事の始まりは、1人の外国人からの紹介だった。
「メイサはこのアプリ知ってる?言語学習にすごく便利だし面白いよ。無料だし」
と、送られたリンクをもとに調べてみると、確かに彼の言う通り面白そうなアプリだった。
へー、無料ならいいじゃん?
やってみるか。
ポチポチとプロフィールを登録し、自分の母国語と勉強している言語、写真をアップした。
瞬く間に数多の男達からメッセージが届いた。
なるほど、これは言語学習だけじゃなくデート目的な利用者も多いわけね?
ま、いいわ。真面目な人もいるだろうし。
私は届いたメッセージから彼らのプロフィールを確認し、英語が堪能そうな人にだけ返事を送った。
それから、ハンサムな男の子にも。
当然こちらからもメンバー検索はできるので、日本語を話したい女の子を探してたくさんメッセージを送った。
そのうちの何人かとは数通やりとりをしたが、そのうちに返事が来なくなったりこちらも話題が切れてしまったりした。
たえず返事をくれるのは男の子達だった。
ちなみに、男の『子』と書いているが、男性をそう呼ぶのは私の癖でもあるけど、実際彼らは私より年下な事が主だった。
これは私の予想なのだけど、言語を勉強している人というのは、その機会と時間がある人なわけで、多くの学生がそれに当てはまるんじゃないかな。
事実、デート目的じゃなく本当に勉強している子は20代前半の子が多かった。
そんな風にアプリを使い出して3日目くらいだっただろうか。
1人の男の子からメッセージを受信した。
ピロリン
『はじめまして。仁です。よろしくお願いします。』
お
おぉっっ
日本語だ〜〜〜!!!
そう。このアプリを使い出してからずーっと疑問に思っていたのだが、なぜか日本語で連絡してくる奴が全然いないのだ!
みんな決まって、Hi とかHelloとか一言送ってくる。
ほんでもってどんなに会話が進んでも、日本語を一切送って来ない。
稀にすごく日本語が上手な奴もいたが、それは10に1あるかないかで、あとは日本語を勉強してすらいない奴ばかりだった。
そんな中、初っ端から日本語で、しかもきちんとした文章でメッセージを送ってきた仁は異彩を放っていた。
すぐさま彼のプロフィールを確認すると、プロフィールも全て日本語で書かれており、そのスキルの高さが明らかだった。
おまけに他のメンバーからのレビューも好評だ。
おぉ、すごいじゃん!!超レアキャラだわ!!
しかも
イケメンやん。
いょっしゃ〜〜〜!!!
いやいやいや、正確に言うとそんなに好みではありませんでした。←何様
だけれど、それでも十分にキレイそうなことがうかがえるお顔の写真がアップされていたので、こりゃいいやと気軽にお返事してみたわけです。
『はじめまして、メイサです!よろしくお願いします(^ ^)日本語お上手ですね!』
『そう言ってくれて嬉しいですが、まだまだです…』
『十分上手だと思いますよ。日本語の試験を受けるんですね。頑張ってね!』
『ありがとう!メイサさんは何か趣味はありますか?』
ってな感じで、私達はお互いの簡単な自己紹介やたわいもない事をたくさん話した。
1つ気になることと言えば、彼がどうして私に連絡してきたのかだ。
もちろん私は彼が勉強している日本語のネイティブスピーカーだけど、一方で彼の母国語は英語ではない。
今まで私は英語が母国語の人だけヒットするようにフィルターをかけていたのだが、彼は英語が自分の母国語じゃないにもかかわらず私に連絡してきた。
もちろん彼は英語が得意なんだろうけど、少しは躊躇わなかったのかしら。
し、か、も。
なんと彼は、私より8つも年下だったのだ。
『そういえば、どうして私に連絡したの?』
私の不意な質問に、彼はすぐに整理整頓された文章を送ってきた。
ちなみに英語でね。
それを日本語で即答できるほどのスキルはまだなかった。(まぁまぁな文法でゆっくり返すことは出来るだろうけど)
『メイサさんのプロフィールを見て、メイサさんは真面目にプロフィールを書いているなと思った。あと、住んでいる所が日本じゃないことにも興味を持った。それから、メイサさんの写真を見て、優しそうだなと思ったんだ』
あら。そう。
でも仁さん、嘘ついたな。
や、さ、し、そ、う?
『なるほどね!』
『メイサさんは?どうして僕のメッセージに返信したの?』
ふふ、と笑って、私は軽快にボタンをタップした。
『1. 仁さんのプロフィールを見て日本語が上手そうだなと思った。
2.他のメンバーからの評価からもいい人そうだと思った。
3.で、写真が結構可愛かったから返事したのよ。ははは(笑)』
すぐに仁は、『そんなのこと言ってもらったら、いい気持ちで勉強できそう!(笑)』と嬉しそうに返信してきた。
あっらー、可愛いじゃん♡
そからも私達はいろんな事を話して、その内容は本当になんでもない事ばかりだったけれど
驚くべきはその時間だ。
『見て、もう夜中だよ』
仁が送って来たメッセージを見て、私も驚いた。
なんと、5時間もチャットしていたのだ!
初対面(って会ってないけど)なのに。
『本当だね!楽しかったからあっという間だった』
『そうだね。メイサさん明日仕事?』
『そう。もう寝なくちゃ…』
『おやすみなさい!また明日よかったら話そう』
え、また話すの?
でも嬉しい!
『うん!おやすみなさい』
その日を境に。
ピロリン
『メイサさん、こんばんは』
毎日のように、少なくとも、確実に隔日では、
彼とチャットするようになったのだ。
『そういえば仁さんは、このアプリで電話したことある?』
何度目かのチャットの中で、私は彼にそう聞いてみた。
私達の会話はいつも話題が尽きることがなく、たくさん笑ったり勉強したり、とても楽しかった。
彼は英語が母国語ではないにしても、私よりはるかに流暢だから助けになったし、
私は彼の日本語を丁寧かつ正確に訂正してあげた。
けれど、それ以上に私達は、なんでもない会話それ自体を楽しんでいた。
『まだないね。話す練習もしたいからやる気はあるけど』
『そっか。たくさんレビュー貰ってるから、電話してるのかなと思ったんだ』
そんならやってみようということになり、その日の夜に私たちは初めて電話で話すことになった。
ど、どんな感じだろ〜。
楽しみだけど、電話で話すのとチャットするのとではまた違うかもしれないな。
とりあえずちゃんと話せると良いけど…。
ってゆーか私の英語力大丈夫か(滝汗)
いろんな期待と不安が入り混じったまま、私は時間が来るのを待った。
そして、約束した時間になったその瞬間。
ピロリン
仁から『こんばんわ!』というメッセージを受信した。
まさにその時間ちょうど、0分0秒と言えるタイミングだった。
『ははは(笑)時間ピッタリだね』
『うん。話せる?』
『話せるよ。このアプリでどうやって電話すればいいのかな』←知らないんかい
僕かける、というメッセージを読んだ後、すぐにトーク画面が着信画面に変わった。
おぉ。
出ねば。(そらそうだ)
「もしもし」
すると
「もしもーし」
おぉ!
これが仁さんの声!!!
変!
ソーリーーーー!(笑)
私はふと、仁が歌が苦手だと言っていたのを思い出した。
歌が得意だという人は大抵美声の持ち主だったような……。
ということは仁はやっぱり声が微…モグモグ。。。
と失礼なことを考えてしまうぐらい微妙な声にビビりつつ
なんとか平静を装い(そんなに?)私は会話を続けた。
声に驚いたせいかどんな会話をしたかあまり思い出せないが(そんなに?!←いや本当にびっくりしたんだって)
チャットの時同様、いやそれ以上に、彼がリードして会話を盛り立ててくれたことはよく覚えている。
気になっていた日本語も、日常会話としては全く問題ないと言えるほどに上手だった。
「そっかぁ。仁さんはそんなこと考えてるのねー」
シャク
「そうだね。メイサさんは?」
シャクシャク
「私?んー、そうねぇ」
シャクシャク、シャクシャクシャク
「ねぇちょっと待って。メイサさん何食べてるの?」
バレた。
「え?イチゴ」
「えぇ?イチゴってそんな音するの?」
「うーん、なんかこのイチゴ硬いみたい」
と私は赤い円錐形の果物をつまみ上げながら首を傾げた。
「でも確かに日本のイチゴはこんな音しないかも」
「ポテチか何か食べてるのかと思ったよ」
「違うよ〜(笑)でも、なんでわかったの?」
「いや、音聞こえたから」
「うそ~本当に?恥ずかしいぃぃぃ」
「すごくよく聞こえたよ(笑)」
「本当に?うわー絶対わかんないだろうと思って食べてたのに〜」
「(笑)」
恥ずかしがりながらも笑ってしまう私につられ、仁も楽しそうに笑った。
「仁さんは果物好き?」
「好きだね。何が好きだと思う?」
「んー………わかった」
ポチポチポチ
ピロン
トーク画面にりんごの絵文字が浮かんだ。
すぐさまそれを見たらしき仁が声を上げた。
「あー。好きだね」
「でしょ?」
「どうしてわかったの?」
「わかるのよん。あと、これも迷った」
ピロン
「あー。チェリーも好きだよ」
「だよね」
「メイサさんは俺の事、なんでもわかっちゃうね」
「そうだね。仁さんはわかりやすいからね」
「はは(笑)確かに、よく嘘がつけないって言われる。そういう人のことを僕たちの国の言葉で、こう言う」
ピロン
「………えっと」←読めない
「日本語にすると、本を読むみたいにわかる、って言うんだ」
へーーー。
「面白い表現ね。仁さんは本なのね」
「はは、そうだね」
「私は?」
「メイサさんは…うーん、まだよくわかんないな」
「読みにくい本?」
「ちょっとね。でも色んなこと、すごくたくさん話してくれてると思う」
そうね、と私は微笑んだ。
「メイサさんは、どんな人とでも話せる?話すのが好きな人?聞くのが好きな人?」
「んー、相手によるかなぁ。喋るの好きだけど相手が喋ってたらずっと聴いてる。で、相手があまり喋らない人ならずっと喋ってる(笑)」
「なるほど」
「でも仁さんはたくさん質問してくれるから私も話しやすいし、自分からもたくさん話してくれるから、すごく自然に話せてる」
「それは、僕も思ってた」
「え?」
「メイサさんと話すとき、何も無理しないで話せる。それに、すごく楽しい」
仁さん………
好きになっちゃう。
バカバカ〜!!どんだけ簡単な女やねーーーーん!
思わず胸キュンしてしまったが、表面上はあくまで余裕そうに「よかったぁ、嬉しいわ♩」と答えた。
だってそうじゃない?8個下の男の子だよ?!
8個も年下相手にオタオタしてるとこなんか見せられないよ。
8個下といえば、ちょうどその頃リアルライフでも面白い出来事があった。
それは東京にいた時には絶対起こり得なかった……と言っても過言ではないのかなーと思う出来事。
日本人にとってあまり馴染みがない、そして外国ではそこまで珍しくない出来事…。
続きます!
「メイサはこのアプリ知ってる?言語学習にすごく便利だし面白いよ。無料だし」
と、送られたリンクをもとに調べてみると、確かに彼の言う通り面白そうなアプリだった。
へー、無料ならいいじゃん?
やってみるか。
ポチポチとプロフィールを登録し、自分の母国語と勉強している言語、写真をアップした。
瞬く間に数多の男達からメッセージが届いた。
なるほど、これは言語学習だけじゃなくデート目的な利用者も多いわけね?
ま、いいわ。真面目な人もいるだろうし。
私は届いたメッセージから彼らのプロフィールを確認し、英語が堪能そうな人にだけ返事を送った。
それから、ハンサムな男の子にも。
当然こちらからもメンバー検索はできるので、日本語を話したい女の子を探してたくさんメッセージを送った。
そのうちの何人かとは数通やりとりをしたが、そのうちに返事が来なくなったりこちらも話題が切れてしまったりした。
たえず返事をくれるのは男の子達だった。
ちなみに、男の『子』と書いているが、男性をそう呼ぶのは私の癖でもあるけど、実際彼らは私より年下な事が主だった。
これは私の予想なのだけど、言語を勉強している人というのは、その機会と時間がある人なわけで、多くの学生がそれに当てはまるんじゃないかな。
事実、デート目的じゃなく本当に勉強している子は20代前半の子が多かった。
そんな風にアプリを使い出して3日目くらいだっただろうか。
1人の男の子からメッセージを受信した。
ピロリン
『はじめまして。仁です。よろしくお願いします。』
お
おぉっっ
日本語だ〜〜〜!!!
そう。このアプリを使い出してからずーっと疑問に思っていたのだが、なぜか日本語で連絡してくる奴が全然いないのだ!
みんな決まって、Hi とかHelloとか一言送ってくる。
ほんでもってどんなに会話が進んでも、日本語を一切送って来ない。
稀にすごく日本語が上手な奴もいたが、それは10に1あるかないかで、あとは日本語を勉強してすらいない奴ばかりだった。
そんな中、初っ端から日本語で、しかもきちんとした文章でメッセージを送ってきた仁は異彩を放っていた。
すぐさま彼のプロフィールを確認すると、プロフィールも全て日本語で書かれており、そのスキルの高さが明らかだった。
おまけに他のメンバーからのレビューも好評だ。
おぉ、すごいじゃん!!超レアキャラだわ!!
しかも
イケメンやん。
いょっしゃ〜〜〜!!!
いやいやいや、正確に言うとそんなに好みではありませんでした。←何様
だけれど、それでも十分にキレイそうなことがうかがえるお顔の写真がアップされていたので、こりゃいいやと気軽にお返事してみたわけです。
『はじめまして、メイサです!よろしくお願いします(^ ^)日本語お上手ですね!』
『そう言ってくれて嬉しいですが、まだまだです…』
『十分上手だと思いますよ。日本語の試験を受けるんですね。頑張ってね!』
『ありがとう!メイサさんは何か趣味はありますか?』
ってな感じで、私達はお互いの簡単な自己紹介やたわいもない事をたくさん話した。
1つ気になることと言えば、彼がどうして私に連絡してきたのかだ。
もちろん私は彼が勉強している日本語のネイティブスピーカーだけど、一方で彼の母国語は英語ではない。
今まで私は英語が母国語の人だけヒットするようにフィルターをかけていたのだが、彼は英語が自分の母国語じゃないにもかかわらず私に連絡してきた。
もちろん彼は英語が得意なんだろうけど、少しは躊躇わなかったのかしら。
し、か、も。
なんと彼は、私より8つも年下だったのだ。
『そういえば、どうして私に連絡したの?』
私の不意な質問に、彼はすぐに整理整頓された文章を送ってきた。
ちなみに英語でね。
それを日本語で即答できるほどのスキルはまだなかった。(まぁまぁな文法でゆっくり返すことは出来るだろうけど)
『メイサさんのプロフィールを見て、メイサさんは真面目にプロフィールを書いているなと思った。あと、住んでいる所が日本じゃないことにも興味を持った。それから、メイサさんの写真を見て、優しそうだなと思ったんだ』
あら。そう。
でも仁さん、嘘ついたな。
や、さ、し、そ、う?
『なるほどね!』
『メイサさんは?どうして僕のメッセージに返信したの?』
ふふ、と笑って、私は軽快にボタンをタップした。
『1. 仁さんのプロフィールを見て日本語が上手そうだなと思った。
2.他のメンバーからの評価からもいい人そうだと思った。
3.で、写真が結構可愛かったから返事したのよ。ははは(笑)』
すぐに仁は、『そんなのこと言ってもらったら、いい気持ちで勉強できそう!(笑)』と嬉しそうに返信してきた。
あっらー、可愛いじゃん♡
そからも私達はいろんな事を話して、その内容は本当になんでもない事ばかりだったけれど
驚くべきはその時間だ。
『見て、もう夜中だよ』
仁が送って来たメッセージを見て、私も驚いた。
なんと、5時間もチャットしていたのだ!
初対面(って会ってないけど)なのに。
『本当だね!楽しかったからあっという間だった』
『そうだね。メイサさん明日仕事?』
『そう。もう寝なくちゃ…』
『おやすみなさい!また明日よかったら話そう』
え、また話すの?
でも嬉しい!
『うん!おやすみなさい』
その日を境に。
ピロリン
『メイサさん、こんばんは』
毎日のように、少なくとも、確実に隔日では、
彼とチャットするようになったのだ。
『そういえば仁さんは、このアプリで電話したことある?』
何度目かのチャットの中で、私は彼にそう聞いてみた。
私達の会話はいつも話題が尽きることがなく、たくさん笑ったり勉強したり、とても楽しかった。
彼は英語が母国語ではないにしても、私よりはるかに流暢だから助けになったし、
私は彼の日本語を丁寧かつ正確に訂正してあげた。
けれど、それ以上に私達は、なんでもない会話それ自体を楽しんでいた。
『まだないね。話す練習もしたいからやる気はあるけど』
『そっか。たくさんレビュー貰ってるから、電話してるのかなと思ったんだ』
そんならやってみようということになり、その日の夜に私たちは初めて電話で話すことになった。
ど、どんな感じだろ〜。
楽しみだけど、電話で話すのとチャットするのとではまた違うかもしれないな。
とりあえずちゃんと話せると良いけど…。
ってゆーか私の英語力大丈夫か(滝汗)
いろんな期待と不安が入り混じったまま、私は時間が来るのを待った。
そして、約束した時間になったその瞬間。
ピロリン
仁から『こんばんわ!』というメッセージを受信した。
まさにその時間ちょうど、0分0秒と言えるタイミングだった。
『ははは(笑)時間ピッタリだね』
『うん。話せる?』
『話せるよ。このアプリでどうやって電話すればいいのかな』←知らないんかい
僕かける、というメッセージを読んだ後、すぐにトーク画面が着信画面に変わった。
おぉ。
出ねば。(そらそうだ)
「もしもし」
すると
「もしもーし」
おぉ!
これが仁さんの声!!!
変!
ソーリーーーー!(笑)
私はふと、仁が歌が苦手だと言っていたのを思い出した。
歌が得意だという人は大抵美声の持ち主だったような……。
ということは仁はやっぱり声が微…モグモグ。。。
と失礼なことを考えてしまうぐらい微妙な声にビビりつつ
なんとか平静を装い(そんなに?)私は会話を続けた。
声に驚いたせいかどんな会話をしたかあまり思い出せないが(そんなに?!←いや本当にびっくりしたんだって)
チャットの時同様、いやそれ以上に、彼がリードして会話を盛り立ててくれたことはよく覚えている。
気になっていた日本語も、日常会話としては全く問題ないと言えるほどに上手だった。
「そっかぁ。仁さんはそんなこと考えてるのねー」
シャク
「そうだね。メイサさんは?」
シャクシャク
「私?んー、そうねぇ」
シャクシャク、シャクシャクシャク
「ねぇちょっと待って。メイサさん何食べてるの?」
バレた。
「え?イチゴ」
「えぇ?イチゴってそんな音するの?」
「うーん、なんかこのイチゴ硬いみたい」
と私は赤い円錐形の果物をつまみ上げながら首を傾げた。
「でも確かに日本のイチゴはこんな音しないかも」
「ポテチか何か食べてるのかと思ったよ」
「違うよ〜(笑)でも、なんでわかったの?」
「いや、音聞こえたから」
「うそ~本当に?恥ずかしいぃぃぃ」
「すごくよく聞こえたよ(笑)」
「本当に?うわー絶対わかんないだろうと思って食べてたのに〜」
「(笑)」
恥ずかしがりながらも笑ってしまう私につられ、仁も楽しそうに笑った。
「仁さんは果物好き?」
「好きだね。何が好きだと思う?」
「んー………わかった」
ポチポチポチ
ピロン
トーク画面にりんごの絵文字が浮かんだ。
すぐさまそれを見たらしき仁が声を上げた。
「あー。好きだね」
「でしょ?」
「どうしてわかったの?」
「わかるのよん。あと、これも迷った」
ピロン
「あー。チェリーも好きだよ」
「だよね」
「メイサさんは俺の事、なんでもわかっちゃうね」
「そうだね。仁さんはわかりやすいからね」
「はは(笑)確かに、よく嘘がつけないって言われる。そういう人のことを僕たちの国の言葉で、こう言う」
ピロン
「………えっと」←読めない
「日本語にすると、本を読むみたいにわかる、って言うんだ」
へーーー。
「面白い表現ね。仁さんは本なのね」
「はは、そうだね」
「私は?」
「メイサさんは…うーん、まだよくわかんないな」
「読みにくい本?」
「ちょっとね。でも色んなこと、すごくたくさん話してくれてると思う」
そうね、と私は微笑んだ。
「メイサさんは、どんな人とでも話せる?話すのが好きな人?聞くのが好きな人?」
「んー、相手によるかなぁ。喋るの好きだけど相手が喋ってたらずっと聴いてる。で、相手があまり喋らない人ならずっと喋ってる(笑)」
「なるほど」
「でも仁さんはたくさん質問してくれるから私も話しやすいし、自分からもたくさん話してくれるから、すごく自然に話せてる」
「それは、僕も思ってた」
「え?」
「メイサさんと話すとき、何も無理しないで話せる。それに、すごく楽しい」
仁さん………
好きになっちゃう。
バカバカ〜!!どんだけ簡単な女やねーーーーん!
思わず胸キュンしてしまったが、表面上はあくまで余裕そうに「よかったぁ、嬉しいわ♩」と答えた。
だってそうじゃない?8個下の男の子だよ?!
8個も年下相手にオタオタしてるとこなんか見せられないよ。
8個下といえば、ちょうどその頃リアルライフでも面白い出来事があった。
それは東京にいた時には絶対起こり得なかった……と言っても過言ではないのかなーと思う出来事。
日本人にとってあまり馴染みがない、そして外国ではそこまで珍しくない出来事…。
続きます!