中田選手が引退した。
引退したから、中田さんか。
いや、知り合いじゃないのに“さん”付けもヘンか。
ま、いいや。
ブラジル戦の前に読んだ、彼のHPの文で、
心の準備は出来ていた。
確かに、
どっちに転ぶか、まだ淡い期待は持てた。
もちろん、今回の決断と正反対の道を選んでほしかった。
でも、覚悟も持たざるを得なかった。
だって、いつだって、
彼は私の前を走っていたから。
私は彼の背中を見て、追いかけるしかなかったから。
走る彼の横には小野選手がいた。
川口選手がいた。中村選手がいた。
稲本選手がいた。高原選手がいた。福西選手もいた。
カズもいた。
トルシエ監督もいた。ジーコ監督もいた。岡田監督も西野監督もいた。
……結果的に私は、みんなを、日本代表を追いかけていた。
でも昨日、突然、中田選手だけ姿を消した。
今は、そこだけぽっかりとスペースが空いている。
でも、みんなは走ることをやめない。
ボールを、そしてゴールを追いかけている。
いずれ、そのスペースに、また誰かが走りこんでくるだろう。
……そのとき、私は誰の背中を見て、追いかけているだろう。
今ごろ彼は、
かなり前に彼の隣りからいなくなった、
前園元日本代表選手と、旧交を温めてるのかもしれない。
同じ、元日本代表選手として。