予算の見直し議論が盛んな「事業仕分け」作業が進行中で前半が終了した。与野党が基本的には賛成だと云うが、こんなやり方で本当にいいのかと考え込んでしまう。考え込んでしまう理由はいくつかあるが、まずは過去の経験談からみると。
・NTT時代のことだが、NTTがコンサル会社のマッキンゼーに業務効率化見直しを委託したことがある。スタッフが来て、約一時間ほど質問攻めにあった。業務そのものを一時間で理解できるはずもなく、結論も頓珍漢なものだった。全社で莫大なコンサル費用を支払って、結論はほとんど実効の乏しいものではなかったか。何か意義のある改善が報告されたのかも知れないが、少なくともコンサル結果のレポート報告以降で、何かが画期的に改まったという話を聞かなかった。
・外資系会社にいたころの経験では、とかく本国から送られてくる新任経営幹部は結論を早く出したがり、事業仕分けのような手法でこれまでの予算などを削る。まずは削った金額を本国に報告して、手腕の程を見せたい。この気持ちはよく理解できるのだが、とかく現状を無視した施策をうちがちになる。これは本国に良い顔をしたい焦りがあるからだろう。
・その後、ソフトバンクに在社したころも、やはり業務改善コンサル会社が改善を請け負い、その対応で社員の多くが結構な時間をとられたが、レポートだけではやはりこれといった具体的な改善は見られなかった。
私なりの結論は、長い間に培ってきた方式を見直すのはよいことだが、短期間には無理だと言うことだ。短期間にやると、どうしても成果を派手めに見せたい余りに、単純すぎる結論になる。特に、政府の予算という、一企業とは比較にならない規模と責任のある、予算の判断だ。この調子で仕分けが成されるのなら、一体膨大な予算を食う政府機構の仕組みそのものが何だったのかと問われかねない。
報道される仕分けの様子は、なぜか日曜のサンデースペシャル的応酬を思わせる。確かに面白いのだが、この手の面白いものには眉につばをつけてみてしまう。スパコンまで血祭りに上げられてしまった。このあたり、山本夏彦氏の「嫉妬」説まで思いだしてしまった。
政府の刷新会議は、あくまでも政治判断するとは云っているが、調理の下ごしらえ=「事業仕分け」があまりにも手荒だと、シェフも料理=政治判断に腕を振るえない。
もっとも、「事業仕分け」して欲しい分野はかなりある。役人が理事長や幹部に天下りしている膨大な財団や社団の予算、天下り先に支払われる開発費等の予算額等、あるいは不要、不急の箱物予算など。
せっかく、こういう点での予算削減を期待しているのに、他の分野で手荒な派手めなことをやると、全体の予算削減もうまくいかなくなることをおそれる。だれかが云っている一定の判断基準ガイドラインが必要だろう。