♦️933『自然と人間の歴史・世界篇』ゴルバチョフの社会主義思想(1996)

2020-09-01 16:11:06 | Weblog
933『自然と人間の歴史・世界篇』ゴルバチョフの社会主義思想(1996)

 まずは、次の主張をご覧いただこう。

 「こうしたことから、私の思考は社会主義思想の理解という点に集中した。社会主義思想とは何か。私は次のように考える。(中略)

 第一に、「人類の普遍的価値をある一つの階級の利益ではなく、社会全体の利益、全社会層の利益であると理解し、全体の利益を最重視しなければならないと私は考える。マルクス=レーニン主義の教えによれば、このアプローチは否定されてはいないものの、調和への道はプロレタリア独裁と階級的暴力の段階を通過しなければならないとされている。(中略)

 第2に、グローバルな人類の普遍的価値は個々の国家利益よりも優位に位置すると私は考える。付言すれば、この主張は社会主義運動の国際活動に関するマルクス主義の基本思想と少しも矛盾しない。」(ミハイル・ゴルバチョフ著、工藤精一郎・鈴木康雄訳「ゴルバチョフ回想録」・下巻、新潮社、1996)

 さても、ここにある社会主義思想というのは、マルクスとエンゲルスによって発見された科学的社会主義をいい、かつまた、その理論的発展としてデーゼ化され、ソ連の同体制崩壊前の体制側理念であったのが「マルクス・レーニン主義」であることも、それなりに踏まえての言葉なのだろう。
 今の彼は、ソ連時代の指導的立場を離れて、その是非なり現代的意義を忌憚なく述べることができる、なにがしかの自由を行使することができるようになった、だから、ここの引用部分は、「回想」の体裁でかくもわかりやすい言葉使いで語られていて、かつてなく親しみやすい。
 ここには、もはや社会主義というのは、かつてのような「鉄の規律」ととなり合わせで語ったり、人々に威圧感を与えつつ、あるいは説得しようとするなどして相手に向けられるものではない、そのことを、今の彼は自分自身の言葉で述べているのであって、その分、これに賛同するかどうかは別の話ながら、読み手としては概ねすがすがしい気持ちがするのである。


(続く)
☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆