2016-07-18に拙ブログ「大阪証券が超高速取引を開始の記事は映画「スティング」のインチキ競馬を連想」と以下のように書いた。
大阪証券が超高速取引を開始。超高速取引は二つの意味を持つ。1はアクセスの高速化で2は繰り返しの高速化だ。
1の意味での超高速取引は個人取引に対して時間のインサイダーだといえる。個人よりも早く知りえて早く注文を出せる。映画「スティング」に出てくるインチキ競馬を公然とやっているのと変わらない。グローバル化は好ましい一面、競争という名で富の偏在を正当化する。超高速取引の世界的ルールを定めるときではないか。
富の偏在がひっそりと現れるのがヘッジファンドが暗躍する投機の世界だ。そりゃ負けるわけないよね、こんなに偏在した富があればだれでも特定の株価などコントロール可能で仕手を闇から仕掛ければいちころだ。かつてのマレーシア首相マハティールの怒りはもっともだ。
1992年ジョージ・ソロス率いる『クオンタム・ファンド』はイングランド銀行を相手に90億ドル(約1兆1200億円)のポンド売りで210億ドル(約2兆6200億円)の利益を」得ている。
1997年に起きたアジア通貨危機時ではタイガー・ファンドが同様の手口で巨利を得ている。
「ユーロ崩壊」の際の「PIIGS(ポルトガル、アイルランド、イタリア、ギリシャ、スペインの5ヵ国)クラッシュ」で逆張りして巨額の資金を賭けている大口投資家がいる。 欧州中央銀行(ECB)や欧州金融安定化基金(EFSF)も逆張りのこうした勢力にはかなわない。
2010年5月にはギリシャ国債を、10月にはアイルランド国債を売り、2011年はイタリア、スペイン、フランスというようにユーロ圏で国債を中心に売っている。CDS 保険(元本を保証するが プレミアムと称する保証金で儲ける)ではCDSのプレミアムを上げる売買を実行して 機関投資家の国債の売りを誘いその後 一気にイタリア国債を買い戻して巨利を得る。
ヘッジファンドの資産運用額は200兆円でCDSやCDOにより実際に動かせるマネーはその何倍にもなる。その資金源は最も裕福な62人の超富裕者の総資産が世界人口の50%分と言われる偏在した富からやってくるに違いない。
2008年のリーマン・ショックではジェイムス・サイモン、ジョン・ポールソン1000億円以上の報酬を得る。
ヘッジファンドのランキング2位、ハーバード出身のレイモンド・ダリオが創設した『ブリッジウォーター・アソシエイツ』や『シタデル・インベストメント』、『オクジフ・キャピタル』が次々とスターのように現れる。
こうした投機が金融に貢献しているという正当化がなされている。果たしてこれが正常な世界か。ピケティーが一石を投じた富の偏在、世界で真剣に取り組む必要があるが、一酸化炭素排出規制と同じで国家エゴが最大の敵となる。
そして2年弱を経た今、AI取引の事態はますます凄まじいことになっている。株式市場において、従来のファンドマネージャーによる取引は、1割程度で取引の過半をクオンツファンドの高速自動取引、AIファンドのマシン取引が占める。
2018年2月5日には特定の15分間に大きな株価変動が集中したことなどから、自動高速取引が影響したのではないかと疑われているがクオンツファンドの代表格の米ツーシグマが運用資金6兆円近く、運用実績年間二桁の投資リターンを引っさげて2018年1月に東京に進出してきた。
大手クオンツファンドは証券取引所と高速専用回線で他の顧客回線よりマイクロ秒単位早く処理し鞘抜きをする。映画「スティング」に出てくるインチキ競馬と同じモラル違反をファンドに堂々と適用しているのだが誰も問題視しない。
スティング化と合わせて株価の人工地震とでも呼びたい現象も起きている。2007年8月の「クオンツ・クウェーク」や2010年5月の「フラッシュ・クラッシュ」など、短時間に市場株価が極端な動きをする現象が起きているがブラックボックスのために原因が特定できず、推測の域を出ない。
AIファンドでは、特定の売買の決断ロジックは見えない「ブラックボックス」となりクラッシュが起きても理由は分からない。果たして大きな取引をAIファンド任せて良いのかの議論など誰もしない。こうして密かに富の偏在は進行するがロジックがブラックボックスのためにだれも異議さえ唱えない。