人の命が、最近ますます軽く儚いものになってきたと思います。
ご近所でも天命を全うせず、ご自身であの世に旅立つ人が出ました。これは、最終的には自分の判断でやむに已まれぬ事情があったと納得するしかないのでしょう。
しかし、死ぬつもりもなく心の準備もないまま突然命を絶たれる、というのは本人も周りの親族もさぞや心残りで気の毒な事であろうと思います。
一つには天災・災害。先日の九州の豪雨で車に乗って逃げられなくなったり、川のそばの濁流で家を流されたりして命を落とした方が数人いらっしゃいました。
海水浴で流された子供二人を助けようとした父親が溺れ、その体にしがみついていた子供たちが助かりました。お父さんは自分の命と引き換えに、子供たちを救ったのです。
例えば熱中症。毎年平均で千人以上が亡くなっています。先のお祭りで古老が言うには、「おれらが子供の頃、こんなに暑いことはなかったよなぁ」。昭和のころまで気温が30度を超えることなど少なかったのです。それなのに、町内会でもお祭りの主催団体でも、数十年も前からのやり方を見直そうとしません。
また、イベントで高圧のホースが直撃して死亡。富士山登山で滑落死。博多祇園山笠にひかれて死亡
川に流され海にはまり山で遭難。誰もが死ぬつもりもなかったのに、ちょっとした運命のいたずらで生涯を突然終えることになります。リスクを考えたら「君子危うきに近寄らず」で危ないことや危ない場所を避けるのが賢明というものでしょう。
ワタシは思うのです。いずれ誰でも一度だけ死ぬ。その長さも死に方も人それぞれ。親族に看取られて老衰で大往生もいれば、生後間もなく病気になるみどりこもいます。しかし、やはり、それまでの自分の生涯に満足し、死ぬ覚悟が出来たうえで安らかに最期を迎えたいというのが理想でありましょう。
ホテルで首を切られて死んだ人など、殺人事件に巻き込まれて命を落とす人もいます。7/18は4年前、京都アニメーション放火殺人事件があり、36名の全く無辜の命が焼かれて亡くなりました 。犯人の父親は、タクシー運転手で業務中に死亡事故を起こし自殺と不幸な子供だった犯人の裁判の判決は来年だそうです。精神鑑定次第では死刑にならずに済むかもしれません。だとしたら紅蓮の灼熱地獄に焼かれて亡くなった、罪なき人たちは浮かばれません。
殺人といえば、もっとも有名な「冤罪事件 袴田事件」であります。醤油の工場を経営する専務一家4人が殺害された強盗殺人事件で逮捕された袴田さんは、死刑判決を受けた後、無罪・冤罪を主張し幾度も再審請求をして何度も棄却・抗告・再審取り消しを繰り返しました。その間、死刑の執行は停止され、はや57年が経過したのです。そして今年、東京高裁は静岡地裁の再審開始決定を支持する決定を出し、東京高検がそれに対する特別抗告を断念した。という流れになりました。争点である唯一の証拠「ずいぶん後で見つかった味噌タンク内の着衣」が、警察側がでっち上げた他人の衣服であった、ということを裁判所が推認したのです。当時の袴田さんには穿けない細いズボンで、袴田さんのDNAも検出されませんでした。
従業員だった袴田さんが元々プロボクサーで、体格が良く柔道の有段者だった被害者に立ち向かえる人物と目をつけられたと聞きます。犯行の4日後には拘束されています。頑強に犯行を否認したようですが、物証もないままに逮捕され自供を強制された(警察が自供したと公表した)のでしょう。この時点で、警察は、袴田さんがやったかどうかをきちんと調べ、また本当の犯人を捜査する機会も意図も失ったのです。
ところが、検察側は、その証拠が本物であると立証すると言い出しました。裁判所が証拠として不十分というなら、十分な証拠だと屁理屈をつけようというわけです。昔から「理屈と膏薬はどこへでもつく」と言いますな。 これは捏造して作り上げた犯行直後からの捜査機関を擁護し、あくまで検察も裁判も正当であったということにしたいのです。もし、冤罪が確定したら、その先には、国家を相手に巨額の賠償請求訴訟が待っていますからね。
裁判用に提出された、検察の資料は絶対有罪という結果から逆算して作成する「調書」が、担当者の、あたかもそうだったように見せ掛ける作文によるものだ、という事が発覚したことがありました。それは、かつて冤罪事件で有罪を受けた「村木厚子元局長」の件でも明らかで、この時は検察側が全面敗訴し、関係者が処分されました。
懲りていないのです。日本で最も頭がいいエリートを自認する人種です。自分たちが間違えるはずがない、だからかつての判決に関わった検察側の人たちも間違っていない、というプライドだけで人の人生をたやすく蹂躙するのであります。ワタシ達が知らないだけで、捏造されている事件は実はいっぱいあるのではないか、と思いますね。実際、戦後の有名な「冤罪事件」だけで20件位あるのです。これは構造的な問題と言って差し支えないのです。
死刑執行の恐怖の中で57年間拘禁されていた袴田さんは、87歳になったそうです。もう日本男性の平均寿命を上回っています。検察や司法機関がこれまで、袴田さんの死刑を執行できずに、ここまで永らえさせた、それこそがこの事件が冤罪・捏造で、彼が無罪であったという最も確実な状況「証拠」に思いますね。