アルジェリアでは、電気大手GDFスエズがアルジエリア産天然ガスの採掘の権益を保有している。さらにマリでの金採掘事業の開発を巡っては、フランス企業約50社が展開中だとのこと。
 こうしたアフリカでの関係国には、経済利益と利権を確保するため、フランス軍が駐屯しています。これら諸国に展開しているフランス軍兵士の数は、セネガル(基地あり)に350人、コートジボワールに450人、チャドに950人、中央アフリカに600人、ガボン(基地あり)に900人、ジプチ(基地あり)に1900人、計5000人以上もの兵士が西アフリカを中心にアフリカ全土に散らばっていて、フランス人とその企業、彼らが持つ権益を守っていることになります。(中略)
 これらをざっと見ると、今でもアフリカは、「帝国主義」そして「新植民地主義」の呪縛(じゅばく)からから、完全に自由となっている訳ではないように見受けられる。

(続く)

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