音響工学の先生と知り合いになった。
何度か会ううちに、少し打ち解けた。
彼所有のiPodを見せてもらった。
青のiPod miniだった。
イヤホンは付属の白いやつ。
「聴きやすい音で耳が疲れないんだ。
適度に低音も効いてて、気持ち良くノレるしね」
更に仲良くなり、自宅のリスニングルームに入れてもらった。
鎮座していたのは、オールイン・ワン・コンポ。
カセットもCDもMDもラジオも聴ける。
家電量販店で見たことある。iPodより安いやつだ。
先生がリモコンのボタンを押すと、
小ぶりのスピーカーから、バッハが流れてきた。
(たぶん、無伴奏チェロ何たらって曲)
……家電量販店の試聴部屋のように綺麗な音だ。
先生曰く、
高額な製品が高性能なのは事実。
ただ、その高い性能も、
メーカーが開発で使う、専用のリスニングルームでのもの。
普通の住宅では、ほとんど活かし切れない。
そして、逆に、
専用のリスニングルームが用意出来るなら、
一番安いので充分良い音が出るので、
結局、高い製品を無理して買う必要がない、とのこと。
「結局ね、機械が出す音を人間が聴くんですから」
最後の一言は、色々な意味を含んでいて興味深い。