宮部みゆきの小説は読んでこなかった。netflixで何がなく見始めると面白くて最終エピソードまで一気に。
初めの方は妙に木原事件に筋が近くて小説の持つ予見性に感心しながら見ていた。途中からほほーこうしてどんでん返しのストーリーを創るのか、作家は大変な努力をするのだと感心しながら。
他殺から最後に柏木君の自殺に落ち着くまでの模擬裁判で神原君の救いのない家庭環境と柏木君の幸せに見える家庭の対比が描かれる。
救いのない家庭環境に育った神原君が真っ当な家庭に育った柏木君に「そのうちいいことがあるよ」と説得するが神原君は受け入れない。
とうとう「死にたければ死ねばいい」と突き放す神原君、この世を受け入れられない柏木君は墜落死を。もう一つの合わせ鏡のように樹里と松子の友情関係を配置しているのも上手いな。
悪の権化みたいな大出俊介も巨悪に巻き込まれるDV親父の家庭に育つ。
さもありなん風の家庭もあり、そうでない家庭も描かれる。子のキャラに必然性がある家庭もあればそうでない柏木君の家庭もある。
小説は精神医学や心理学のレポートでないから混沌をただ描いているだけで良い。何か人生に役立つかとかは求めても良いが答えは少ないだろう。面白いかどうか、最後まで一気に見せるかどうか、そして自らの越し方の古い記憶をどう揺さぶるか。物語の価値は記憶の揺さぶりにある、それだな。