(写真は2006年のベネチア大運河風景)
2018/11/4 追記 杭では沈まないが気候変動と汚職で沈みそうだ。水没防止の金「20億ユーロが賄賂に使われた」とはイタリアらしい。
2018年10月29日には、ベネチアの名所サン・マルコ広場が閉鎖された。観光客のため、高床式の歩道が設置され、救助活動も行われた。店主たちは懸命に建物から水をくみ出した。水位は観測史上4番目に高い1.5メートルを記録。
運河をゴンドラの行きかう穏やかな風景のベネチアは様変わりして、街そのものの存続を左右する脅威にさらされている。気候変動によって、地中海沿岸は21世紀末までに約1.5メートル近く海面が上昇するとの推測もある。ベネチアは日に2度水没することになると専門家たちは警鐘を鳴らす。現状では、年4回、深刻な水害に見舞われている。
「MOSE」可動式の防波堤で街とラグーン(潟)を守ろうという計画だが、20億ユーロが賄賂に使われたと判明した」と報じた。https://natgeo.nikkeibp.co.jp/atcl/news/18/110200475/
イタリアのベネチア(ベニス)を訪れて以来の大きな疑問として、「なぜベネチアは木の杭を無数に埋めてその上に石を積んで出来た島なのに、1400年間、木も腐らず、石も沈まないのか」がある。もっとも最近では地盤沈下が問題になっているらしいが、それにしても1400年間持ちこたえた。地震の多い国だがそれに対しても強いのかもしれない。
どのようにして海の中に土台を作るのか。まず海の中にレンガで防水壁を作ることから始まる。その壁の中に高さ4m、直径20センチのオーク材やカラマツの杭を打ち込んでいく。1平米辺り9本の杭が打たれるというから3本が三列ならび、深さ4mの海底の40%程度が木で埋め尽くされることになる。その上に梁としてカラマツ材が2層置かれ、その上にセメントが3メートル程度流され床が作られる。こうして1000年以上耐える土台が完成する。
アムステルダムの旧市街の中心ダムの近くにあるオランダ王宮も沼地の上に建築したので、地盤の補強に、太い木の柱が1万3千本も打ち込まれ、その上に建てられた石造建築だという。なるほど、ベネチアだけではないのだ。
塩野七生氏著作『ローマ人の物語』では『木は水中では腐らない。ローマ軍は橋建設の土台に木を使った』との記述が幾度となく出てくるそうだ。こうしてみると、木は海水に強いと言うことは古代から知られていたと云うことか。もちろんどんな木でもよいと言うことではなさそうだが。
そういえば、日本でも厳島神社の海水の鳥居は海水におそらく1500年程度浸っている。江戸東京博物館では500年前の江戸湾の埋め立てに木を使った跡の発掘写真が展示されている。「木は海水で腐らない」を身近に実証している。現存する世界最古の木造建築と言われる法隆寺も1300年を経て40%の木材が既に新しく入れ替わっているという。木造建築が長くもたないというところから海水でももたないと錯覚していただけらしい。むしろ、木は空気中より海水中のほうが歴史の風雪に耐えると言うことを再認識した。
兵庫県明石市赤根川浚渫工事で河口の海中から防波堤の基礎に使われたと思われる丸太材が引き上げられた。丸太材が引き上げられた周辺を調査したところ、護岸に使われたと思われる石材が発見された。引き上げられていた丸太材を放射性同位体の割合を調べる年代測定を行ったところ、伐採年代が10世紀初頭と判定された。こちらも1000年程度経っている。
追記 テレビ番組プラタモリで一乗谷跡の木材が水田に沈んでいたので保存状態が良いとのコメントを頂いた。
ではなぜ海中で木は腐らないのか。腐るとは腐敗菌によるもので、海中ではこの腐敗菌が存在しないことが第一の理由で、そのため木が分解しない。次いで海中ではシロアリなどの食害がないことがあげられる。陸の木造建築が持たないのはシロアリによることが大きいのでないか。
1989年ベニス初訪問時の写真
私もベネチアを訪れガイドさんが「ベネチアの街は、昔の木が今も海中で街を支えています」的な説明があり、何故腐らないのか不思議に思いましたがこちらのブログを拝見し再度よく理解できました。ありがとうございましたm(_ _)m
なるほど、という感じでスッキリしました
ありがとうございました